今回も古い癋見(べしみ)面です。
幅17.4㎝ x 長23.0㎝ x 高7.6㎝。重 422g。室町―江戸。
少し大型の面です。能面系ではないようです。
木彫木地に胡粉を塗り、黒、赤色に彩色してあります。塗りの剥落している部分を見ると、一番下に紙があります。この面は、以前紹介した般若面と同じく、木彫の上に和紙を貼り、その上に胡粉、漆塗りをしていることがわかります。
カッと見開いた眼と、
グッとくいしばった口。
眉毛、口髭、顎髭は、植毛されていたようです。一部が残っています。
額から鼻にかけて、虫食いではなく、磨られたようになっています。
特に、鼻の先がスパッと切れたようになっています。
裏面の彫りは大変深く、これまで見てきた古面にはなかった彫り方です。
眼は深い円錐になっています。
さらにこの面で特徴的なのは、異様に大きな耳です。
故玩館には、古面に関する書籍や図録が70冊ほどあります。それらを繰ってみると、このように大きな耳は、伎楽面に多く見られることがわかりました。
伎楽面「力士」、奈良時代、東大寺蔵(『大和の仮面』奈良県立美術館、昭和53年)
耳や髭、怒った表情が似ています。
他にも、表情が似ている面(行道面)がありました。こちらには、耳、髭はありません。
行道面「王鼻」、鎌倉時代、知立神社蔵(『仮面の美』熱田神宮、平成16年)
伎楽面は、7,8世紀頃行われていた歌劇、伎楽で用いられた仮面です。飛鳥時代に大陸から伝来し、法隆寺、東大寺に多く収蔵されています。行道面は、大寺院の儀礼で境内を練り歩く時に用いられた面で、9世紀頃、インド、中国から伝わりました。
能面系統の古面とは異なり、いずれも大型で、大陸的風貌を備えています。
先回の癋見(べしみ)と今回の品を較べてみると、今回の面は、どことなく大陸的な雰囲気が感じられます。
これまで、古面の鼻先の欠けは、寄木でつけた部分が外れたものだとばかり思っていました。しかし、上の図録の面も含め、平らな鼻には共通的な様式があるように見えます。鼻先はくっつけた部分が外れて失われたのではなく、何かの理由(宗教的?)により、鼻先、そして額が削られたのではないかと、今は考えるようになりました(^.^)
能面は、独自に発展したのではなく、こうした、伎楽面などの要素も取り入れながら、作られるようになってきたのでしょうか、、、?
「故玩館には、古面に関する書籍や図録が70冊ほどあります」か!
それだけでも、凄いコレクションですね(^-^*)
大体、分類法も定まっていません。
何か手掛かりはないかと、それらしい出版物を一つ二つと手にしているうちに、結構な数になりました。
それでもやっぱりわかりません(^^;
ですから、ブログを書くにしても、タイトルが付けられないのです(^^;
なもんで、しかみやべしみに入りそうな物は無理やり取り上げている次第です(^.^)
能面と伎楽面などの関係はありそうでなさそで、微妙です。いずれも神社仏閣関係ですから、常識的に考えて、無関係ではありえないでしょうね。大陸伝来の古面を横目に見つつ日本的な面をつくり上げてきたのではないでしょうか。