このブログでは久しぶりとなります。JR東日本の久留里線です。
久留里線は木更津駅から上総亀山駅までの路線で、2022年度の平均通過人員が770となっています。2017年度の平均通過人員が1147となっていますので、COVID-19の影響も否定できないのですが、元々低い数値であったのがさらに低くなったということです。何せ、1960年代後半に赤字83線にあげられていました。1980年代の特定地方交通線には指定されず、検討の対象にもならなかったようなので、地方交通線となって存続しました。当時の平均通過人員の数値を知りたいところですが、少なくとも、2017年度の平均通過人員の数値は1980年代の数値の4分の1ほどまで落ち込んだということでしょう。本来であれば久留里線とつながる予定であった木原線が特定地方交通線に指定され、いすみ鉄道に移管されたことも、房総半島の交通事情を反映しているように見えます。
全体の平均乗車人員の数値も低いのですが、JR東日本の公表データに従って同線を二つの区間に分けますと、末端区間というべき久留里駅から上総亀山駅までの区間で平均通過人員の数値が極端に低くなっています。2022年度で54なのです。これは、JR東日本では下から2番目ということになります。残る木更津駅から久留里駅までの区間では1074です。
参考までに、JR東日本の路線・区間で平均通過人員の数値が二桁になっているところを示しておきましょう(2022年度のものです)。
1.陸羽東線 鳴子温泉駅〜最上駅:44
2.久留里線 久留里駅〜上総亀山駅:54
3.花輪線 荒屋新町駅〜鹿角花輪:55
4.山田線 上米内駅〜宮古駅:64
5.磐越西線 野沢駅〜津川駅;70
6.飯山線 戸狩野沢温泉駅〜津南駅:76
7.山田線 全線(盛岡駅〜宮古駅):79
8.津軽線 中小国駅〜三厩駅:80(但し、参考値)
9.北上線 ほっとゆだ駅〜横手駅:90
ちなみに、2022年度における、JR西日本芸備線の東城駅から備後落合駅までの区間での平均通過人員は20であり、JR西日本木次線の出雲横田駅から備後落合駅までの区間での平均通過人員は56です。
さて、今回、久留里線を取り上げることとしたのは、東京新聞社のサイトに、今日(2024年10月23日)の7時31分付で「JR久留里線・久留里-上総亀山間 検討会議が報告書 『自動車中心』へ移行示す」(https://www.tokyo-np.co.jp/article/361985?rct=chiba)という記事が掲載されていたためです。なお、千葉日報社のサイトには10月21日20時11分付で「久留里-上総亀山間、『自動車交通』への移行示す JR久留里線、検討会議が報告書 君津」(https://www.chibanippo.co.jp/news/economics/1291644)という記事が掲載されていますが、非会員では全部を読むことができないので、東京新聞社記事をベースとします。また、それぞれの見出しに示されている「報告書」を読んでみたいのですが、今のところ、君津市のサイトにも千葉県のサイトにも掲載されていないようです(理由は後に示されます)。ただ、千葉県のサイトには、10月21日の14時から君津市保健福祉センター(ふれあい館)2階のコミュニティホールにて「第5回JR久留里線(久留里・上総亀山間)沿線地域交通検討会議」が開かれること、議題は「JR久留里線(久留里・上総亀山間)沿線地域交通検討会議検討結果報告書(案)について」であることが明示されています。
「報告書」をまとめた「JR久留里線(久留里・上総亀山間)沿線地域交通検討会議」(以下、検討会議)は、JR東日本千葉支社、君津市、千葉県、住民代表から構成されています(座長は日本大学理工学部交通システム工学科の藤井敬宏特任教授)。こうしたメンバーが、議論の結果として結論を出したということです。もっとも、これは暫定的なもので、今後、追加修正をした上で最終版を作成するというのですが、基本線は変わらないでしょう。最終版がまとめられるならば、公表される可能性が高いと思われます。
「報告書」は一つの小前提を置いています。それは、久留里駅から上総亀山駅までの区間(以下、末端区間)が廃止されたとして、他の交通手段を考えるというものです。
検討会議の事務局が示した報告書案によると、君津市の上総地区(同市東部南側)の移動需要は「平日最大15人程度、休日最大20数人程度と、それ以外の散発的な移動」でしかなく、久留里線の末端区間は「移動需要に対して輸送力が過大」であり、さらに現在同地区において「提供されている交通サービスでは移動需要に適していない」とのことです。それでは、どのような交通手段が望ましいのかと言えば「平日の朝夕や休日の日中をピークとした通勤通学や観光客など一定のまとまった移動需要には『バスを中心とした定時定路線型の交通手段』、買い物や通院などには『デマンド型の交通手段』が考えられるとした」とのことです。以上は上記東京新聞社記事を引用しつつ記しましたが、上記千葉日報社記事には「報告書は『自動車中心の交通体系への移行により、より利便性を有する地域公共交通が実現する』と指摘。通勤通学や観光客はバスを中心とした交通手段で対応し、買い物や通院など時間帯やエリアが散発的な需要には現在運行されているデマンドタクシー『きみぴょん号』の交通手段を挙げた」と書かれています。
鉄道ファンや、地域公共交通の活性化を唱える方々からは批判を受ける内容であると思われるのですが、少なくとも両記事を参考にする限り、検討会議は現実的で妥当な結論を導き出したと評価すべきである、と私は考えています。検討会議は末端区間の廃止を大前提においていないらしいのですが、それは建前であって、本音は逆であるということではないでしょうか。
そもそも、最近よく使われる、存続、廃止のいずれも前提にしないという言い回しは、なかなか巧妙な、悪い表現を使うならば狡猾なものです。最初から「存続を前提としない」と言い切ってしまうと、あちらこちらから反発を受けることなど簡単に予想されます。そのために、何らの前提も置かないというように中立を装うような表現が採用されたのでしょう。
10月21日で検討会議は終了し、今後は君津市地域公共交通会議で議論が続けられるようですが、今回の報告書暫定版で末端区間の廃止への布石は打たれたと評価すべきではないでしょうか。
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