犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

塩問題

2018-10-08 23:04:18 | 介護生活

 妻は、一般病棟に移る少し前から、点滴以外に食事をとることが許されるようになっていました。ご飯はおかゆ、おかずも小さく切ってあって、柔らかいものが中心です。脳梗塞の後遺症として、嚥下障害(食べ物が飲み込みにくい症状)があるそうですが、幸い、妻は大丈夫でした。

 病院食というと、味付けが薄くて、まずいという印象があります。

「味はどう?」


「けっこうおいしいよ。でも、これがね」


 袋に入った粉末を指さします。

「塩なんだけど、まずいの」


 脳梗塞は、ナトリウムの摂取が重要で、毎日一定量の塩を摂取しないといけないらしい。

 食事にももちろん入っていますが、食事を残すと摂取量が減るので、塩が薬のように処方されます。

「塩だからしょっぱいのは仕方ないよ」

「違うのよ、まずいの」


「塩にうまいもまずいもないでしょう」


「あるわよ。うちにおいしい潮があるから、それ持ってきて」


 そういえば、家には塩野コレクションがありました。赤穂の塩、沖縄の塩、ヒマラヤの岩塩……。娘が南米に行ったときに買ってきたウユニ塩湖の塩なんていうのもあった。

「じゃ、看護師さんに聞いてみるね」

 答えは予想通りノーでした。別のミネラルが入っているのは望ましくないこと、量が正確でないといけないこと、家から持ち込んだ塩をそのつど正確に測る手間をかけられないこと、など、どれももっともな理由でした。

 それらを説明すると、いったんは納得するのですが、翌日の面会時にも、同じことを言う。

「昨日、説明したでしょう?」


「そうだったかしら」


 3日目も同じだったので、リハビリに回ってきた先生に聞くと、脳梗塞には短期記憶の障害もあるとのこと。妻の症状も、それかもしれません。


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