写真:最終日、叔父さんの家での食事
バナウェの棚田を見物したあと、いったん宿に帰り、荷物をまとめました。次の日の午前3時に出発する予定だからです。
そして夜は、お祖母さんの弟で、この村でいちばん「偉い」という、叔父さんの家に招待されました。
叔父さんには2日間、車を借りたので、ガソリンは満タンにして返そうと、ガソリンスタンドに寄りました。ところがD(三女の夫)が、スタンドの店員ともめています。
Dがお金を払うというと、店員はこの車に入れるガソリンの料金は受け取れない、と主張したのです。
なぜなら、この車はイフガオ州の公用車なので、ガソリン代は州が払う。ガソリンスタンドは、あとで州に請求するというシステムなんだそうです。ただ、それに際して運転手が名前を書かないといけない。もうガソリンを入れた後なので、しかたなくDが名前を書きました。
「あとで、問題になったりしない?」
「大丈夫でしょう。あとで、おじさんに言っておきます」
おじさんの家には叔父さん以外に、Dのお母さんと、お祖母さんの姉妹2人が集まってくれていました。
大きなテーブルには、叔父さんの奥様の手作りの料理が並べられます。
アドボ(肉の煮込み)、ディヌグアン(血を使った肉の煮込み)、蒸し鶏、スープが2種類。お酒は、ライスワイン(どぶろく)と、ジン(アルコール度数80%)、ブランデー。
ふつう、フィリピンの食事は、メインのおかず一つに、山盛りのごはんですから、こんなに何種類ものおかずが用意されるのは、異例です。
アドボは、結婚式でも出たし、日本でもときどきDが作ってくれますが、今回食べたものがいちばんおいしかった。
「これはアヒルだよ」
蒸し鶏と思っていたのは、アヒルの肉でした。
「これ、もしかしたら、頭ですか?」
「そうそう、それは中の脳みそがおいしいんだ。ちょっと包丁をもってきて」
私の目の前で、アヒルの頭を真っ二つに切ってくれました。
私は、これまで羊や豚の脳みそは食べたことがありますが、アヒルは初めて。アヒルですから脳みその量は少ないですが、クリーミーな、魚の白子のような味わいでした。
「はるばる日本から駆けつけてくれて、感動したよ」
昔、サウジアラビアの男性がイフガオの女性と結婚して、イフガオで結婚式を挙げたことがあるそうですが、そのとき男性の両親は来なかったそうです。今回、私たちが結婚式のために日本から来たことが、印象的だったようです。
あとでDに聞くと、結婚式の席で私たちが来ていることを知り、急遽、今日の晩餐の場を用意してくれたとのことです。おじさんはこの村でいちばん「偉い人」なので、Dは終始緊張気味でした。
途中で、もう一品、蒸し鶏が運ばれてきました。
「こちらは地鶏。イフガオの料理は、本来、いろんなスパイスは使わず、塩だけで食べるんだ」
身がしっかりとしていて、噛みしめると鶏のうま味がにじみだす、とても美味しい一品でした。
翌日のことがあるので、晩餐は8時前に終わり、宿に帰りました。
公用車の私的使用があとで問題にならなければ、と思います。
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