ほぼ毎週車両をお預かりしますが、まず最初に行うことは、フロントフォーク(純正)のエア圧、前後ホイールのエア圧点検及び補充です。この3点は、車高や押し歩き時の重さにてき面に影響しますので、必ず見ます。その際エアバルブキャップを外しますが、社外品が装着されていることが多いです。交換自体は構わないのですが、キャップ側の構造が問題で、キャップの固定とエア漏れ防止で純正の場合は、センターに穴の開いたゴム板が入っています。(センターの穴はバルブを押さないため、ゴム板なのはバルブ端に均等に当てるためと変形防止です)社外品のバルブは、酷いとゴム無、もしくはOリングが入っているケースがほとんどです。ゴムが無いとエア漏れする場合や締め過ぎによるカジリもありますが、問題なのは、Oリングがバルブ端に均等に当たらない場合や、Oリングが変形したり、バルブ側に入ってしまいバルブの先端を押してしまう場合です。個人的には、機能を優先しているので、プラ製の軽くてエア漏れしにくい純正か、エア圧センサー付きを使用しています。
コンディションレベルチェックパックでお預かりです。外装を外して点検から始めます。
クーラントは、エンジンオイル混入は無さそうですが、何箇所か漏れがあります。
漏れた跡があるのが、ウォーターポンプの穴、L字パイプのOリング部、サーモスタット周辺、ラジエターキャップ下のアルミブロック周辺です。
フロントフォークのエア圧が0でしたので、規定値の0.4にしました。当たり前ですが、フロントの車高が上がります。
タイヤは、ダンロップ純正でホワイトレターです。製造は、去年の夏頃です。残り溝深さがセンター部でフロント3mmで、リアが2mmです。リア側はそろそろ交換時期になります。
リアサスは、オーリンズ後期型で特に問題は無いようです。
リアキャリパーの取り付けボルトが純正ではないですが、いずれにしろ上側のボルトの頭がリアサスのタンクに当たるので、薄いボルトに交換した方がよいです。クラッチレリーズ部の下側からの写真ですが、クラッチフルードが滲んでいます。
エアクリーナーは、純正ですが要交換です。ダイヤフラムは、回転や作動不良は見られないので平気そうです。
キャブレターを外したらしく、アクセルワイヤーのステー部が曲がっていたので修正しました。過去に、他店でキャブレターを外して、左右に分割し、フロート室の掃除を行ったようです。
パイロットスクリュー部の圧入栓を抜き、動作確認後、戻し回転数を規定値に合わせました。
リア周りの取り付けボルトが上下逆でしたので、修正しましたが、純正以外のボルトが使用されていたので、締付トルクを掛ける部分に純正ボルトを使用しました。ボルトの形状が同じでも強度が違う場合があるので、純正以外のボルトを使用する場合は要注意です。プラグコードですが、太さの違う社外品(NGK製)が装着されており確認のみです。
ヘッドカバーガスケットですが、前後ともオイルの滲みが見られます。ただ、車体全体にかなりの量のシリコンスプレーが使用されており、一度綺麗に洗車した方がよいです。シリコンスプレーは、艶出しにはよいですが、オイルの滲みが分かりにくくなること、配線カプラーや、スイッチ部に付着すると接触不良の原因になるので、配線付近には、吹かない方がよいです。
キャブレター下側のゴムジョイント用バンドは、締めすぎないようにストッパーとなるカラーがネジ部に入っているのでよいのですが、Vブースト側のゴムジョイント用バンドはストッパーが無いので、締めすぎになっていることが多く、切れてはみ出していることが多いです。キャブレターを外した形跡のある車両に多いのですが、ブローバイガスのパイプをエアクリーナーボックスに接続していないと、オイル混じりのガスが上がってくるので、乗っていてもガソリン&オイルの匂いがし、周辺がオイルで汚れるので、接続は要確認です。
今回、パイプをエアクリーナーボックスに接続するためにボックスを外しました。その際、燃料ポンプからのパイプがほとんど刺さっておらず、クリップも止まっていなかったので、修正しました。また、初めて見ましたが、クラッチホースをキャブレター真ん中上部に通してあり、邪魔になっていたので、フレーム左側に移動しました。キャブレターの同調も合わせていなかったような状態でしたので、マフラーに合わせて調整しました。(マフラーについて4本出しで、エキパイの長さも前後で違うこともあり、合わせにくいです。)
バッテリーは、MFタイプでしたので、電圧と容量の点検のみです。
エンジン始動前と始動後(ヘッドライト消灯時)の電圧です。充電系は平気そうです。
エンジン始動前と始動後の油面です。
フロントキャリパーは、パッド残量はありますが、要清掃です。
リアキャリパーは、パッド交換をされたということもあり、特に問題は無いとは思いますが、リアブレーキをかけると自動ポンピングブレーキになるので、ローターが一部歪んでいると思います。厚みを測ってみると規定値内で摩耗はそれほどでもないです。
振れを見ると一部分だけ振っていましたが、ぶつけた様子もないので、熱による変形が疑われます。ガソリンタンク内は、錆びも見られないので平気そうです。
フロント&リアブレーキ、クラッチともマスターに不具合は無さそうですが、フルード交換時期不明です。リザーブタンクが色付きの場合、フルードの色がわかりません。
スパークプラグは、純正のNGK製DPR8EA-9でした。最終型は、排ガス規制のためキャブレターのセッティングが薄めのため燃焼温度は高めになります。プラグキャップとコードはNGK製ですが、プラグコードが太いため取り付けに問題があります。キャップには防水性がありません。
フロントフォークのオイル漏れは現状見られませんが、クリップが錆びています。
今回、外した部品類です。
最終チェックと試乗です。大きな問題は無いですが、細かい部分や、経年劣化で要交換部品があるので、今後の課題や点検結果は、オーナー説明し、無事納車になりました。
2023.02.18 作業担当 ヤダ(矢田)