最近、平地でも気温が下がってきているので、標高の高い地域だとそろそろバイクシーズンが終わりに近づいています。
長野から自走でご来店です。車両の現状把握と今後のメンテナンスの課題出しのため、お預かりです。今回は、コンディションレベルチェックパックBのため、点検と車体増し締めです。メインスタンドを立てた状態で、エンジン始動前のオイルレベルです。この車両は、ゲイルスピードの前後17インチホイールに換装されているため、純正のメインスタンドを立てると少し前下がりになるので、オイル点検窓も前下がりになり、エンジン始動前でこのオイルレベルだと標準レベル内で下限に近い方だと思います。
国内メーカーのタイヤだと製造週が書いてあるのですが、ミシュランのため正確かどうかわかりませんが、一応製造週らしい数字です。フロントが1218ですので、2018年12週製造、リアが4517ですので、2017年45週製造かと思われます。輸入品ですので、実際に店頭で交換したのは、今年の前半ではないかと思います。まだ、新しそうなので、タイヤ溝も問題ないレベルです。
キャブレターを脱着した形跡があり、その際かと思いますが、アクセルワイヤーの通し方が少し変です。また、エアクリーナボックス左側のエアベントチューブが途中でねじれています。
エアクリーナーボックスを外した際かと思ますが、ブリーザーパイプが抜けており、ボックス周辺に、ブローバイの油分が付着しています。プラグキャップを抜いていた際にキャブレターを見るとボルトが2本ありません。
エアクリーナーはK&N製ですが、汚れているので、洗浄が必要です。先ほどのボルトがなかったダイヤフラムの蓋を外してみたのですが、Oリングが挟まっていて少し浮いていました。(白丸印内)この気筒のOリングはあるので、キャブレターの他の部分のOリングを噛んでいたようです。
この車両は、国内仕様ですが、ダイヤフラムは逆車用に交換されています。現状、回転も無く、作動も平気そうでした。ただ、3番のキャブレターがインシュレーターに完全に刺さっておらず、半分浮いています。
Vブーストの作動をみるのにバルブとワイヤーを見たら、ボルトが無く、ワイヤーの位置がおかしいです。ボルトは、Vバンク間で発見しましたが、ワイヤーを直すには、キャブ脱着が必要で、この状態だと、ワイヤーは正常についていないので、たるんでおり、Vブーストバルブは、全開になっていません。
パイロットスクリューも調べたら、規定値以下のところがあったり、規定値より1回転以上開いているところがあったりします。また、3番と4番がパイロットスクリューを締めこんでも反応がほぼ無いです。各部見てから負圧計をつないでみました。1,000回転付近の写真ですが、4気筒とも合っておらず、さらに1番2番の組と3番4番の組の差がありすぎます。この状態だと3番と4番のスロットルが開いており、パイロットスクリューの機能が生きていたとしても、バルブ付近の穴からガソリンが供給されていた場合は、締めこんでも反応しません。
スパークプラグは、純正のNGK製DPR8EA9ですが、左側と右側で焼け方に差が出ています。エンジンを掛けるとオイルレベルは、見えなくなる状態まで下がっていました。
ヘッドカバーガスケットは、前後ともオイルが滲み始めています。
リアフェンダーですが、フレーム側のツメが刺さっていません。フェンダーの角度を上げる方は、このような状態のこともあります。ただ、ツメが鉄なので、フェンダー側が割れることがあります。リアサスは、WP製ですが、キャリパーの装着ボルトに当たっているので、リザーブタンクが削れています。また、ワイズギアのキットだと思いますが、バンプラバーに当たるまでサスが沈むとキャリパーのバンジョーボルトに当たります。
リレー類の位置が違ったり、現在使用していない配線があったりしますので、バッテリー周辺も含めて、配線の整理を行った方が良いと思います。
ホーンの配線が一部エキパイに当たっていました。フロントフォークのエア圧が0になっていました。
ステムベアリングは、規定より緩かったです。逆にスイングアームのピボットは、締めすぎです。
フルードの交換時期は不明ですが、クラッチ側は、変色しています。
オーナーも言っていましたが、ドレンボルトのネジ山がだ痛んでいるので、オイルが垂れてきます。ネジ山を修正するか、オイルパンを交換した方が良いです。
バッテリーは、ゲルバッテリーが搭載されていました。
エンジン始動前と始動後(ヘッドライト消灯時)の電圧です。充電系は平気そうです。
クーラントは、エンジンオイル混入はなさそうです。現状漏れはなさそうですが、ウォーターポンプの下の穴から漏れた跡は残っています。
フロントフォークのオイルシールからのオイル漏れはなさそうですが、ダストシールはヒビがあり、錆が発生しています。
最後に、試乗行いました。スタータークラッチは、点検の間は、異音がなかったので、まだ、初期症状(ボルト緩み等)だと思われます。キャブレターの状態が良くないので、燃焼も思わしくなく、アクセルの反応が悪いです。また、エンジン回転が安定しません。今回、車体増し締めを行いましたが、各部のメンテナンス状態や、特にキャブレターと点火系の修理調整は、必要だと思います。また、100℃付近で電動ファンが作動するので、おそらく電動ファンスイッチが変更されており、夏場は、バッテリへの負担が大きいものと思います。ちなみにキャブレターの同調がずれていると燃焼状態に差が出ますので、エンジン回転が滑らかでなく、エンジン音が少しおかしいです。
2018.10.23 作業担当 ヤダ(矢田)