バネの風

千葉県野田市の「学習教室BANETバネ」の授業内容や、川上犬、ギャラリー輝の事、おもしろい日常を綴ります。

幕が上がる

2012-12-24 22:30:30 | 感動
 連休は長野へ。
 朝家出る時、「これ先読んでいいよ」とチャーがホイッと渡してくれた本は、平田オリザさんの「幕が上がる」。演劇にかける高校生の青春小説。
 行きの東武線でパラパラめくる。スイングガールみたいな乗りかと読み始めるが、グイグイとその世界に引き込まれる。土曜の朝早い電車だから空いていたけど、本読んでいるうちに、気づいたらいつの間にか席はほぼ埋まっていた。そして途中の駅で、かろうじて一人座れる程度の空間に、無理矢理女性が座ってきた。本から目を外さないで、左に少し詰めて空間を作った。その女性は席に着くとすぐに、バッグから英語の本を出して読み始めた。英語かと認知したところで、再び自分の本の世界に入る。
 大宮で新幹線に乗り換え続きを読む。
 演劇部に没頭する高校生の話し。自分の高校時代が蘇る。今の高校生に思いを馳せる。こんな小説書いてみたいと思う。そうやって今と昔を行ったり来たりしながら読むこと1時間。上田に到着。
 夜温泉に入り、ジンワリと体の芯まで温まったので早々に布団に入った。湯冷めを避けるためでもあったけど、早く布団に入りたい理由があったから。
 布団で眠りに落ちるまで本を読む。これが至福の時間。本はなんでもいい。読みたいものが手元にないんだったら、JAF MATEや通販カタログでもいい。とにかく枕元で紙をめくる。眠くて、何度も同じ行をダブり読みしてしまうその時まで活字を追い、スタンド消す意識も薄れながら寝るその瞬間。これが最高!
 今、温泉で温まった体にその先を読みたい本が手元にある。布団読書の条件がこれほどまでに揃っているんだから、布団に一刻も早く潜り込みたい。
 ヘー、演劇部ってこうなんだとリアルな描写が続く。ストーリーに引き込まれながらも、こういうこと知らなきゃ書けないと思う「今」が相変わらず交錯する。
 しかし、布団読書は思いのほか長く続かなかった。長野は寒い。布団は電気敷布でぬくぬくだけど、室内の暖房用意しなかったので、手や肩が凍るように冷える。先を読み続けたい気持ちはあるものの、本を持つ手がコチコチになってしまい、続行を断念。外は暴風吹き荒れている。明日は雪だな。

 さて、帰路新幹線。えきネットで前日予約したチケットで通路側席を希望しておいた。とれたのはC席。3人がけの通路側。目指す席に行くと、窓側と中央には先客あり。若いカップル。B席の先客はそれまで空席に置いていた洋書を慌てて拾い上げた。
 上田駅で買ったジャスミンティーを一口飲み、アーモンドチョコボールを数個食べ、本の続きを読むことにした。周りは空席だらけなのに、狭い空間のここだけ3人ギッチリ座っている感じだなと思いながら本を読む。途中で空席に移動しようかなと思うけど、軽井沢で大勢乗ってきてそれなりに席が埋まった。そして車内販売がやってくると、隣の男性は「チョコ買おうかな」とポツリと独り言。
「アーモンドチョコボールと、トッポがあります。」「じゃ、トッポ下さい」
 車内販売の女性とのやりとりが丁寧で、感じがいい。その後トッポ食べながら洋書を読んでいた。
 
 この頃からストーリーは佳境に。
 こういう風に本読むときは、終わりが気になる。後どれだけあるのか。後どれだけ楽しめるのか。残り少なくなると、できるだけゆっくり読もうと思う。終わりの量が気になり始めた頃、大宮に到着。
 残りは今日の布団読書にとっておこうと思ったけど、東武線で座ることができたので、誘惑に勝てず続きを読むことになった。

 ストーリーはハプニングにさしかかる。そして思いがけない展開に。熱いものがこみ上げる。
 高校生の失望感が胸を一杯にする。そしてなぜか、バネ生に思いが馳せる。いまだに勉強を苦痛にしている子。明日からの冬期講習であの子のことなんとかしなければと思い、心がジンワリした時、電車は藤の牛島到着を告げる。あ、もうここなんだと本から目を離し顔を上げると、目の前に座っていたおじさんと目があった。そのおじさんはあわてて目をそらすその瞬間、ほんの一瞬だけど、こちらの目を覗き込んだ。
 あの時と同じ。

 小学3年生のとき、クラスの皆で図書館に行き好きな本を1冊借りて読むという時間。フランダースの犬を借りた。最後のシーンを読み終えた瞬間チャイムが鳴った。そして大きなため息をつきながら本をパタンと閉じると、目の前にいたマサシ君が「悲しいお話だったの?悲しそうな目している」と言った。
 
 今、目の前のおじさんが、同じこと言った、と感じた。
 

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