以前のブログで、長崎螺鈿手元箪笥と長崎螺鈿菓子箪笥を紹介しました。
今回は、長崎螺鈿の広蓋です。
広蓋とは、文字通り、大きな蓋です。贈り物をするとき、衣装箱の蓋にのせて相手にさし出したのが始まりと言われています。その後、縁のある大きな漆盆が専用に作られるようになりました。今回の品は、さらに4本の足をつけて、格式を高めています。
なお、今でも、地域によっては、結納に広蓋を用いるそうです。
幅 41.7㎝ x 長 60.1㎝ x 高 13.2㎝
うーん、一体、何をのせて、誰に贈り物をさし出す?入れ物が立派すぎるのも考えものですね(^^;)
漆黒の漆面の上に、彩色した薄青貝を貼り付けて、花鳥図を描いています。
そこはかとした、か細いタッチです。
鳥は、かなり力作です。
が、長崎螺鈿の場合、螺鈿の剥がれはどうしてもさけられません。
裏側です。
裏面は梨地です。
漆面の劣化がすすんでいます。
やはり、長崎螺鈿の堅牢度は、低いと言わざるをえません。
実は、この長崎螺鈿広蓋、もっと早くブログにのせるつもりだったのですが、箱が見つからないのです。
広蓋が入っていたのですから、かなり大きな箱です。故玩館以外の場所も探したのですが、行方が知れません。で、やむを得ず箱無しでアップした次第です。
長崎螺鈿は、江戸後期から明治初期にかけて作られました。故玩では、オリジナルの箱は貴重です。製作年を特定できるからです。おぼろげな記憶をたどると、嘉永〇年と書かれていたように思います。ペリー提督が日本へ来た頃ですね。
静閑な花鳥図螺鈿と黒船、幕末を象徴するかのようです。
カリグラフィや毛筆をしたためる知人がいれば最高ですが、難しいですね。ただ、女性の間で絵手紙(実際は、手描きの絵ハガキ)が流行っています。なかなか味わい深いものを描く人もいますから、ずらっと並べてもいいですね。
ずっと以前、Antique Shopで、17世紀頃のIndentureを買いそびれてしまったのが心残りです。すばらしいカリグラフィーでした。
今度のは華やかですね~。スズメ、細かいですねー。これだけの貝を集める手間、細かい作業と技は総合芸術ですね。
日本のデザインはくどくないセンスが心地いいです。鎖国の間に着々と技術を磨いていた匠の意気がすごいですね。
目の保養になりました。
長崎螺鈿は、唐物と日本の花鳥風月が結びついて幕末に咲いた徒花です。これ以上の装飾だとクドクなる、ギリギリですね。あのシーボルトもかなり本国へもって帰っています。
平和な時代が続きましたから、人々の目が肥え、匠も腕をみがいたのでしょうね。
まるで不思議なポケットの様です。
今回の漆盆、かなり大きなものの様ですが
螺鈿で細工された花鳥がとても素敵ですよね。
何と言いましても野鳥が生きてます。
しまっておくには勿体ないかな。
今回の品は、盆として大きい方ですが、小物が多い長崎螺鈿のなかでは最大級でしょう。
花鳥の描き方は日本的ですね。
しまうにも場所をとるので、一応展示してあります(^^;)
長崎螺鈿は、見栄えのする漆器を比較的簡単に作るにはどうしたらよいか、の発想でできています。ですから、奥深さはありません。良かったのは、唐物を手本にしながらも、日本的デザインを生かしたところだと思います。