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悲しき熱帯




インドネシアではレヴィ=ストロースの「悲しき熱帯」を読み返そう、とずっと前から決めていた。
80年代に衝撃の出会いをして以来、憧れの星レヴィ=ストロース。


「音や匂いが色をもち、感情に目方があるように、空間は、それに固有の様々な価値をもっている。」


屋外で本を取り出すと、周囲の熱帯雨林が吐き出す濃厚な香りの湿気の中で、本はぐんぐん水分を吸い、ページは見る見るうちにふにゃふにゃになり、そのままこの土地の水か風に還元されてしまうのではないかと思われた。
ついでにわたしの枯れた肌もクチクラ層のようにつやつやだ。



早朝、ベッドから5歩目のプールの中に滑り込み、日が昇るとともに陰へ退散。読書。パンタグリュエル式に食事。蟻が行列を作ってパン屑に向かって来る。

午後、空と海の色がアイスコーヒーのグラスにミルクを注ぐように変わり、やがて熱帯性の通り雨が訪れると、鬱蒼と茂る熱帯植物の葉がごうごうと鳴りだす。ガゼボでヤッツィーをして遊ぶ。

夜中になると再び水の中に滑り込む。釣り船の明かりを飽きることなく眺める。ヤモリが鳴く。コウモリが飛ぶ。

そして天蓋に美しい蚊帳をつった王の寝床のようなベッドで深い眠りにつく。クーラーの唸る音。夢はひとつも見ない。



この間、会ったのはマネージャー3人とバトラーとクリーニングサービスの人々。チェックイン時とマングローブツアーに行った時、同じホテルのいずれかのヴィラに宿泊している客を見かけただけで(マングローブツアーで一緒だった日本人の女性が話しかけてくれたのだが、とても感じのいい方で、またお会いしたいくらいだ)、わたしは孤独なサンショウウオのようだった。



「世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう」









毎度のことですが、意味不明で申しわけありません。わたしに普通の旅行記は書けそうもありません。



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