平成筑豊鉄道が地域公共交通活性化再生法に基づく法定協議会の設置を要請したと報じられたのは、今年(2024年)の6月29日のことでした。それから4か月ほど経過して、平成筑豊鉄道の沿線自治体9市町村の首長が、昨日(2024年10月31日)、福岡県に対して法定協議会の設置を要請しました。朝日新聞社が、今日(2024年11月1日)の10時30分付で「平筑の今後を検討『法定協』設置へ 沿線自治体が県に要請」(https://digital.asahi.com/articles/ASSB04RXFSB0TIPE003M.html)として報じています。
「ついに動いた」ということでしょうか。今年も平成筑豊鉄道は3億4000億円の経営安定化助成金の交付を受けているのですが、同鉄道が2億5000万円の追加支援を打診していました。しかし、9市町村がどのように対応するかが問われていました。助成金(補助金)の交付額は増加の一途となっていますので、とりもなおさず、平成筑豊鉄道の経営は危機的状況にあるということです。
そこで、沿線9市町村(本社のある福智町、直方市、田川市、行橋市など)が法定協議会の設置を福岡県に要請したということなのです。これからも助成金(補助金)の増額が続くことが確実であるということからでしょう。田川市長が福岡県知事に「地域公共交通活性化再生法に基づく法定協の設置や地域公共交通計画の作成を求める要請書を」手渡しており、福岡県知事も「設置に向けて動く意向を示した」とのことです。平成筑豊鉄道に福岡県も出資している以上、当然と言えるでしょう。また、「設置されると、バスの運行実験など、新たな交通網整備を想定した調査などに国の補助金を利用できる。参加自治体は協議に応じ、結果を尊重することが求められる」ので、今後の動きが気になるところです。
法定協議会が設置されるならば、存続するのか廃止されるのかが議論されることになりますが、JR西日本芸備線と異なり、存続一本槍とはならないと思われます。実際、上記朝日新聞社記事によると「現状からの変更案としては、①路線バス②バス高速輸送システム(BRT)③鉄道上下分離、の3案を中心に検討が進む見通しだ」とのことで、少なくとも現状維持は難しいのでないかと考えられます。もっとも、北陸鉄道石川線のように消極的選択として現状維持もありうるのですが、そうなれば9市町村の負担は増えるだけで、財政にも影響が出てくる可能性があります。「現状からの変更案」のいずれを選んでも最善の選択肢と言いうるかどうかはわかりませんので「どれを取っても……」ということになりかねません。
一方、9市町村を通るということで、それぞれの市町村によって態度が異なるということもありえます。実際、上記朝日新聞社記事によると「沿線では、平成筑豊鉄道が観光の鍵となっている自治体もあり、鉄道存続の是非は自治体によって温度差が大きい」ようです。具体的に何処の市町村で、何線のことかは不明ですが、ありえないことではありません。平成筑豊鉄道には、かつての国鉄赤字ローカル線である伊田線(直方〜田川伊田)、田川線(行橋〜田川伊田)および糸田線(金田〜田川後藤寺)、北九州市が第三種鉄道事業者である門司港レトロ観光線(平成筑豊鉄道は第二種鉄道事業者)の4路線がありますが、記事の内容からして伊田線、田川線および糸田線の境遇が問題とされているのでしょう。
これから本格的に議論が開始されることになるでしょうが、どのような選択をするにせよ、伊田線、田川線、糸田線、門司港レトロ観光線をひとまとめにするのではなく、線区別に考える必要があるでしょう。門司港レトロ観光線は特殊ですので脇に置いておくとしても、伊田線、田川線および糸田線の3路線は一体として考えられがちです。しかし、私がここにあげた全ての路線に乗った限りでは(一度しかないのですが)、それぞれ性格が異なるように思えます。とくに伊田線と田川線は、一体で運行されているとは言え、かなり性格が違います。伊田線は全線複線で開けた場所を通っているのに対し、田川線は山間地帯と言えるような場所を通り、しかもカーブが多く、伊田線より乗客が少なかったような記憶があります。そうは言っても、伊田線も乗客が多いという訳でもないので、さしあたりは単線化が現実的でしょう。
ともあれ、今後の動きを注視していこうと考えています。
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