犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

さいたま市の英語教育

2022-09-29 23:12:29 | フィリピン
 少し前の朝日新聞に、各自治体の中学生の英語力に関する記事がありました。

 記事によれば、埼玉県のさいたま市が、2021年度の文科省の調査で3回連続日本一に輝いたということです。

 これは全国47都道府県と30政令指定都市を対象に、中学3年生の英語力が「英検3級相当以上」に達している生徒の割合を比べたもの。

 20年度はコロナ禍で調査が中止されましたが、18年度、19年度もさいたま市が1位だそうです。

 全国平均は47%なのに、さいたま市は86.3%で二位は福井県(85.8%)。この二つが突出しています(三位福岡市は66・0%)。

 さいたま市の子どもたちが優秀だからではなく、市の英語教育が優れていると考えるべきでしょう。

 記事はその理由を4つ挙げています。

①授業時間が多い。
 国が定める標準授業時数より、小1~中3の9年間の授業時間が260時間も多いんだそうです。

②独自開発の教材を使っている。
 9年間で4技能をバランスよく学べるような教材が用意されている。

③ALT(英語指導助手)の数が多い。
 2022年は145人で、すべての小中学校にALTを配置し、別枠で外国人にも英語教諭免許を与えているとのこと。

④効果測定をしている。
 英語授業の効果測定を4技能について行い、授業改善に役立てている。


 さいたま市の英語教育の取り組みは、市のホームページでも見ることができます。

さいたま市の英語教育“グローバル・スタディ”

 まあ、これだけ力を入れているんだから、よい結果が出るのも当然でしょう。

 逆に、英語の時間を9年間で標準より260時間も増やしているというのは、他の科目の授業時間をそれだけ減らしているわけですから、その悪影響はないのかどうか。これについては追及しないことにします。

 ALT(英語指導助手)について興味があったので、調べてみました。

 2021年度はまだ決算が発表されていないので、2019年度を調べました(2020年は学力調査未実施)。

 文科省の「英語教育実施状況調査」(2019年)によると、さいたま市のALTは小中高、合わせて189人。

 そのうち、JETプログラムのALTは3人(1.6%)だけ。残りはすべて直接雇用です。

 2019年の市の決算書をみると、ALTにかけた費用は
小・中学校:446,390,977円
高校:11,796,430円
約4億5800万円でした。

 一人当たりでは、約242万円。ALTの中には、パートタイムや、年度の途中で入れ替わった人も含まれていると思われます。

 他の自治体と比べるため、神戸市のALTを調べてみました。

 文科省によれば、神戸市の2019年のALTは190人で、さいたま市とほぼ同じ。JETプログラムのALTは147人で77.4%。4分の3以上がJET-ALTなのでした。

 2019年の市の決算説明資料をみると、ALTにかけた費用は628,535千円。約6億2850万円でした。

 ただし、ここには「ALT131 名・英語専任教員等39名」となっていて、文科省の数字(ALT190人)と異なっています。理由はよくわかりません。

 もし、170人に対する費用とすれば、一人当たり約370万円。190人に対する費用なら、約331万円

 いずれにしても、JET-ALTが費用的に割高であることが裏付けられます。

 さいたま市は、ALTを含む英語教員の研修に約520万円使っています。

 さいたま市のような直接雇用ALTは長期に勤務する者が多いので、研修によって教育スキルを向上させる意味があります。

 しかし、JETプログラムのALTは多くが2年で帰国してしまうので、研修の意味が薄く、スキルの向上も望めない。

 質の良い教育のためには直接雇用のALTにアドバンスがあり、かつ費用的にも割安であることがわかると思います。

 ALTの報酬については、以前書いたようにJETプログラムでは、1年目336万円、2年目360万円、3年目390万円、4・5年目396万円(すべて税込み)のほかに、一往復分の渡航費用、社会保険への加入、家賃補助などがあります。

 さいたま市の直接雇用は、現在2023年度の募集が行われています。(リンク

 週25時間で時給2,981円ということですから、フルに働けば月収は約30万円(別途賞与あり)。住宅手当がない分、JETプログラムより劣るかもしれません。

 埼玉県の中で、さいたま市以外は民間の派遣会社と契約している自治体も多いですが、埼玉県と近隣都県の派遣会社の求人もネットで見ることができます。

目についたところでは、
A社:月21.5万円~25.0万円
B社:月18万円~26万円
C社:月20万円
D社:月22~25万円

など。

 どこも似たり寄ったりで、直接雇用に比べるとずいぶん低い。

 ただしこれはALT個人の収入で、自治体の負担額ではありません。自治体は直接雇用以上の金額で派遣会社と契約していると思われます。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 安倍氏の国葬に想う | トップ | 萬壽と秋刀魚 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

フィリピン」カテゴリの最新記事