2019年4月27日(土)付の朝日新聞朝刊29面14版に「年金減額訴訟 請求を棄却」という記事が掲載されています(https://digital.asahi.com/articles/DA3S13994545.html)。小さい記事ですが、見落とせません。
2013年から公的年金の支給水準が引き下げられています。これが年金受給者の生活を破壊することになり、憲法に違反するとして、全国39の地裁に訴訟が係属しています。その最初の判決が、26日に札幌地方裁判所で出されました。なお、北海道の訴訟の原告は約600人とのことです。
原告の請求は棄却されたようです。詳しいことはわかりませんが、理由として立法裁量に逸脱はないということがあげられているとのことです。おそらく、堀木訴訟最高裁判所大法廷判決が援用されているのでしょう。
しかし、堀木訴訟最高裁判所大法廷判決(および大嶋訴訟最高裁判所大法廷判決)が示す立法裁量論は、裁量の許容範囲をかなり広くとるものであり、立法権に寛大であると言いうるものです。これでは、よほどの立法を行う(新たな法律を制定することは勿論、法律の改正および廃止も含みます)のでなければ、違憲とされることはないでしょう。これまで、民法第900条第4号ただし書き、国籍法など、いくつかの違憲判決があるものの、これらはよほどの立法不作為(改正を怠ったということ)であったのかもしれません。憲法第14条第1項や第24条などに定められる法の下の平等が問題となっていたから、ということでは十分に説明できないのです。
年金の支給水準が下げられているということから単純に言えないのかもしれませんが、デフレ脱却、景気の回復などは、実際のところ、実現していないのかもしれません。そもそもデフレがどこまで、また何故悪いのか、十分に説明されていると言いがたいと思われますし、民主党政権時代よりも実質賃金は下がっていることも指摘されています〔例えば、明石順平『アベノミクスによろしく』(インターナショナル新書)、金子勝『平成経済 衰退の本質』(岩波新書)。金子教授は同書において平成の世を「失われた30年」と表現しています〕。年金支給額が減れば、当然、受給額も減りますから、消費の額も貯蓄の額も減ります。結局、貨幣の周回が減ることとなる訳ですから、縮小再生産(?)に至るしかありません。
★★★★★★★★★★
2012年4月27日に決定された自由民主党憲法改正草案を読んでみる度に、わからない、あるいは一貫していない、と思うことがあります。その一つが憲法第25条です。文言は修正されていますが、現行の第25条がほぼそのままの形で残っているのです。生活保護に敵対的と言いうる立場を採る者も少なくないのに、何故削除されなかったのかがわかりません。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます