かなり古い茶棚です。
幅 46.0㎝、奥行 34.5㎝、高 77.3㎝。中国、明ー清。
中央に収納部を備えた茶棚です。骨董屋の店先で私を待っていました。聞けば、高齢の趣味人の所から出た品とのこと。こんなのが一つ欲しかったので、私には珍しく即決となりました。さすがに野口先生では歯が立たず、福沢諭吉先生何人かのお世話になりました(^^;
左面:
右面:
背面:
あちこちに痛みがあり、目立たないように漆を塗りました。螺鈿の剥がれは、白塗りでお茶を濁しました(^^;
元々、かなり凝った造りなので、素人補修でもなんとか様になりました(^.^)
中央部は、2枚の戸をスライドさせて物を出し入れできるようになっています。扉の把手は蝶の形になっていて、玉製です。
文字の部分は、写真では白ペイントのように見えますが、
近づくと確かに螺鈿であることがわかります。
では、いったい何が書かれているのでしょうか。
天板の文字はわかりません。
中段:
福 自
天 来
丹 鳳
朝 陽
福自天来・・・雲の中に蝙蝠が飛ぶ図。吉祥画題。
丹鳳朝陽・・・朝日に鳳凰図。吉事、平和の象徴。
下段:
呈 (祥)
富 貴
芝 仙
祝 寿
呈祥は龍鳳、富貴は牡丹、 芝仙は霊芝を表し、長寿を祝う。
左面:
春 風
満 坐 (すべての人々)
十 里
荷 香 (荷=蓮)
春風がそこの人々すべてに吹きわたり、蓮の香りが十里にもわたって香る。
右面:
雲 中
白 鶴
左 琹(琴)
右 書
雲中白鶴・・・世俗を超越した高尚な境地にいる人。雲は高潔な境地のたとえ。
左琹(琴)右書・・・琴と書とともにある文人生活を表現。
棚物入扉:
倦夜 杜甫
竹涼侵臥内
野月満庭隅
重露成涓滴
稀星乍有無
暗飛蛍自照
水宿鳥相呼
萬事干戈裏
空悲清夜徂
竹涼(ちくりょう)は臥内(がだい)を侵し
野月(やげつ)は庭隅(ていぐう)に満つ
重露(ちょうろ)涓滴(けんてき)を成し
稀星(きせい)乍(たちまち)に有無
暗きに飛ぶ蛍は自ら照らし
水に宿る鳥は相呼ぶ
萬事は干戈(かんか)の裏
空しく悲しむ清夜の徂(ゆ)くを
竹林の涼気が寝室に入って来て、
野の月の光は庭の隅々にまで満ちている。
草葉の露は集まって滴となり、
まばらに浮んだ星がまばたいている。
暗闇の中に飛ぶ蛍は自分のまわりだけを照らし
水に宿る鳥は互いに呼び合っている。
しかし、静かで平和な自然の営みがある一方で、
世の中には戦いが渦巻いている。
私は空しく悲しむ。清らかな夜がふけていくのを。
この品を入手した時は、螺鈿の具合から、中国か李朝の品物か判断が付きませんでした。しかし、書かれた詩句を読んでみると、中国の品、それも文人にふさわしい物であることがわかりました。
これはもう、この茶棚に道具類を置き、煎茶をすするより外はありませんね(^.^)
また、螺鈿で書かれた文字は杜甫の漢詩であることが分かり(私には読めませんが、、(><))、高尚な文人趣味の持ち主の物であったことも分かりますね(^-^*)
確かに、「これはもう、この茶棚に道具類を置き、煎茶をすするより外はありませんね」!
優れた煎茶用の道具類も既にお持ちですから、即、実行可能ですね(^-^*)
実は、この棚には、もうガラクタ煎茶具がギッシリのせてあります。彼らには、ブログの写真を撮るために、一時避難していただいたにすぎません(^^;
避難先から戻るまでに、この前で煎茶をすすって、老主人の役を演じてみます(^.^)
一癖も二癖もある老人というのはモノの良し悪しのわかる老人ということですね。そういう老人がいたからこそ、こういうお値打ち品が今も残っているのでしょうから、癖のある老人バンザイですね。
でも、そんなヘンクツ老人もとんと見かけなくなりました。時代ですね。
平凡で癖のない遅生などは、とても骨董屋の主人になれません(^^;