個人住民税は、都道府県個人住民税と市町村個人住民税の総称である。いずれも所得割と均等割からなっていたが、1987(昭和62)年度の改正により、都道府県個人住民税についてのみ利子割が課されており、2004(平成16)年1月1日からは、やはり都道府県個人住民税についてのみ、配当割および株式等譲渡所得割が課されている。これは、利子割について言うならば、利子を支払う金融機関の所在地と、その支払を受ける個人の住所または法人の事務所や事業所の所在地が、市町村レベルでみると一致しないことが多いが、都道府県レベルでみれば一致することが多くなるからである、と説明されている〈金子宏『租税法』〔第二十三版〕(2019年、弘文堂)657頁〉。配当割および株式等譲渡所得割についても同様の理由によるものであろう。
また、都道府県個人住民税と市町村個人住民税には、納税義務者などについて基本的に共通する要素が多い。このため、市町村は両者(所得割および均等割)を一括して徴収することとされている。
1.納税義務者
個人住民税の納税義務者は、次のようになっており、それぞれ、義務の範囲が異なっている。
(1)都道府県または市町村に住所を有する個人(地方税法第24条第1項第1号、同第294条第1項第1号):所得割および均等割の合算額
住所は、市町村の住民基本台帳に基づいて判断される(地方税法第24条第2項、第294条第2項)。但し、住民基本台帳に記録されていない個人についても、真実に住所を有する者と認められる場合には、住民基本台帳に記録されているとみなして課税することが認められる(第24条第2項、第294条第3項)。
(2)都道府県または市町村に住所を有しないが、事務所、事業所、家屋敷を有する個人(同第24条第1項第2号、同第294条第1項第2号):均等割のみ
(3)利子の支払またはその取扱いをする者の営業所等で都道府県内に所在するものを通じて利子等の支払を受ける者(同第24条第1項第5号):利子割
(4)特定配当等の支払を受ける個人で、その特定配当等の支払を受けるべき日現在において都道府県内に住所を有するもの(同第24条第1項第6号):配当割
(5)特定株式等譲渡対価等の支払を受ける個人で、その特定株式等譲渡対価等の支払を受けるべき日の属する年の1月1日現在において都道府県内に住所を有するもの(同第24条第1項第7号。租税特別措置法第37条の11の4第1項、同第37条の11の3第3項第1号も参照):株式等譲渡所得割
一方、非課税とされる者は、概ね次のとおりである。
まず、生活保護法による生活扶助を受ける者(地方税法第24条の5第1項第1号、同第295条第1項第1号)、障害者、未成年者、寡婦または寡夫であって、前年中の合計所得金額が125万円以下である者(同第24条の5第1項第2号、同第295条第1項第2号)には、所得割および均等割が免除される。従って、障害者、未成年者、寡婦または寡夫であっても、前年の所得が125万円を超える者は所得割および均等割の納税義務を負うこととなる。
次に、前年の所得、すなわち、総所得金額、退職所得金額および山林所得金額の合計が35万円に「その者の控除対象配偶者及び扶養親族の数に1を加えた数を乗じて得られた金額(その者が控除対象配偶者又は扶養親族を有する場合には、当該金額に32万円を加算した金額)以下である者」については、地方税法附則第3条の3第1項および第4項により、所得割が免除される(同第2項および第5項も参照)。但し、地方税法第50条の2に規定される退職手当等に係る所得割は免除されない。
また、同第295条第3項により、前年の合計所得金額が地方税法施行令第47条の3で定める基準に従って市町村の条例で定められた金額以下である者は、均等割が課税されない。これ自体は市町村個人住民税に関する規定であるが、地方税法第24条の5第3項により、都道府県個人住民税の均等割も非課税となる。
2.所得割
所得割は、所得を課税標準とするものである。同第32条第1項および同第313条第1項は、課税標準を「前年の所得について算定した総所得金額、退職所得金額及び山林所得金額とする」と定めているので、国税である所得税の課税標準と同一であり、しかも、地方税法および同施行令において特別の定めのない限り、所得税法に定められた計算の例によることとなっているので(同第32条第2項および同第313条第2項。但し、所得税法第60条の2ないし第60条の4の例によらないこととされる)、課税標準および確定手続の面において所得税と連動することになる。
この連動について、碓井教授は三つの問題を指摘する。
第一に、賦課処分に不服のある納税義務者が何を争わなければならないのかという問題である。所得税と所得割とが連動しているということからすれば、所得税の確定を争うべきであるという考え方も成立する。一方、住民税の賦課処分を争い、その中で所得税の確定内容が違法であることも争いうるという考え方も成立する。
碓井教授は、「所得税基準方式は、所得税に関する確定の結果のみを活用する方式であって、所得税に関するこれらの確定の経緯までが、市町村長に通知されているわけではない」ために「実質的に適切な主張立証のできる税務署長を被告とする訴訟に一本化して紛争をすべきであるという考え方にも説得力がある」と述べつつ、「結局、所得税に関する争訟期間を徒過した納税者に対して住民税固有の救済の機会を与える必要性があること、及び被告を市町村長とすることが自然なこと、を考慮して、住民税の賦課処分を争うなかで争える(―所得税の確定を。引用者注)という考え方に与しておきたい」と述べる〈碓井光明『要説地方税のしくみと法』(2001年、学陽書房)83頁を参照〉。
第二に、地方税法第316条の解釈である。同条は「市町村は、当該市町村の市町村民税の納税義務者に係る所得税の基礎となつた所得の計算が当該市町村を通じて著しく適正を欠くと認められる場合においては、前条の規定にかかわらず、総務大臣に協議し、その同意を得て、各納税義務者について、この法律又はこれに基づく政令で特別の定めをする場合を除くほか、所得税法その他の所得税に関する法令に規定する所得の計算の方法に従い自らその所得を計算し、その計算したところに基づいて、市町村民税を課することができる」という規定である。ここで「所得税の基礎となつた所得の計算が当該市町村を通じて著しく適正を欠くと認められる場合」とはいかなる場合を指すのかが問題となる。
碓井教授は、この規定が「標準率課税が原則的課税方式として通用していた時代の遺物と思われる」と述べるとともに〈碓井・前掲書84頁〉、同条が「なぜ存在するのかが現在の時点においては問われなければならない」と疑問を示す〈碓井・前掲書85頁〉。
第三に、やはり同条の問題であるが、同条においては総務大臣と協議し、その同意を得ることが要件とされている。それでは、仮に同意が得られないまま住民税が賦課された場合にはどのように評価されるべきであろうか。
碓井教授はこの同意の性質について明言していないが、許可制時代には許可について「効力要件説が支配的であった」としつつ、「この許可は、市町村の自主課税権の行使に対する予防的監督手段にとどまり、許可を欠く所得計算による賦課が、それだけの理由で無効になるとみる必要はなかったものと思われる」と述べる〈碓井・前掲書85頁〉。私は、地方自治法第245条第1号ニの同意と地方税法第316条の同意が同じ意味であるという前提を取るならば、地方税法第316条の同意は効力を完成させるための要件である、と理解する〈拙稿「地方税立法権」日本財政法学会編『財政法講座3 地方財政の変貌と法』(2005年、勁草書房)50頁を参照〉。
個人住民税の賦課期日は、各年度の初日の属する年の1月1日とされる(地方税法第39条、同第318条)。
所得控除は、同第34条および同第314条の2に定められており、所得税法に定められているものとほぼ同様である。但し、地震保険料控除、生命保険料控除、障害者控除、老年者控除、寡婦(寡夫)控除、勤労学生控除、配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除および基礎控除が、所得税の場合よりも低めに設定されている。たとえば、基礎控除は、所得税の場合であれば所得税法第86条によって38万円とされるが、個人住民税の場合は、都道府県の場合は地方税法第34条第2項により、市町村の場合は同第314条の2第2項により、いずれも33万円である。このため、課税最低限が所得税よりも低いものとなる。
▲なお、2020年1月1日より、所得税の基礎控除は次のように改まる。
合計所得金額が2,400万円以下である場合:48万円
合計所得金額が2,400万円を超えて2,450万円以下である場合:32万円
合計所得金額が2,450万円を超えて2,500万円以下である場合:16万円
合計所得金額が2,500万円を超える場合:0円
また、2021年1月1日より、個人住民税の基礎控除は次のように改まる。
合計所得金額が2,400万円以下である場合:43万円
合計所得金額が2,400万円を超えて2,450万円以下である場合:29万円
合計所得金額が2,450万円を超えて2,500万円以下である場合:15万円
合計所得金額が2,500万円を超える場合:0円
以上については、拙稿「地方税法等の一部を改正する法律(平成30年3月31日法律第3号)」自治総研478号(2018年)42頁、同「地方税法等の一部を改正する法律(平成30年3月31日法律第3号)」地方自治総合研究所監修・下山憲治編「地方自治関連立法動向第6集 第196常会~第197臨時会」(研究所資料No. 128、2019年6月)80頁も参照。
また、所得税法と地方税法とでは、寄附金控除の扱い方が異なる。所得税法第78条においては寄附金控除が所得控除とされている。これに対し、地方税法においては、寄附金控除が長らく所得控除とされていたのであるが、2008(平成20)年度改正により、税額控除に変更され、2009(平成21)年4月1日に施行された。
地方税法旧第34条第1項第5号の4および旧第314条の2第1項第5号の4は、都道府県、市町村または特別区に対する寄附金、共同募金会に対する寄附金、日本赤十字社に対する寄附金のみについて所得控除を認めていた。但し、共同募金会に対する寄附金については「その主たる事務所を当該所得割の納税義務者に係る賦課期日現在における住所所在の道府県内に有するもの」に限定され、日本赤十字社に対する寄附金については「当該所得割の納税義務者に係る賦課期日現在における住所所在の道府県内に事務所を有する日本赤十字社の支部において収納されたもの」に限定された。これに対し、都道府県、市町村または特別区に対する寄附金については、納税義務者の住所は無関係であり、「ふるさと寄附金控除」制度とも言われた〈以上については、拙稿「個人住民税の寄付金控除制度―『ふるさと寄付金控除』制度と『ふるさと納税』制度についての若干の検討」税務弘報56巻3号(2008年)106頁も参照〉。
この「ふるさと寄附金控除」制度の利用が低迷していたこともあり、2008年度改正で寄附金控除が税額控除に変更された上で拡充され、第37条の2および第314条の7に寄附金控除が定められた。このうち、都道府県、市町村または特別区に対する寄附金についての税額控除を「ふるさと納税」制度と称する〈拙稿・前掲税務弘報論文109頁、同「技術的困難性が露呈した『ふるさと納税』」納税通信2995号(2007年10月22日号)4頁を参照〉。しかし、「ふるさと寄附金控除」および「ふるさと納税」のいずれの制度も個人住民税の本来の趣旨と完全に矛盾し、負担分任原則や住民自治の理念(憲法第92条を参照)から逸脱するものと考えるべきである。
拙稿・前掲税務弘報論文108頁、109頁、111頁、同「2015(平成27)年度税制改正の概要と論点〜地方税制の重要問題を中心に~」自治総研440号(2015年)88頁、拙稿「地方税法等の一部を改正する法律(平成27年3月31日法律第2号)」自治総研446号(2015年)58頁を参照。
なお、所得割については、税額控除として、寄附金控除のほか、調整控除(地方税法第37条および同第314条の6)※、外国税額控除(同第37条の3、同第314条の8)、配当税額控除または株式等譲渡所得割額の控除(同第37条の4および同第314条の9)がある。また、本則ではなく、附則によるものとして、住宅借入金等特別税額控除(附則第5条の4第1項、第6項、同第5条の4の2第1項、第5項)がある〈いずれも、詳細については市町村税務研究会編「令和元年度版要説住民税」(月刊「税」令和元年9月号別冊付録、第74巻第9号)を参照。なお、川村栄一『地方税法概説—国税との比較で学ぶ地方税入門ー』(2009年、北樹出版)71頁を参照〉。
※これは、2006(平成18)年度の改正の際に、本文に記した三位一体の改革の一環として所得税から個人住民税へ3兆円規模の税源移譲が行われた際に設けられたもので、税源移譲の前後を通じて納税義務者の負担が変化しないようにする調整措置である。本文において述べたように、個人住民税の所得控除は所得税の所得控除より低額に設定されており、税源移譲によって個人住民税の負担に増減が発生する可能性があったためである。川村・前掲書67頁も参照。
所得割の税率は、都道府県個人住民税については4%を標準税率とする比例税率であり(地方税法第35条第1項)、市町村個人住民税については6%を標準税率とする比例税率である(同第314条の3第1項)※。但し、指定都市(地方自治法第252条の19第1項。いわゆる政令指定都市)の区域内に住所を有する者については、都道府県個人住民税については2%を標準税率とし(同第35条第1項)、市町村個人住民税については8%を標準税率とする(同第314条の3第1項)。
※但し、土地の譲渡所得については分離重課制度および分離軽課制度が採用される。これも、所得税の場合と同様である。
2007(平成19)年3月31日までは、都道府県個人住民税の場合には2%と3%の超過累進税率であり、市町村個人住民税の場合には3%と8%と10%の超過累進税率であったが、三位一体改革の一環として行われた税源移譲の結果、2007(平成19)年4月1日から比例税率に改められると同時に、超過累進税率の採用が禁止されることとなった※。この点について、金子宏教授は「住民税は地方公共団体の公共サービスの受益の対価(応益税)であり、所得再分配を目的とするものではないこと」および「税率の引上げ(5%から10%)と引下げ(13%から10%へ)によって、住民税の税収の偏在度を多少とも縮小できること」が理由であると述べる※※。
※これは平成18年法律第7号の施行日であり、実際の徴収については2007(平成19)年6月1日から、ということになる。
※※金子・前掲書652頁。引用文中にある「税率の引上げ(5%から10%)」は、超過累進税率の時代には最低の5%(都道府県個人住民税が2%、市町村個人住民税が3%)を適用されていた者について、比例税率の採用によって合計税率が10%に引き上げられたことを指す。また、「引下げ(13%から10%へ)」は、超過累進税率の時代には最高の13%(都道府県個人住民税が3%、市町村個人住民税が10%)を適用されていた者について、比例税率の採用によって合計税率が10%に引き下げられたことを意味する。
しかし、住民税の応益性が十分に証明されているとは言えないこと、そもそも応益課税の理論的根拠が実証不可能に近いこと、地方公共団体といえども住民間の所得の再分配などを行う必要性がないとは言えないこと、および、所得税法が超過累進税率を採用していることとの均衡に鑑みれば、比例税率の採用の妥当性には疑問をよせざるをえない。また、超過累進税率の採用の禁止は、地方税立法権に本質的な制約を課すものであり、この点からも、標準税率とされている点を考慮に入れなければならないとはいえ、疑問を出さざるをえない。
3.均等割
均等割は、所得の多寡などに関係なく、均等の額によって課されるものである。これは均等課税(平均課税)であり、人頭税の一種であるが、完全に個人に着目するものではなく、納税義務者に着目するものであるから、少なくとも部分的には実質上の世帯課税となっている。
都道府県個人住民税の均等割の標準税率は、同第38条によって1000円とされ、市町村個人住民税の均等割の標準税率は、同第310条によって3000円とされる※。都道府県個人住民税の均等割については軽減に関する規定が存在しないが、市町村個人住民税の均等割については同第311条により、「均等割を納付する義務がある控除対象配偶者又は扶養親族」(第1号)または「前号に掲げる者を二人以上有する者」(第2号)のいずれかに該当する場合に、市町村の条例において軽減措置を定めることを要件として均等割の額を軽減することができる。
※かつて、市町村個人住民税の均等割は、市町村の人口規模に応じて税率(税額)が異なっていたが、2004(平成16)年度改正で廃止され、完全に均一となっている。
均等割について、標準税率であるとはいえ地方税法において画一的に定めることには、疑問が残る。仮に、均等割の存在理由が、地方公共団体が行う住民サービスへの一般的な反対給付のようなものであるということに求められるとするならば、全国一律である必要もないと考えられるからである。
たしかに、かなりの程度までは、日本全国で同じようなサービスを受けられることのメリットもある。とくに、都道府県について、地方自治法は明確な格差を規定している訳ではないし、多くの法律により、都道府県が行わなければならない事務が定められている。しかし、人口、面積などにより、様々な相違が存在するから、画一的に定められなければならない理由が根本的にいかなる点に求められるべきかが問われることとなる。
このことは、都道府県以上に、市町村について妥当する。地方自治法が政令指定都市、中核市、特例市などの制度を設けているように、市町村の間には、行うべき事務の範囲に差が設けられている。たとえば、市であれば福祉事務所を必ず置かなければならないが、町村はそうなっていない、などの違いもある。そればかりか、政令指定都市の場合はほぼ都道府県並みの事務権限を有するのに対し、中核市や特例市、普通の市の順に、事務権限が小さくなってくる。こうした差異を無視することの合理性は、何故に導かれるのであろうか。むしろ、どこの市町村であっても均等割の額が同じというのは、合理的と言えないのではなかろうか。額の多寡が問題になる訳ではない。
4.利子割
現在、所得税のうち、利子所得については他の所得と分離し(租税特別措置法第3条第1項)、その上で源泉徴収によることとされており(所得税法第181条第1項)、15%の比例税率で課税されている(同第182条第1項)。これを受ける形で、都道府県が5%の比例税率で利子割を課税している(地方税法第71条の6第1項および第2項)。なお、利子割は特別徴収の方法によることとなっている(同第71条の9。その他、同第71条の5ないし同第71条の21を参照)。
前述のように、利子割は都道府県住民税のみに存在する。利子の支払を受ける者は、個人、法人の別を問わず、利子割が課される。但し、法人の場合には、利子割を課すと法人税と同様に二重課税となってしまう。法人税額の中には利子に対するものも含まれているからである。そのため、法人税割の申告の際に利子割の分を法人税割額から控除することとされている。控除しきれない部分があれば、還付するか他の未納の徴収金に充当する(同第53条第11項以下を参照)。
なお、利子割の収入額のうちの一定部分は、都道府県の区域内にある市町村に対して、個人の都道府県民税の額に按分して交付される(同第71条の26)。
5.配当割
現在、一定の上場株式等の配当については、租税特別措置法第9条の3により、15%による源泉分離課税が採用されている(同第9条の3の2も参照)。
これに対応する形で、都道府県は、源泉分離課税の対象となる配当などに対して5%で配当割を課す(地方税法第71条の28)。
やはり特別徴収の方法により、源泉分離課税である(同第71条の27第2項、同第71条の30以下を参照)。
配当割は、配当の支払を受ける個人に限定されているので、法人については課されない。
なお、配当割についても、収入額のうちの一定部分は、都道府県の区域内にある市町村に対して交付されることとなっている(同第71条の47)。
6.株式譲渡所得割
所得税の納税義務者は、証券業者の下で開設した特定口座について源泉徴収を選択することができ(租税特別措置法第37条の11の3)、この口座を通じて取引された一定の上場株式等の譲渡益について15%の税率による源泉徴収課税の対象となる(同第37条の10)。
これに対応する形で、都道府県は、源泉分離課税の対象となる上場株式等の譲渡益に対して5%の税率で株式譲渡所得割を課す(地方税法第71条の49)。
株式譲渡所得割も特別徴収の方法により、源泉分離課税である(同第71条の50以下を参照)。やはり個人に限定されているので、法人については課されない。
なお、株式譲渡所得割についても、収入額のうちの一定部分は、都道府県の区域内にある市町村に対して交付されることとなっている(同第71条の67)。
7. 個人住民税の確定手続など
前述のように、所得割と均等割に関しては、都道府県個人住民税も市町村個人住民税も市町村が一括して徴収する。このため、納税義務者(同第24条第1項第1号および同第294条第1項第1号に該当する者)は、市町村長に対し、都道府県個人住民税および市町村個人住民税の課税標準申告書を提出することになる(同第45条の2第1項、同第317条の2第1項)。これは申告書となっているが、申告納税を意味する訳ではない。
もっとも、前年分の所得税について確定申告書を提出している者については、その確定申告書の提出が住民税の申告の提出とみなされる(同第45条の3、同第317条の3の2)。この場合には、所得税の申告書に記載された所得の金額を基準として、場合によっては税務署長の更正・決定によって確定した所得の金額を基準として、個人住民税の税額が算定されることとなる。
また、都道府県、市町村のいずれの個人住民税も普通徴収※が原則とされる(同第319条。手続などについては同第319条の2以下)。これに対し、給与所得や退職所得については特別徴収※※による(同第319条第1項、同第321条の3、同第321条の7の2第1項および第2項、同第321条の7の8第1項、同第328条の4。なお、同第321条の3第2項も参照)。
※地方税法第1条第1項第7号は、普通徴収を「徴税吏員が納税通知書を当該納税者に交付することによつて地方税を徴収することをいう」と定義する。国税の賦課徴収制度に相当するものである。
※※地方税法第1条第1項第9号は、特別徴収を「地方税の徴収について便宜を有する者にこれを徴収させ、且つ、その徴収すべき税金を納入させることをいう」と定義する。国税の源泉徴収制度に相当すると考えてよい。なお、「特別徴収によつて地方税を徴収し、且つ、納入する義務を負う者」を「特別徴収義務者」という(同第10号)。
▲第3版における履歴:2019年12月1日掲載。
▲第2版における履歴:「21 個人住民税」として、2011年3月16日掲載。
2011年8月19日修正。
2012年8月12日修正。
2014年1月22日修正。
2014年6月24日修正。
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