ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

近江鉄道に上下分離方式が採用されるか

2020年12月19日 10時15分00秒 | 社会・経済

 このブログで近江鉄道の話題を最初に取り上げたのは2019年7月31日のことです。同年8月には法定協議会が設置されました。それ以前から、東海道新幹線を利用して近畿地方へ行く度に近江鉄道の路線などを見て気になっていましたし、LE10という気動車を導入したものの失敗に終わったという話も知っていました。そこで、同年11月1日には米原駅へ行き、近江鉄道の全線を利用しています。その時の様子も「近江鉄道全路線乗車記(1)」、「近江鉄道全路線乗車記(2)」および「近江鉄道全路線乗車記(3)」としてこのブログで紹介しておりますので、御覧いただければ幸いです。

 さて、2020年12月です。17日に東近江市で法定協議会「近江鉄道沿線地域公共交通再生協議会」が開かれました。そこで、近江鉄道について上下分離方式が採用されるという方針が決まりました。朝日新聞社が2020年12月18日9時30分付で「近江鉄道 2024年度から上限分離方式に」(https://www.asahi.com/articles/ASNDK6SR1NDKPTJB003.html)として報じています。

 〔この記事の見出しにある「上限分離方式」は「上下分離方式」の誤りです。)

 上下分離方式は、鉄道路線の施設を沿線自治体などが保有し、鉄道路線の運行のみを鉄道会社が行うというものです。青い森鉄道などで採用されており、赤字ローカル線を維持するための方法の一つです。これを近江鉄道の全路線に適用するということです。2020年3月に近江鉄道全路線の存続は決まっておりましたので、さらに具体化が進んだということになるのでしょう。

 また、上下分離方式は2024年度からですが、或る意味で事前の準備ということで、2022年度から沿線自治体(滋賀県も含むのでしょうか?)が財政負担を行います。1年度あたりで6億4000万円ほどとなるようで、使途は線路や枕木の交換などです。

 近江鉄道全路線は滋賀県の米原市、彦根市、東近江市、甲賀市など、合わせて10市町にあります。そこで、滋賀県が半分を持ち、残りの半分を10市町が持つということで合意もなされました。問題は10市町の負担割合です。これを決めるには様々な方法がありえますが、近江鉄道の場合は市町ごとの駅の数、営業距離、利用者数により按分するという案が出されたようです(具体的なことはわかりません)。ただ、米原市が反対しています。理由は、米原市長が述べていることとして上記記事に示されているところによれば「市内の近江鉄道の線路は2・1キロあり、うち1・8キロは過去の区画整理事業で(市が)新しくしている。10市町の負担割合は営業距離ではなく、今後修繕が必要な距離に応じて決めるべきだ。合理的な理由に基づいた負担割合でなければ市民に説明できない」とのことです。

 以前から、私は、西武グループの意向がどうなのかと記してきました。御存知の方も多いと思われますが、西武グループの総帥であった堤康次郎は滋賀県の出身です。これが、おそらく、近江鉄道が西武グループの一員であることの理由でしょう。それだけに西武グループの動向が見えてこないのは気になります(私にだけ見えないのかもしれませんが)。このまま西武グループの一員であり続けるということなのでしょうが、COVID-19のために西武グループも大赤字を抱え(ダイヤモンド・オンラインの2020年11月6日付記事「西武グループ大赤字でも『新プリンスホテル100店』拡大路線の危険度/不動産の呪縛」などでは630億円ほどの赤字が見込まれると書かれています)、大手私鉄でも西武鉄道(あるいは西武ホールディングスかもしれません)の赤字額が目立つほどなので、大鉈が振るわれる可能性は否定できません。

 また、近江鉄道はバス事業も行っています。こちらはそのままということなのでしょう。

 今回は近江鉄道を取り上げましたが、近畿地方には他にも多くの中小私鉄があります(第三セクターを含みます)。存廃が問題となりそうな路線が今後も出るかもしれません。以前から存廃が議論されているのは神戸電鉄粟生線ですが、これも気になるところです。


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