少し前ですが、不思議な修理をしました。いままでに経験が無く、ヤマハサービスに聞いても前例がありませんでした。
故障の症状ですが、走行中、左側に転倒、各部に傷が入る、ここまでは、よくある事例ですが、転倒した際に、エンジンが止まったらしく、大きな損傷が無かったので、起こして、再始動したのですが、ここで問題発生。
通常、ありえないことですが、転倒後、エンジンから異音がしたとのことで、修理に来店されました。確かに、リアバンクから、回転数にしたがって、金属の打音がしました。外観上は、特に損傷が無く、少し前に別の修理をした際は、異常がなかったので、原因特定に迷いがありました。
異音ですが、発生場所は、リアバンクのシリンダーヘッド、回転数とともに変化、カムシャフト関連らしく、クランク回転数より、打音数が少ない等があった為、一応順番どおり、圧縮圧力測定、排気漏れチェック、点火チェック、キャブチェックを行い問題が無かったので、カムチェーンテンショナーをチェック、カムチェーンの張りにも問題が無かったので、ヘッドカバーを開けてみました。

原因は、なぜかリアバンクのカムタイミングのみ、カムスプロケットで1山、早くなっていました。吸気、排気とも同じようにずれており、疑問を感じました。ちなみに異常の無いフロントバンクも見てみましたが、正常なタイミングでした。どのようにズレたかは、不明ですが、カムチェーンが引っ張り方向にズレると、カムタイミングは、遅れるので、エンブレ方向にズレたと思うのですが、原因不明です。

ズレた原因は、追究できませんでしたが、異音の原因と思われるカムタイミングを正常に戻し、エンジンを始動すると、異音はしませんでした。ヤマハサービスにも聞いてみたのですが、原因が不明な為、特に対策はとらず、試乗チェック後、納車しました。
異音の原因ですが、カムスプロケットの山は、34山でしたので、1山当り、約10.5度ズレます。カムはクランク回転の1/2回転ですので、クランクの回転に換算すると約21度ズレていることになります。ただ、ピストンの上死点で、バルブがフルリフトしていたわけではないので、おそらくバルブの損傷は無いように思います。もし、バルブが損傷していた場合は、圧縮圧力がでず、始動時に、圧縮漏れが発生するはずです。
異音の原因ですが、カムタイミングがズレるとカム山がリフター(シム)を押していないタイミングもズレるので、テンションが掛かる、抜けるといった動きになっていた場合は、打音が出ていた場合が考えられます。
いずれにしても、修理後は、異音が出ていませんが、原因が不思議です。ちなみに、2枚目の写真の時点で、1番シリンダーのピストン上死点は出ていますが、カムチェーンの伸びがある場合は、遅れる方向にカムタイミングが少しズレます。(写真の場合は、右にずれています)