現在、日本でトロリーバスが運行されているのは、立山黒部アルペンルートの一角をなす立山黒部貫光の室堂と大観峰との間を結ぶ路線です。
そのトロリーバスの廃止が表明されたのは今年(2023年)5月のことで、このブログでも「日本からトロリーバスが完全に消えるようです」として取り上げました。それから半年ほど経過して、12月11日に立山黒部貫光が廃止を正式に発表しました。朝日新聞社が2023年12月11日20時30分付で「国内唯一のトロリーバス廃止へ 立山黒部アルペンルート」として報じています(https://www.asahi.com/articles/ASRDC6HXFRDCPISC00R.html)。
トロリーバスの廃止といっても、路線が廃止される訳ではなく、電気バスに置き換えられるということです。理由は、やはり「修理のための部品を調達できなくな」ったことによるものです。日本でここしか走っていないというのは、たしかに稀少価値と言えますが、それだけコストもかかるということです。
たとえば、トロリーバスの集電装置はトロリーポールという旧式のものであり、現在では、立山黒部貫光のトロリーバス以外であれば、愛知県犬山市にある明治村で動態保存されている京都市電の車両くらいしか見られないでしょう。とかく欠点が多い集電装置で、路面電車でもビューゲル(これもあまり見かけなくなりました)やパンタグラフに置き換えられており、私が小学生時代に本で見たのは京福電気鉄道の叡山本線および鞍馬線(いずれも現在は叡山電鉄が運行)くらいのものでした。さすがに1978年にはパンタグラフに変えられています。このように、時代に取り残されたような部品をいつまでも製造する会社がどれだけあるでしょうか。需要が少ないのですから費用もかかるはずです。
それに、電気自動車の製造技術もかなり高いものになってきています。技術伝承のための保存という志があれば別ですが、敢えてトロリーバスを維持して観光のために走らせる意味も少ないと言えるでしょう。立山黒部貫光のトロリーバス路線はほとんど立山トンネル(3.7キロメートルであるそうです)のみを通るようなものですから。
もう一つ、運転免許の関係があるかもしれません。トロリーバスは鉄道に分類されるので、自動車の運転免許を持っていても法律上は運転が許されません。名古屋市で名古屋ガイドウェイバスが運行されていますが、ここの運転士の場合には自動車の大型二種免許とトロリーバスの免許(動力車操縦者運転免許)が必要です。しかも、自動車運転免許と鉄道車両の運転免許とを比較すれば、どちらのほうが容易に取得できるかなど一目瞭然です。立山黒部貫光がトロリーバスをやめて電気バスに変える理由に免許は入っていないかもしれませんが、何処かでぶつかる問題にはなりうるでしょう。2024年問題を控えている訳ですから。おそらく、電気バスであれば鉄道車両の運転免許は不要であるはずです。元々、室堂から大観峰までの区間ではディーゼルエンジンのバスが走っていたくらいなので、時代の変遷に従えばトロリーバスにこだわる必要もありません。