毎日がちょっとぼうけん

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「救えた命が犠牲に…」2015年2月26日(木)No.1101

2015-02-26 23:43:22 | 政治

昨日、ブログに“I'm sorry about Kenji.”とタイ人のアティタヤさんに言われたことを

書いたばかりだが、今日郵便受けに届いた「新聞うずみ火」の第一面が、

『救えた命が犠牲に… ―日本人人質事件、西谷文和さんが検証―』だった。

西谷さんは、この事件を「日本の外交史上、まれに見る失態である」と断じている。

私だけじゃない、多くの人はこの悲惨な犠牲者を出した事件は

安倍首相の外交の酷さによるものであることを知っている。

にも拘らず、これについて政府の反省が全く為されていないことに

心から怒りを感じている。

私の感情について言えば、怒りというより、安倍晋三には怨みを感じるが、

その怨みの根拠を、明らかにしてくれているのが

中東に詳しいジャーナリスト、西谷文和さんの文なので、

自分の頭の整理のためにも非常に長いが記録しておきたい。

ここに書かれていることは、決して西谷文和さんの突飛な意見ではなく、

多くの中東専門家たちの共通した見解でもある。

政府がこのままうやむやにできないよう、納得していないと言い続けよう。

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『救えた命が犠牲に―日本人人質事件、西谷文和さんが検証―』                                                  新聞うずみ火3月号No.113 http://uzumibi.net

1月20日、「イスラム国」(IS)が後藤健二さん、湯川遥奈さんの殺害予告動画をインターネット上にアップした。                                                                                             驚いた私は、すぐにトルコ在住のシリア難民たちと接触を図った。私は彼らの中で英語がしゃべれる人物を通訳として雇い、トルコからシリアへ潜入した経験がある。                                                      彼らのネットワークは「自由シリア軍」に通じていて、ひょっとすると「イスラム国」の内部情報を手に入れることができるかも知れないと思ったからだ。                                                                彼らのうちの一人が「スカイプ」というネット上の会話システムで「イスラム国」幹部とつながった。                                                                                    あの時点での「イスラム国」幹部の本音は……。                                                                         「後藤は殺したくない」だった。                                                                                 当初から「イスラム国」側は、湯川さん、後藤さんを同一視していなかった。                                     湯川さんは民間軍事会社の経営者として実績を積むためにシリア入りし、銃を持ったまま拘束された。                                                                              彼のホームページには、元航空幕僚長の田母神俊雄氏と握手する写真、カラシニフ銃を連射する動画などがアップされていた。                                                                                    「イスラム国」は、田母神氏が自衛隊の海外派兵論者で、安倍首相より右寄りの思想家であることを知っている。                                                                                                      そして、民間軍事会社とはどんな組織で、誰を警護しているか、なども熟知している。                            だから、湯川氏は「スパイである」と断定され、彼らの英語表現ではWAR CRIMINAL(戦争犯罪者)だった。                                                                                                 一方、後藤さんはフリ―ランスのジャーナリストであり、シリア内戦を止めたいというメッセージを発していることから、「イスラム国」側は、HOSTAGE(人質)と規定していた。                                       あの殺害予告動画では、2人ともオレンジ色の囚人服を着せられていたため、『イスラム国」が2人を同列視しているような印象を持つ人が多かったと思われるが、現実はそうではなかった。                                                                         この時点で、身代金か人質交換が成立すれば、少なくとも後藤さんは救出できたはずだ。

ヨルダンに対策本部?                                                                                        トルコ在住のシリア難民たちも、自由シリア軍幹部も、対策本部をトルコに置くべきだと主張した。なぜか?                                                                     ヨルダンは「イスラム国」を空爆する側、つまり敵であり、ヨルダンのアブドラ国王では、交渉は成立しないという意見だった。                                                                    一方、トルコは空爆には参加せず、米軍がトルコの基地を使用したいと要望しても、基地使用を認めてこなかった。                                                                                  さらに、トルコはシリア内戦において、アサド軍を打ち負かすために、自由シリア軍を支援してきた。                                                                            兵士の一部がその後「イスラム国」に合流したため、トルコ政府は「イスラム国」とのチャンネルを持っている。                                                                                       「イスラム国」が掘り出す原油をトルコは密輸で購入していた。                                        さらに49名に上るトルコ人の人質を解放したという実績もあった。                                         私も、これはどう考えてもトルコのエルドアン大統領に頼むしかないと思った。                                        東京在住で、一緒にシリアへの人道支援活動をしている友人も同意見だったので、彼は外務省に出向き、「トルコルート」の活用を申し出た。                                                              私も外務省中東アフリカ局に緊急電話を入れて、トルコルートを採用すべきだと申し上げた。                                                                    外務省は意見を聞くだけだった。

身代金から人質交換へ                                                                                            72時間が過ぎた。「イスラム国」はまず、WAR CRIMINALと規定していた湯川さんを殺害した。                                                                             この時点で、要求はリシャウィ死刑囚との人質交換になった。                                               なぜ、「イスラム国」がリシャウィ死刑囚を求めてきたのか、それは対策本部がヨルダンにあったからだ。                                                                      もし、この時点でトルコにあったら「イスラム国」は、トルコ軍か自由シリア軍が拘束した別の「イスラム国」幹部との人質交換を求めただろう。                                              そして、それは可能だったと思う。                                             ヨルダンにとって、リシャウィ死刑囚の解放は、かなり厳しい条件だった。                                               2005年11月、私はリシャウィ死刑囚たちが起こした同時多発テロの現場を取材した。                                                ホテルの結婚式場での自爆で、約60名が殺された。                                                    「ラディソンSAS」という5つ星ホテルでの凄惨な犯行。殺されたのは普通のヨルダン市民。                                                                 なぜこんなことが?                                                               「ラディソンSAS」も「フォーシーズンズホテル」も、アメリカ、イスラエル系列のホテルだったからだ。                                                                        こんな「理由」で普通のヨルダン人が殺されてはたまらない。                                                            ヨルダンの首都アンマンでは50万人の市民が街頭に繰り出し、「テロに屈するな」というデモが発生していた。                                                                                       この事件まで、ヨルダンはイラク難民を受け入れてきた。アンマンの広場はイラク難民で溢れていた。                                                                      事件後、ヨルダン政府はイラク難民を追い出した。                                                                                         リシャウィ死刑囚たちがイラク人で、無辜の市民を殺害したことへの報復だった。                             普通のヨルダン市民はもちろん、イラク難民もこの事件でたいへんな迷惑を被った。                                       リシャウィ死刑囚の解放は、ヨルダン政府にとってかなり高いハードルだった。                                   1月28日、最後のメッセージが出された。                                                            「29日の日没までにトルコ国境までリシャウィ死刑囚を連れてこい。あくまで後藤さんと1対1の交換だ。」                                                                         この要求を受けて、いったんヨルダン政府がリシャウィ死刑囚と後藤さんの1対1交換に応じた。                                                                      「これで後藤さんは解放されるだろう。」喜びの声が広がりかけた。                                                                しかし、事態はここから急変する。                                                       アンマンでパイロットの親族を中心に「カサースベ中尉を返せ」というデモが発生。                                               ヨルダンでは極めて珍しい「王政批判」が起こった。                                                                                                後藤さんだけではだめで、ヨルダン人パイロットも解放させないと国王批判が爆発するかもしれない。                                                                       国王は態度を変えて、結局、リシャウィ死刑囚の身柄はトルコ国境に運ばれなかった。                                    

「イスラム国」に内紛                                                                   運命の日没を迎える。                                                                  このとき「イスラム国」は後藤さんの身柄をトルコ国境まで移送していた。                                        国境の街、トルコ側はアクチャカレ。シリア側はタルアブヤド。このアクチャカレとタルアブヤドは極めて近く、障害物もないので、互いの姿が見える。太陽が沈む。                                                     シリア側タルアブヤドの丘の上に「イスラム国」兵士が現れ、両手で大きく×印。                                          そして、シリア側の国境が閉ざされた。                                                                         「期限が過ぎたので、リシャウィ死刑囚を連れてきても、もう交換には応じない」という意思表示。                                                                            この時点で、私はたいへんな危機感を覚えていた。                                                    「イスラム国」が期限を切った場合、それが過ぎるとほとんど殺害してきたからだ。                                 一方、「後藤は殺したくない」と言った幹部の本音、さらに「人質」による身代金ビジネスを考えると、また別の要求を突き付けてくるのでは、とも考えていた。                                                          実はこの時、「イスラム国」側で内紛が起こっていた。                                                                    「あくまで後藤さんは人質。殺さずに人質交換、または身代金で解決すべき」と主張するグループ。                                                                   「いや、日没までに、という期限を切ったからには主張通りに殺害していくべき」というグループ。                                                                         「イスラム国」は一切妥協しない、という残忍な姿を強調することで、世界的に存在感を高めるべきだという主張だ。                                                                                                               後藤さんは『身代金ゲットの切り札』から『内紛の種』になったと思われる。                                 そんなことなら殺してしまえ……。                                                                    2月1日、殺害動画が公開される。                                                        悔しいのは何度も救出できるチャンスがありながら、安倍政権が迅速かつ合理的に動かず、むしろ「困難な方向」「解決させない方向」へ事態を動かしてしまったということ。                          政治は結果責任である。                                                                2人の命を救えなかったことは、日本の外交史上まれに見る失態と断じざるを得ない。                                            

首相の「挑発」演説                                                                          整理しておこう。                                                        ①水面下で「イスラム国」側から提案があったとき、なぜ交渉しなかったのか?                                    ②2人の身柄が拘束されているのを知りながら、なぜ安倍首相は「イスラム国」を挑発するような演説ばかり行ったのか。                                                                       ③イスラエルでネタニヤフと握手し、イスラエル国旗の苗で「テロには屈しない」という緊急記者会見。なぜ会見からイスラエル国旗を取り除かなかったのか?                                                       ④72時間という非常に重要な時期に、英国と2+2を行ったのはなぜか?延期すべきではなかったか?                                                                       ⑤対策本部をヨルダンに置いたのはなぜか?なぜ正式にトルコに頼まなかったのか?ちなみに、安倍首相とエルドアン大統領は、トルコへの原発輸出に関して、頻繁に連絡を取り合い、ホットラインができている。すぐにお願いできたはずだ。                                                                                                               

以上が現時点での私なりの事件の分析である。                                                           結論をひと言で言うなら、安倍政権の中に「この事件を奇貨として『積極的平和主義』の名の下に、自衛隊を有志連合に加えたい」と考える人がいたのではないか。                                        その勢力が、解放への足を引っ張り、結果として救えた命が犠牲になったのではないか。                                その勢力とはアメリカであり、安倍政権を操る戦争推進派であり、日米安保で食って行こうとする『安保ムラ」の人々ではないか。                                                                                       今後、安倍政権と、政権寄りのメディアが                                                      「テロの恐怖」「自衛隊特殊部隊の派兵」「有志連合への積極的加盟」                                    などを煽っていくだろう。                                                                 NHKでは籾井会長が自由な報道を許さず、安倍政権が気に入る報道を進めるだろう。                           朝日新聞はこの間の攻撃で弱体化してしまった。                                                              どこまで政権批判ができるだろうか。                                                        そして今、テレビ朝日の「報道ステーション」がターゲットになっている。                                                  状況は厳しいが、まだ希望はある。                                                             沖縄型の住民の共同。戦争だけは絶対やらせない、という市民の声を幅広くまとめていくことだ。                                                                           私たちは正念場を迎えている。

――――――新聞うずみ火転載ここまで                                                                                                                     

 

《付録》 

イスラエルの旗の前での安倍演説にはツイッターでさんざん批判が上がったのは、記憶に新しい。

  ↓    ↓    ↓                                                                                                                   

人質解放を訴える安倍首相の会見が日の丸とイスラエルの国旗が並んでる構図なの刺激的すぎるんでは pic.twitter.com/grs784hTBS

pco@pcodimir

あーあーあーあー…煽ってるよ…イスラエル国旗前でやっちゃってるし… 

平沼センジ@senji11

人質事件の記者会見をエルサレムで、しかもイスラエル国旗を背にやっちゃう安倍-日本政府の外交センスのなさは驚愕だな。

まじで安倍の側近は誰も止めなかったんか、これ。事の深刻さ考えればちょっと言えただろうに、この会見時だけイスラエルの国旗壇上から降ろしてもらえませんか、と。外交素人集団なの? pic.twitter.com/X3GhW3zHGc

ポー@pau_999

今この時になんで日の丸とイスラエル国旗に挟まれて立ってんだよこのバカは。 2015.01.20 20:14

オザワエイイチ [電送器]@telexjp

他の国で首脳の緊急会見の開催地の国旗を会場に掲出した事例があるか調べる必要があるな、安倍首相の会見会場にイスラエル国旗を掲出した件。

羅針盤@a_compassrose85

……安倍氏が なんか……良い演説してる感じだけど……、全てを、イスラエル国旗が台無しにする気がするのは……私だけだろうか……。。。

エルサレムでイスラエルの国旗が置かれたなかで記者会見するのイスラム国のアピールになりそう。

直立演人@royterek

何よりも、イスラム国向けのメッセージでもある会見でイスラエル国旗を高々と掲げてたのは致命的だったと思う。これによって、単なる「テロとの闘いに屈しない」というメッセージではなく、「イスラエルとともにテロとの闘っていく」というメッセージになってしまったのだから。

青幇亜玲@TinPanAlley888

おいおい、安倍首相、イスラエルの国旗をバックにそんなスピーチすんなよ。 2015.01.20 17:57

うわあイスラエルと日本の国旗にはさまれて・・・。 2015.01.20 17:57

イスラエルと日本の国旗を並べて、その前で言われても。

いやいやイスラエルの国旗のある場所はマズイんぢゃないのかい,イスラエル訪問中と言っても他の場所でやるとかさ  

風間新吾(城南信用金ユーザー)@kazamazov

 なんだって安倍首相はイスラエルの国旗の横で声明を出したんだろう。映像的なメタメッセージがイスラム国を挑発することになるんじゃないの。別の会場をセッティングして会見を開けば良かったのに。本気で日本人の生命を守る気なんかないんだろうか?2015.01.20 22:50

 

chiyuricoco@cocochiyuri

イスラエル国旗と日の丸並べた背景の安倍総理の会見。 舞台美術としてはセンスないわ。最低ね。場面展開を考えてなさ過ぎる

コメント (1)
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