D(三女の夫、フィリピン人)は、昨年9月よりALT(語学補助教員)になり、公立中学校で英語を教えています。
今年度も無事に契約更新ができました。
「お父さん、来週から日本語を教えます」
「ん? 教えるじゃなくて、習うでしょう?」
「いいえ、教えるんです」
「だれが?」
「私が」
Dは、日本語能力試験5級をかろうじて合格しましたが、続いて受けた4級は不合格。日本語を教えるレベルにありません。
「だれに?」
「転校生です」
Dによれば、今週、Dが勤務する中学校に、山形県から転校生が来たんだそうです。中学2年生のフィリピン人の女の子。
「ふーん、日本語ができないんだ」
日本に来てまだ5か月なので、日本語がほとんどできない。
「日本語だけではなく、英語もできないんです」
「フィリピン人なのに、英語ができないの?」
「タガログ語しかできません。だから、話が通じるのは私しかいないんです」
このままでは、授業についていけないので、学校としても日本語を教えたいらしい。それでDに白羽の矢が立ったということです。来週から、週に何日か、マンツーマンで日本語を教えることになったんだそうです。
「でも、フィリピンの中学生で、英語ができないのは珍しいよね」
「そうですね」
フィリピンの国語はフィリピノ語(タガログ語)。小学校は、はじめはフィリピノ語で授業をしますが、小学校3~4年生ぐらいから、授業の言葉は英語になります。なぜなら、フィリピノ語は勉強に必要な語彙が整っていないので、各教科の内容が難しくなると、授業の言語としては使い物にならなくなるからです。
フィリピンの公立小学校は、学校と教師の不足のため、1つのクラスの生徒が60人もいて、しかも学校は半日。午前と午後で生徒が入れ替わります。
おまけに、5か月前に来日するまで、数年間、コロナ禍で学校が閉鎖されたりして、満足な教育が受けられなかったらしい。
「でも、日本語を教えるのは本来の仕事じゃないよね」
「私はALTですから、日本語を教えるのも仕事の一つです」
ALTはしばしば「英語補助教員」と訳されますが、Assistant Language Teacherですから、正確には「語学補助教員」。確かに、外国人にとっての日本語は「語学」に違いない。
「でも、教えるとなったら、Dももっと日本語勉強しなくちゃね」
「はい、がんばります」
Dはどこまでも前向きです。
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