毎日がちょっとぼうけん

日本に戻り、晴耕雨読の日々を綴ります

「北京の大学院卒の教え子、初の肉体労働に従事」No.3949

2020-08-17 23:44:36 | 中国事情

日本もそうですが、

中国では学歴がなければ高収入を得る仕事に就けず、

多くの親たちは子どもが大学や大学院に行くことを望みます。

その結果、年を追って大学院卒業生が社会に溢れ、

10年前なら大学院修士卒業生は大学の教師になれたのが、

今では高校教師の資格しか与えられません。

大学院試験の合格ラインも年々上がっています。

 

北京第二外国語大学大学院で現代日本文学を研究し、

山崎豊子の作品をテーマに論文を書いて卒業した周文毓さんは

度々私のブログに登場する教え子の一人ですが、

今回のコロナ騒ぎでアフリカ出身の連れ合いと数か月間離れ離れになり、

ようやく北京で再会して結婚2周年を迎えることができました。

ふう、やれやれの二人です。

卒業後、彼女は何度か職場を変えつつ、

日本語翻訳か英語関係の仕事をしていたのですが、

今回は7月からレストランで働いています。

日本にも支店がたくさんあるので日本語が話せる彼女は

日本関連の管理業務をするという契約で採用されました。

しかし、蓋を開ければトイレ掃除やホールのウエイトレスなど、

何でも屋のようにこき使われ、日々くたくただそうです。

毎日、誰かが辞める過酷な労働現場で

それでも彼女はまだその仕事を辞めていません。

北京のあるレストランの仕事の様子が伝わってくる

彼女のメールを紹介します。

写真も文も本人の了解を得ています。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

日本では梅雨が明けたそうですが、北京では梅雨が始まりました。
いつの間にか鍋料理店で1ヶ月半働きました。
想像と全然違います。
毎日普通のウェイトレスと同じ仕事をしていて、
時々事務室で店長のアシスタントの仕事をしても、
ただ簡単な雑用ばかりで、学歴と外国語がほとんど使えません。
多分もうしばらく働いてから辞めるか、子会社へ行くかと思います。
でも、毎日体力的な仕事をしているので、
体がとても丈夫になりました(笑)。
それに、1ヶ月間で4キロほど痩せました(笑)!
これは意外な収穫ですね(笑)。
この仕事は今まで私がしてきた仕事と全然違います。
一緒に働く同僚たちもほとんど教育を受けていない人で、
半分ぐらいは年下の子供で、18歳から22歳の子供が多いです。
働く時間が長くて、体力的にとても疲れるので、
ほとんど毎日辞める人がいます。
私が来てただ1ヶ月間で半分の人が変わりました。
同僚たちは「なぜここに来たの、そんなに学歴が高いのに」
と私に問い続けます。
「自分も知らない」と笑いながら答えるしかありません。
実際、来る前にはこんな仕事とは知らなかったですから(笑)。
それに給料は管理職の給料で高いからという理由はもちろん話せません。
みんなの給料は驚くほど低いですから。
普通のウェイトレスの給料は、お客さんの人数で計算します。
コロナの影響でお客さんが少ないので、みんなの給料も低くなります。
でも、お客さんがたくさん来ると給料は高いですが、体はとても疲れます。
だから、みんなは矛盾した気持ちです。
一方の気持ちは、お客様に来てほしい、もう一方は、来て欲しくないです。
白居易の『卖炭翁』を思い出しました。
「可怜身上衣正单,心忧碳贱愿天寒」。時々残念だと思います。
また、ここで働いている時、
いつも村田沙耶香の『コンビニ人間』を思い出します(笑)。
昔、会社で働いて疲れた時、
いつも「ああ、コンビニで働きたいな、ウェイトレスになりたいな」
と思っていました。その時はただ頭を休ませたかったんです。
今本当にウェイトレスになりまして(笑)、
また翻訳の仕事を懐かしみます。
ラッキーなのは、先月、前の会社が私に連絡してきて、
バイトで翻訳してほしいって。
だから、今バイトで前の会社の翻訳をやっています。
ここで働いているのは、面白いところもたくさんあります。
同僚たちはみんな単純で優しい人、一緒に働くのは楽しいです。
また、本当に頭を休ませられます。
それ以外、店のものが食べほうだいです(笑)。
様々なお客さんと出会えて、人間観察も面白いですよ。
人の真の人柄は、ウェイトレスに対する態度に現れます。
本当にその通りですね。
昨日は連れ合いと付き合って2周年記念日で、写真を取りに行きました。
添付しますね。
 
殺人的に忙しい週末が終わって、今日は週に1回の休みの日、
ようやくのんびり自分のことをすることができます。
確かに今店のお客様の数はコロナの前と比べようもありませんが、
同時にたくさんの人が辞めて故郷に帰ったので、人手不足です。
とにかく今の私は、どこかが人手不足なら、そこへ手伝いに行きます(笑)。
最初の2週間、トイレ掃除と厨房の仕事もしていました。
レモンを切ったり、お皿を洗ったり、料理の準備を手伝ったりしていて、
家事能力も鍛えてきました(Ŏ艸Ŏ)。
(私の厨房制服姿)
厨房は重い肉体労働ですから、厨房の人たちはほとんど体が大きくて年上です。こんな感じ⬇️
(笑)(図はfrom『ワンピース』)
見た目は厳しくて近寄りがたいけど、実はとても心が優しい人たちです。
新人の時、厨房へ手伝いに行って疲れた時にしゃがみこんでいると、
すぐある兄さんに怒鳴られました。
「おい、何やってるんだ!監視カメラがあるんだぞ!」
そして、また
「そっちのコーナーへ行って!そこはカメラに映らないんだ!」
後で知りましたが、うちの店は監視カメラが200台以上もあります。
スタッフを監視するのと食品安全を確保するためです。
勝手に怠けてはいけません(笑)。
また、厨房の仲間たちが食料やデザートなどを準備している時、
私は「これは何?おいしい?」と聞いたら、彼らはそれを私に渡して、
「ほら、カメラに映らないところへ行って食べなさいよ。」
そのようにして厨房にいる3日間、全ての食べ物を味見しました。
厨房で友達もできて、忙しくない時、厨房へ行くといつも
「お腹すいたか?何食べたい?」と聞かれます(笑)。
⬇️私のウェイトレス姿
 
持っているのは、仕事がよくてきているので、
リーダーからのご褒美の新製品のケーキ。
時々、連れ合いはお店に「見舞い」に来ます。
彼が初めて店に来た時、みんな大驚きしました(笑)。
結婚しているととっくに言ってたのに、
みんなただ冗談だと思って信じてくれませんでした。
その日、私はとても疲れて、鍋が食べたかったです。
だから休憩時間、彼が私と一緒に鍋を食べるために来てくれました。
すると彼を見るために、
厨房グループとサービスグループの全ての人がさりげないふりをして
続々と私たちのテーブルを通りかかりました(笑)。
バレバレで、連れ合いもそれに気づいて笑いました。
とても面白かったです。
普通、スタッフとスタッフの家族が鍋を食べるのは半額ですが、
その日、私たちの鍋は店長がこっそり払ってくれました。
私のもうひとつの価値は、店にたまに外国人が来る時です。
毎回外国人のお客様がお店に来た時、私が何をしていても、
彼らがインターコムで
「周姉さん、至急来て!外国人だ!」と叫びます(笑)。
 
今ここで働き続けられるのは、
本当にみんなが優しくしてくれて楽しいからです。
ここの同僚は以前の会社の同僚と全然違います。
違う世界に来た気がします。
毎週6日、毎日14時間ぐらいみんな一緒に働いていて、
一緒にご飯を食べて、昼休みして、手伝いあって、
こんな生活は高校時代以来初めて経験します。
もしいつか店を離れたら、
私はきっとここの仲間たちを懐かしく思うでしょう。
では、先生、またね!
次回は面白いお客と奇抜なお客の話をします(笑)!
 
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2 コメント

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コロナ災禍下の北京の餐館の経営実情、興味深し (Yozakura)
2021-09-25 21:02:15
Blue Hearts 様
 無沙汰しております。ブログ主に事情あって、昨年11月より休止中との由、初耳です。
 そこで、過去に遡及して掲載記事を閲覧していたところ、この昔の教え子の勤務状況の報告記事に遭遇。新型肺炎が猛威を揮う惨禍の下、街中の料理店の経営状況やスタッフの労働実態の報告を興味深く拝見。
 「二外」(北京第二外国語大学の略称)の修士課程修了生と雖も、人脈が無ければ街のレストランで便所掃除や給仕をせざるを得ないとの由、それが掛け値無しの「北京の実情」なんですね。
 眠くなってきたので、続きはまた次の機会に送信します。お元気で。
 
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二外修士・周文毎疏さんの奮闘 (Yozakura)
2022-08-15 14:18:16
Blue Hearts さま
 その後も介護などに多忙な模様で、更新も久しく絶えて有りません。そこで、2年前に紹介された二外修了生にして飯店厨房で奮闘する周文毎疏(Zhou Wenyu、毎疏で一字)さん関連の記事を見掛けたので、勝手に書き込みます。
 御不用の節は、削除なさって下さい。失礼しました。

 中国の著名な作家・余華が2021年3月に発表しベストセラーとなった長編小説『文城』は発売後僅か3ヶ月で100万部以上の売上げを記録、現在も人気があるそうです。
 日本の某新聞(2022/06/25日付け)に掲載された小説『文城』に関する書評に、周さんを髣髴とさせる一文がありましたので、以下に引用します。

######(引用開始)
 中国の若者の失業率は既に2割近い。大学を卒業しても満足出来る就職先は少なく、人気のIT企業に就職出来ても激務が待つ。高官や裕福な家庭の子弟とフツーの庶民の子供の間には埋め難い格差が有る。
 ----経済成長を果たした今も、中国では余華が書く小説の世界と根本的に変わらない過酷な時代が続く。だからこそ、中国人は余華が描き出す「それでも生きて行く人々の姿」に共感し、勇気付けられるのかも知れない。
######(引用終了。表現を一部、読み易いように書き直した箇所が有り)

 ぶるーハーツ氏の教え子は、決して特殊な事例ではなく、北京の何処でも散見される若者の一人なのでしょう。
 私も彼女の活躍から刺戟を得たいものです。お元気で。
返信する

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