今年(2020年)の3月9日に「都道府県、都道府県庁所在地(都市)くらいは覚えておこう」という記事を掲載しました。今回はその続編です。
私は、行政法、租税法および財政法を専攻しています。そのため、地方自治(法)の講義を担当することもありますし、地方税財政を中心に地方自治に関連する論文などを書くこともあります。昨年には沖縄県宮古島市の事件について沖縄タイムスにコメントをさせていただきました。
こういう仕事柄かもしれませんが、少なからぬ学生に地理の知識の欠如、とまでは言いませんが地理の知識の不十分さが目立つことを痛感しています。そのことは「都道府県、都道府県庁所在地(都市)くらいは覚えておこう」にも記しましたが、ゼミの場などでも感じています。
租税法や行政法で有名な判例をゼミで取り上げた時のことです。舞台は愛媛県の今治市なのですが、この「今治」を読めない学生がいたので驚きました。おそらく、インターネットで調べることもなかったのでしょう。「いまじ」と読んだので、すぐに私は「今治タオルを知っているでしょう?」と質しました。
もっとも、私が知っている範囲ですが、大学入試で地理を選択する受験生が少ないのです。これにも驚きました。私の高校生時代には、社会科では倫理・政経が最も受験生の少ない科目でした。そもそも、倫理や政治・経済が必修という高校が少なかったのです(私が通っていた神奈川県立多摩高等学校は、倫理および政治・経済が必修でした)。1997年に大分大学教育学部に講師として就職した時にも、社会科を専攻する学生の多くは地歴(地理および歴史)を選択する人が多く、公民(政治学、経済学、法律学、社会学)を選択する人は少なかったのです。いつから地理が人気のない科目になったのか、と思い続けています。
「政府統計の総合窓口 統計で見る日本」というサイトに「市区町村数を調べる」というページがあります。それによると、2020年5月3日時点における市町村数は1724です。内訳は、政令市が20、政令市以外の市が772、町が772、村が189です。この他、特別区が23(いわゆる東京23区です)、区(政令指定都市に置かれる区)が175です。
さすがに1724市町村を全て覚えるのは大変ですし、どこまで実用性があるのかもわかりません。しかし、各都道府県の代表的な市(場合によっては町村も)を、都道府県庁所在地を含めて覚えておく必要はあるでしょう。そうしておけば、何かと便利です。実際、行政法などの判例を読む際には、事案を読む必要がある訳で、そうなると問題が起こった場所が何処なのかということを大まかに知っておく必要があるのです。
また、各都道府県には都道府県庁がありますが、その所在地がその都道府県で最も大きな規模の都市とは限りません。その典型が山口県で、人口が最も多いのは県庁所在地の山口市ではなく、下関市です。また、福島県の県庁所在地は福島市ですが、経済規模では郡山市のほうが大きいと言われています。福岡県でも、今でこそ県庁所在地である福岡市への一極集中的現象(これは福岡県内のみならず、九州全体です)が指摘されるほどですが、政令指定都市になったのは北九州市のほうが先で、1963(昭和38)年4月1日のことです。福岡市が政令指定都市となったのは1972(昭和47)年4月1日で、札幌市および川崎市と同時でした。政令指定都市といえば、静岡市は2005年4月1日に、浜松市は2007年4月1日に政令指定都市となったのですが、人口は浜松市のほうが多いのです。以上は、それぞれの都市の背景などを全く抜きにして記していますので、厳密さも何もないのですが、各都道府県の県庁所在地だけを覚えるのでは足りないことがあるということをわかっていただければ、と思う訳です。
ちなみに、多くの県庁所在地には国立大学の本部がありますが、そうでない所があります。たとえば、青森県にある国立大学は弘前大学で、本部は弘前市にあります。また、滋賀県にある滋賀大学の本部は彦根市にあります(大津市にもキャンパスはありますが)。滋賀大学と似た例が信州大学です(本部は松本市にあります)。
覚え方としては、日本地図でもよいし時刻表の地図(JR路線図)でもよいし、とにかく地図を見ることです。新幹線の駅で覚える方法もありますが、県庁所在地に新幹線の駅がないという県もあるので〔東海道新幹線なら岐阜県と滋賀県、九州新幹線なら佐賀県(新鳥栖駅は鳥栖市にあるので)、上越新幹線なら群馬県、北海道新幹線なら北海道(まだ新函館北斗までしか開業していないので)〕、在来線のほうがよいでしょう。
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