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崖っぷちの幻の城




金曜日の夜の「魚介の夕べ」を目当てに、ハンプシャー州のフォーシーズンズ・ホテルへ。
昨日の日曜日は天気が荒れに荒れ、室内でも湿った空気のベールをかけたようになった人々の顔立ちも、そして外の煙る風景なども、非常に美しく見えた。


ここは英国で家探しをしている時に長期滞在をしたホテルなので、訪れるたびに複雑な気持ちになる。
わたしたちの英国生活が始まった原点であり、かつ英国の現実へと引きずり落とされた崖っぷちに立つ幻の城、と言いますか。

ここのバアが、ブルージュ時代毎日通った近所のKホテルのバアの代わりになるかもと思ったりもしたのだが、片道車で20分、30分の距離は全然プラクティカルではないということに気づくのにあまり時間はかからなかった...
そういうわけで、Kホテルのバアの代わりに使っているのは街のパブである。
まあ素顔にコートをひっかけて行っても全然気兼ねがないのはいいのだが、わたしにとって「一杯飲みに行く」というのはそういうことではない。アルコールを摂取するために行くというより、服装と髪を整え、設えられた空間で無国籍のいい女になったような気分を味わせてもらうところなんですがね。


「英国生活とはこういうものである」という外国人(ばかりでなく英国人自身)の夢を紡いだようなフォーシーズンズ・ハンプシャー(丘陵地帯にあるマナーハウス、感じのいいホテルスタッフ、火の絶えない暖炉、釣り、乗馬、ハンティング、ハイキング、古いジャガー)。
初心な外国人家族を惑わすとはなんと罪深いことか。

身内には「...映画の見過ぎ」と言われた。
(そしてわたしは「日の名残り」の最後のシーンを思い出す)


(写真はかなり古いものです)
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