世界一周タビスト、かじえいせいの『旅が人生の大切なことを教えてくれた』 

世界一周、2度の離婚、事業の失敗、大地震を乗り越え、コロナ禍でもしぶとく生き抜く『老春時代』の処世術

男と女のばかしあい

2013年10月27日 | 
旅は道連れ世は情けという。

一宿一飯の恩義を感じることもある。


だがそれを逆手とった詐欺が横行していることも事実だ。



もう一つ旅の格言がある。

旅は、騙し騙され、お互い様。


旅は「命を懸けた人生ゲーム」と定義づけたい。

そして、これこそが旅の醍醐味なのかも。






ホテルの部屋にこもって一仕事終えると

息抜きに湖に向かって散歩に出かけた。


ハノイはこの時期が一年で最もいい季節である。

暑からず寒からず。

晴天が続く。



歩いていると、交差点でバイクに乗った一人の女が声をかけてきた。

「こんにちは。日本人ですか?」


上手に日本語を話す。

一見清楚な感じだ。


宗教団体の寄付をこうして何度か求められたことがある。

「You wanna donation? (寄付して欲しいの)」

わざと英語で聞き返した。


「いいえ、私は学生です。

今日は学校は休みなので、よかったら街を案内します」


ははァ、この手も前回友達が遭遇している。

なんとなく分かった。

彼は途中で彼女からの連絡が途絶えたので、被害はなかった。


だから、なんの意図でこうして誘いをかけてくるのか分からない。



「案内するって、お金いくらするの?」

「いいえお金は要りません。あなた次第です(Up to you)」 という。


あなた次第が、実は曲者(くせもの)。


それに、ちゃっかりとヘルメットを余分に二人分持っている。

確信犯(a person who commits) a crime of conscience )に違いない。



まだ3時を回った真ッ昼間だし、変なところへ連れて行かれることもないだろう。

ここはわざと引っかかってみるか。



彼女らの目的が知りたかった。

好奇心とスケベ心が交錯する。



相手からしてみれば、こうした手の込んだやり方でなく売春の方が手っ取り早いだろうに。

大概、男が声をかけてくるが、女自らもあるというし。



「学生って、どこの学校?」

「ハノイ薬科大学です」


見かけによらずインテリじゃないか。

「よければ学校も案内しますよ」


今回のミッションに大学との連携がある。

それも技術系だから、渡りに船だ。


ボクは、彼女からヘルメットをもらうと彼女の後ろにまたがった。


「Can I hold here?」

と聞いて、彼女の腰から脇腹にかけて両手で掴んだ。

意外とふくよかだ。

学生にしては少し老けているなと感じた。


彼女は運転中に、時折ボクの膝に手を置いてさする仕草をした。

挑発していることは明らかだ。



     彼女が最初に案内してくれた薬科大学

      120年ほどの伝統のある名門だ


     シンガポールの提携会社との連携に役立つ情報を得ることができた





英語が堪能で彼女はよくしゃべった。

それに博識だ。

街のガイドとしてもプロ並みに長けている。

ほぼ申し分ない。


これも詐欺師の特徴の一つだろう。


それでも一通り街中の観光地を回ってくれた。

ボクが行ったことがなかったところも含まれていて感心した。



一時間ほど回ったところで、彼女はこう切り出した。


「ねえ、お土産を買って欲しいのだけど」


きたきた、これだ。

いよいよ化けの皮が剥がれる時が来た。


「ねえ、いいでしょ?」



ここで鼻の下を伸ばして、「いいよ」なんて答えたら一巻の終わりだ。


「何が欲しい?」


「高くない、安いよ」

「だから、何?」


「靴。ヒールの高い靴」


彼女はドンドン郊外へバイクを走らせた。

そしてある靴屋の前でバイクを止めた。


「ここよ。一緒に来て」


ボクは言われるままにバイクから降りてついて行った。


彼女はショーウインドウから一足取り出すと、

「これがいい」とボクに差し出してみせた。


「いくら?」

1、360万ドン。

定員が電卓をたたいてボクに見せた。

約6、800円だ。


安くはない。

いや、高い。

ベトナムの靴にしてはべらぼうに高い。



ボクは、ポケットからしわくちゃになったベトナムの紙幣を引っ張り出して数えた。

ナント、1、200ドンほどしかない。


「これしかないよ」

「ATMでおろしなさいよ」


「カード持ってきてないよ、今」


実は、別のポケットに1万円ほどの現金とカードが入っている。


「ホテルに帰ればあるけど」

何喰わぬ顔でボクは言った。


「じゃあ、ホテルに帰って、またここに来る、OK?」

「OK,OK」


ここはすかさずOKを連発する。

とにかくこの場から脱出するのが先決だ。


韓国人が経営するその靴屋もグルに違いない。



ボクは再び彼女のバイクにまたがり、来た道を引き返す。


そろそろ陽も傾きだした。


「ホテル帰る前に晩飯食べない? おなかすいたし。

ドライブガイドの代わりにおごるよ、晩飯」


「じゃあ、友達も呼んでいい?」

「ああいいよ」


彼女が電話をすると、程なくしてもうひとり学生と名乗る女の子がバイクでやってきた。

一緒にたかる気は見え見えだ。


それでも食事代だ、しれている。


「私たち学生じゃなかなかいい食事できないから、良いとこ行こうよ」

そんなことを言いながら、湖畔のロマンティックな屋外レストランにやってきた。


      見るからに高そう


結構ハノイの有名どころを案内してくれている。


シーフードの鍋を注文。





高そうなエビも。


ボクは彼女に念を押した。


「ボクがいくら持っているか知ってるだろう。

その範囲内にしといてくれよな。

こうなるとわかってれば、もっと(お金を)用意しとくんだったね。

君たちみたいな素敵な人たちと会うなんて、全く期待してなかったし」


もちろんこれはお金がないことを強調するためにはいたセリフだ。



彼女は、大丈夫よ、という表情を見せながら

身の上話や友達のことを面白く話してくれた。


     夜景を見ながら、みんな笑顔で食事


一時間以上、楽しく食事が出来た。



そして精算の時が来た。


そのとき、不思議な行動を二人はとりだした。

一人の女がトイレに立つ。


そしたら、残った女が、ボクにも「トイレに行け」と促す。

「支払いを済ませないと」、というと

いいからトイレに行くように強要する。


まあ、これからバイクで帰るのだし、

ビールも飲んで冷えてきたので一応行っておくかと席を立った。


そして用を足して、トイレから出ると彼女らが二人共出口で待っている。

「支払いは?」 と聞くと

「もう済んだ」、という。


「エッ、いくらだった?」


一見気前がよさそうだが、纸に計算して見せて

合計1、300万ドンという。


申し合わせたように靴と同じく6、500円ほどだ。

学生という割にはよくこんなお金を持っているな、と感心しながら


「足りないの、知ってるよね」 と言った。

「とりあえず持ってるお金全部頂戴」 ときた。


待て待て、ここで有り金全部取り上げられて、ほっぽり出されては

陽も落ちてホテルへ帰る道すら分からず、タクシー代さえなくなるではないか。


「OK。とりあえず1、000万ドン(5、000円)払っとくから

今からホテルに取りに行こうよ」


彼女らはあっさり了承した。


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そして無事ホテルまでは到着した。


「じゃあ、ここで待ってて」

とボクが言い終わらないうちに、彼女は豹変した。


「今日のドライブガイド代も払ってよね」


ボクは笑った。

「ハハハハ。ただだって言っただろ。

それに晩飯もおごったし。友達の分も払っただろ」


「何言ってんのよ。5時間もかかってガソリン代だってかかってるのよ」


「だったら最初から言えよな。ふざけるのもいいかげんにしろ」

「警察呼ぶわよ」

「どうぞご勝手に」


そうしてボクはホテルへ入ると、ドアボーイに言った。

「彼女を入れるな」


ところが、強引にも彼女はホテル内に入ってきて喚(わめ)きだした。

ベトナムの女を怒らしたら、怖い!

手がつけられないくらい怖いのをボクは知っている。



だが、ボクも負けずに怒鳴った。

「Get out of here, right now!(今すぐここかtら出て行け!)」

「I call a police!(警察呼ぶわよ)」

「Be my guest.(どうぞごかってに)

Let her get out of here.(彼女jをここからつまみ出せ)」

 (※ 映画のセリフ、一度言いたかった)



ボクはボーイに言うとエレベーターに乗ろうとした。

ところが彼女がボクの腕を掴んだ。

「Don't touch me!」

ボクは彼女の手を振り切った。


そしてドアボーイに言った。

「Kick her outof here right now!(今すぐ彼女をここから追い出せ!)」


彼女がすごい剣幕でホテルから出ていくのを

ボクは締まりかけたエレベータのドア越しに見送った。






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【追記】


結局、4時間のバイク・ドライブガイドと

3人で高級レストランで食事をして5、000円は決して高くないだろう。


後味は悪いが、食事中は楽しかったし、面白かった。

いい経験をさせてもらった。


それに、300万ドン(1、500円)は踏み倒した格好になった。


彼女らにしてみれば、怒って当然だろう。




【旅の極意】


念のため、途中で彼女のバイクのナンバーを撮っておくことも忘れない。



 ※ ぼられそうなタクシーに乗ったときは、ドライバーのIDをシャメに収めておく(あればだが)。



お金は小分けにして持て。

そして、決して手の内を見せるな。


スケベ心を出して、女をホテルの部屋に連れ込むな。

連れ込んだら、一巻の終わりになることを忘れるな。



相手の手の先を読んで、冷静に行動せよ。


これ、鉄則。

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1 Comments

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旅は命がけ (Takumi)
2013-10-27 12:51:40
「旅は命を懸けた人生ゲーム」
とても印象深いフレーズです。

海外への旅に憧れますが、今回のような件はやはり怖いですね…。

人のよさにつけこまれると弱いです。

21歳の自分が一人で海外を旅するのは、もうちょっと先にした方がいいかもしれません。

ともかく、この手に汗握るリアルな体験談、とても面白かったです。

観光ツアーでは味わえない、こういう危険な目にあえて飛び込むのも、一人海外旅行の醍醐味なのかもしれません。

やはり、日本という安全圏に一生閉じこもっててはいけないな。
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