先日修理していた静岡のお客さんは、無事納車になり、ご自宅まで帰宅されましたが、帰りは自走でしたので、ちょっと心配でした。近県のお客さんもいらっしゃいますが、来店時は、トランポやレッカー入庫でも帰りは、自走のことが多く、いきなり長距離や高速走行なので、無事到着されるまで安心できません。
他店で修理しても症状が改善しないということで、お預かりです。まず、ざっと点検から入ります。リザーブタンクの冷却水が減っていますので、漏れている箇所のチェックです。
ラジエターキャップ部を見ると、エンジンオイル混入はなさそうなので、セパレーター部の修理は平気そうです。キャップの真下に電動ファンのサーモスイッチが付いていますが、98℃オンの刻印ですので、カワサキ部品だと思います。夏は電動ファンが回りっぱなしになるので、お勧めしておりません。電動ファンを早めに回したい場合は、強制ファンスイッチをお勧めしています。ウォーターポンプの下の穴からエンジンオイルが出ています。オンオフバルブが右上オンの位置のままなので、サーモスタットが機能していません。冬場は、冷えすぎになります。(クーラント交換用なので、通常オフです。)よくありますが、サーモスタット部からクーラント漏れしています。キャブレターからガソリン漏れがあるようで、下まで垂れてきています。
装着されたバッテリーはゲルタイプでしたが、レッカー入庫された時点で、バッテリー上がりの状態でした。
エンジン始動前とジャンプして始動後(ヘッドライト消灯時)の電圧です。一応充電しているようです。充電系統のチェックですが、ステーター側(エンジン内部)の配線(白)が3本出ており、各配線間の導通と抵抗値は規定値でした。
ステーター側は、3本の配線で3相交流(交流出力でプラスマイナスの波になりますが、波が120度づつずれて3本あります。)ですので、交流出力を測定してみます。22.05Vはアイドリング時の交流電圧です。(3相ともほぼ同じでした。)次に一応5000回転までエンジン回転を上げると75.3Vの交流出力でした。(3相ともほぼ同じでした。)この出力は、レギュレーターで、直流に整流され、一定の出力に直されます。発電機なので、回転を上げれば出力は上がりますが、上がった分、レギュレーターで熱変換で捨てられています。旧型Vmaxは、全年式液式バッテリーが指定だったため、旧タイプのレギュレーターのままでしたが、出力可変タイプや高効率タイプにレギュレーターを換装すると、液式バッテリーと組み合わせた場合は、充電によるバッテリー液の蒸発が多くなりますので、液面のチェックが必須です。
エンジンを始動すると充電が始まり、バッテリーの状態も良くなるので、ステーターやレギュレーターが問題無いとすると、レギュレーターからバッテリーまでとバッテリーのマイナス側の配線に問題があるケースがあります。
バッテリーマイナス端子とクランクケースを接続している太いアース線から分岐して、メインハーネスから出ているマイナス線と一緒にフレームに共締めされている配線が過去に焼損したらしく劣化しており被膜も無いのでテープで巻いてありました。電気の場合、プラス側も重要ですが、マイナス側も重要です。バッテリー自体も疑わしいので、補充電して満充電になるかどうかと漏電と放電も見てみます。
充電状態が80%を超えたところで、充電を止め、一旦チェックです。バッテリーの状態は改善しています。この後、満充電まで、行いました。
満充電後、車体搭載状態で2日間放置し、エンジンを始動してみました。バッテリーの漏電と放電は、平気そうです。
その他も点検していきます。ヒューズボックスのシグナルのヒューズが30Aになっており、この場合、何かあってもヒューズが切れず配線が焼損するなどの影響が出ますので、10A指定の場合は、アンペアを上げない方が無難です。ガソリンタンクの中は綺麗でしたが、国内仕様の中古を移植したようです。(車体は、逆車です)ETCのアンテナですが、たしか日本無線の指定では、アンテナ線を下のむける要注意書きがあったと思います。過去に配線伝って水分がアンテナ内部に入った事例があったかと思います。要修正です。
お預かりしてから、乗ったことがなかったので、一応この状態で試乗です。フロントフォークの突き出しが多すぎて少し乗りのにくいのとリアタイヤが摩耗しているので、ハンドルを取られます。エンジン回転(吹け)の上下もスムーズではないので調整した方が良いと思います。
フロントブレーキスイッチですが、端子の差し込みが緩いので、接触不良でブレーキランプが付かなくなっていました。ETC本体を入れるために、リザーブタンクのステーを弄ってあるのですが、ただ左右に押し広げてあるだけなので、タンクが固定されていませんので、修正が必要です。LEDウインカーに交換されていますが、抵抗が入っているので、消費電力は変わっていません。抵抗は外した方が良いと思います。ウインカーリレー(LED可)も交換されていますが、純正カプラーから配線を抜いてそのまま差しており、端子金属がむき出しなので、カバーした方が良いです。また、ヘッドライトの配線で、バッテリー直結用リレーが接続されていますが、固定されいませんでした。各カプラーについては、水が入っても抜けるように開口部を下に向けないと故障の原因になります。リレー等は上に向け、カプラーは下向きもしくは、左向きの方が良いです。左向きの理由は、サイドスタンド時に斜め下向きになるためです。よくあることですが、バッテリー上の1番と3番のイグニッションコイルのプラグコードが緩んでいました。この部分は、外さない方が良いです。接触不良の原因となります。バッテリー交換時等で邪魔な場合は、プラグキャップごと抜いた方が良いです。
試しに少しバッテリーを放電し、十数キロ走行してみましたが、やはり少し、充電が弱いようです。充電量が足りてないと、灯火系やエンジン点火で先に消費し、余った電気でバッテリーを充電していますので、充電=消費だと、バッテリー充電無し、充電<消費だと、バッテリーが消耗します。旧型Vmaxのレギュレーターは一定出力なので、エンジン回転を上げても出力は変わらず、点火の消費が増えるだけです。個体差もありますが、1000~2000回転の間が一番出力電圧が高いケースが多いです。
とりあえず、ご予算もあるので、電気系から修理します。
2018.02.16 作業担当 ヤダ(矢田)