バネの風

千葉県野田市の「学習教室BANETバネ」の授業内容や、川上犬、ギャラリー輝の事、おもしろい日常を綴ります。

浅間山を描く

2020-12-06 14:20:31 | ギャラリー輝
1980年代にフランス一人旅した時のこと。
パリ美術館巡り三昧の日。
ロンドンですっかりロンドン子になった気分の夏目漱石しかり、パリジャン気分ですいすい歩いていると、突然呼び止められたかのように飛び込んできた声があった。
それは日本語だった。

フランス語しか聞こえてこない中で、脳みその別の回路に直接コンタクトしてくる言葉に引き寄せられるように近づくと、それはクロード・モネの「ルーアン大聖堂」について同行の日本人に解説しているフランキー堺さんの声だった。
今となってはどこの美術館だったか正確に思い出せない。ジュ・ド・ポームかオランジュリではないかと思う。当時オルセー美術館は建築中だったので。

階段を上った最初の部屋の壁面に並んでいた絵画を説明していた。
フランキーさん曰く、同じ場所を時間を変えて描いたのだという。曇天、日没、昼下がりと。ふむふむと勝手に一緒に聞き入り、それらをじっくり観賞させていただいた。

その話を聞きながら中学生の時のことを思い出していた。
中1の夏休み自由研究として、舞田の丘から独鈷山を望む田園風景を時間を変えて何枚か描いた。独鈷山は午前中までは光を背負うから色が見えない。午後になると独鈷山は光輝く。光を背負う独鈷山は黒にしかならなかった。だからそこを空にした。美術の先生に山を描かなかった理由を聞かれ、描かなかったことを酷評された。今思うと見えないことを表現すべきだったのだな、とわかる。
モネは時間や気候で変化する空気感を表現していた。
暗さも表現していた。

同じ対象を何枚も描く。何度も描く。
池田輝は好んで浅間山を描いている。
倉庫に保管している小作品で浅間山とタイトルがつくものだけで60点ほどあった。
これらを2階小ギャラリーにまとめて展示したい。
その時は1階にF120 の描きかけ浅間山を展示したい。


NO.524 F0号


NO.615 F0号


No.623 F0号


No.826 F8号

この描きかけ浅間を以前ギャラリーに展示した際、画学生が何度も訪れしばらく鑑賞していった。
制作の参考になるとのことだった。


No.10 F120

父は家の前の道路に出て東側を眺め浅間に雲がかかっていないと、「今日は描ける」と家を飛び出していったものだ。
新しく建てるギャラリー2階東側に回廊かベランダを造り、浅間山が望めるようにしたかった。何度も希望の図面を書いたが、予算に見合わずそれは実現しない。
浅間山を望むギャラリーが実現しない口惜しさはあるが、外に出ればいつだって浅間を見ることはできる。少し歩けば東に広がる風景を眺めることができる。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。