そのまま起き上がれない。
まるで吸盤に捕らわれたように動くことができない。
春なのに、
どんよりとした空が心に重くのしかかる。
張りつめていた緊張の糸が頭のどこかでバシッと切れるような音がした。
同時に激しい脱力感が身体全体を支配する。
こんな時、いてほしい人はいない。
孤独と自己否定感が襲い、心身に纏(まと)わりつく。
風船がしぼむときのように急激に気が滅入っていくのが分かる。
まるで孤独の深淵に沈吟するするかのように。
起き上がろうとするがどうにも身体が動かない。
虚脱感から食事もとれず、そのまま深い眠りに落ちてしまった。
脳こうそくの前兆なのかとも疑った。
救急車を呼ぼうかとも思ったが、
携帯電話を持つ手にも力が入らない。
いや、病院代さえない現実に我ながら唖然とした。
手持ちのお金は、恥ずかし話だが、224円。
月末が重なり何枚もの請求書が頭を悩ます。
いよいよ資金繰りが厳しくなってきた。
万事休す。It's all over.
良からぬ妄想ばかりが脳裏をよぎる。
いつもになく予期不安の兆候が見え隠れする。
もう誰からも必要とされていないのだろう。
生きる意味さえ無くす恐怖が襲う。
誰とも会いたくない。
話しをするのも億劫だ。
こんなとき、誰も気遣う人がいないことがむしろ幸いなのかもしれない。
一人混沌と深淵に吸い込まれていく。
自殺を考えるってこんなことなのだろうか。
孤独死。
こうして死んでいくのもいいのだろう。
人はそもそも弱い生き物である。
どんなに強がっていても、人恋しくなるものだ。
だが、こんな時こそ側にいてほしい人はいない。
ベッドのマットがまるで底なし沼のように感じる。
いや、奈落の底に落ちていく自分の姿がありありと浮かぶ。
これがウツという状態なのだろうか。
自分はウツにはならないと高をくくっていたが
ついにウツの洗礼を受けているのかもしれない。
ウソのようにこれまであった自信もなくなっている。
どうせ自分の小説なんか誰も読んでくれないだろう。
投げばちな気持ちが忽然と湧いてくる。
最後の砦とも言える気力さえも失せていく。
何をする気も起らない。
モチベーションが急激に低下。
引きこもったからウツになるのか、
ウツになったから引きこもるのか。
いずれにせよ、
ウツの人、引きこもりの人の気持ちが少しだけ垣間見えたようで
ある意味嬉しくなった。
自殺する人の心境も。
幸い今のところ不眠症にはなっていない。
脱力感も手伝って、むしろ泥のように眠る。
人はこんなにも眠れるものなのかと思うほど。
まるで、一年分の睡眠をとってしまったようだ。
横になった状態で全身の力を抜く。
ヨガで言ういわゆる屍のポーズ(シャバアーサナ)だ。
これは寝付けない時普段でも良くやる。
まず身体を仰向けに寝かせる。
くつろげる程度に両手両足を軽く開き、手のひらを上に向ける。
目を閉じて、口を軽く開けるとよい。
意識は眉間の奥に置く気持ちで身体を重力に委ねるように力を抜く。
(足、腰、胸、手、首、頭、など身体の下から順に意識する)
自分の肉体を意識する以外、邪念を働かせないようにする。
ゆっくりと腹式呼吸を繰り返す。
頭を空っぽにすることが理想だが、
心がざわついてる時は、無心になることはとても難しく感じるものだ。
むしろ、ろくなことは考えない。
雑念がこれでもかというほど湧いてくる。
その場合は、むしろ、楽しいこと、別世界をイメージするとよい。
ボクは、世界のいろんなところを旅している自分の姿をイメージする。
夢を叶えた自分の姿をイメージする。
顔が緩み、口元が綻び、微笑みさえ浮かんでくる。
【心のつぶやき】
それでもこんなことを書いてるということは、
やっぱり本当のウツにはなっていないのかな?
深淵から這い出すには、やはり瞑想の力によるところが大きいと思う。