昨日(2023年12月12日)、田園都市線の電車に乗っていたら、毎年テレビ中継で見ている東急ジルヴェスター・コンサートの中吊り広告がありました。東急の車両だったからでしょう。
今年のカウントダウンはチャイコフスキーの交響曲第5番第4楽章と予告されています。
チャイコフスキーの交響曲では、第6番「悲愴」ほどではないとはいえ名曲ですが、少々疑問もあります。
昨年のカウントダウンはドヴォルザークの交響曲第9番第4楽章でした。これにも首を傾げました。
一昨年かその前の年のカウントダウンはベートーヴェンの交響曲第5番第4楽章でした。言わずと知れた「運命」ですが、第1楽章ではなく第4楽章(実は第4楽章がNHKのEテレ「クラシック音楽館」の冒頭で使われていたりします)というところにセンスを感じました。暗闇を抜け出して光明へ、というイメージに合うのです。
ぼくは、何年も前に渋谷のNHKホールでシューベルトの交響曲第8番「ザ・グレート」(ドイツ語でDie Große)を聴いたことがあり、そのことをふと思い出して、第8番の第1楽章か第4楽章がカウントダウンにふさわしいのではないかと考えました。とくに第4楽章は力強く、それでいて表情が豊かな曲です。さりげなく、ベートーヴェンの交響曲第9番第4楽章が少々形を変えて引用されていますし、コーダで最強音のC音4連打(?)はあらゆるモヤモヤを消してしまうほどです。新年を迎えるには打ってつけとも思えます。
ただ、難点は演奏時間でしょう(技巧の面もあるはずですが)。第1楽章も第4楽章もかなり長い曲です。第1楽章は700小節を超えない程度であり、第4楽章は1000小節を超えます。テレビ中継のことを考えると、プログラムを組むのが難しくなるでしょう。でも、実現して欲しいところです。開演の12月31日22時から中継すれば良いのに……。
シューベルトの交響曲第8番が「ザ・グレート」と呼ばれるのは、交響曲第6番もハ長調であり、区別をするためです。第6番が小規模、第8番が大規模ということで、第6番が小ハ長調交響曲、第8番が大ハ長調交響曲と言われます。もっとも、聴いてみれば「偉大な」という意味も込めたくなるのは理解できるところでしょう。後世の交響曲に多大な影響を与えたくらいですから。
シューベルトのハ長調と言えば、最晩年に書かれた弦楽五重奏曲という大傑作もあります。この曲の第2楽章は20世紀の名指揮者の一人であるカール・ベームの葬儀の際に演奏されたそうで、「なるほど」と思わせられました。ぼくは、大学院生時代に六本木WAVEでエマーソン弦楽四重奏団とムスティスラフ・ロストロポーヴィチの演奏によるCD(ドイツ・グラモフォン)を見つけ、購入しました。一体何度聴いたことやら。
そう言えば、結局は購入しなかったのですが、六本木WAVEの輸入盤バーゲンで、シューベルトの交響曲第7番(有名な未完成交響曲)と弦楽五重奏曲のカップリングというCDを見つけました。ただの時間合わせであったのか、或る年代の名演を詰め合わせたのか。今も意味がよくわかりません。
実は生で見たかったコンサートでした(できなかったのは仕事の都合です)。
聴けば聴くほど、第4楽章はカウントダウンにふさわしいと思わされます。「クラシック音楽館」でも、第4楽章のコーダの部分で弦楽が強音でならすC(ド)の4拍をダイジェスト的に取り上げていました。ここなのですよ。聴き所は。