5月31日、カンボジアの中央銀行であるカンボジア国立銀行(NBC)は、金融安定性調査報告書2020年版(Financial Stability Review: FSR)を公表しました。カンボジア国立銀行では、国際通貨基金(IMF)の支援を受けて、2011年から金融安定性委員会に年2回、金融安定性調査結果を報告してきました。報告書は、マクロ経済の現状と安定性、金融システムの現状と評価、マクロ経済と金融のリンケージ、金融安定性の見通しとリスクの4章から成っています。
2020年のカンボジア経済については、対外依存度が高いため、観光や縫製業に厳しい影響があり、GDP成長率はマイナス3.1%に下落したとしています。海外からの観光客数は80.2%減、縫製品輸出は9.7%減、履物輸出は11.6%減でした。輸出については、縫製品以外の電気機器、自転車、コメ、ゴム等が健闘したと評価しています。海外直接投資はマイナス1%でしたが、金融セクター向け投資は12.8%増でした。海外からの送金は大幅に減少し、17%減となっています。しかし、外貨準備は潤沢で、218億ドルと輸入の11カ月分を維持しています(基準は3か月分)。この他、建設・不動産業は低調でしたが、農業はプラス成長を維持したとしています。
財政については、新型コロナ対策の貧困世帯向け現金支援や失業労働者向け手当支給等により支出が膨らんでいるものの、健全性は維持しているとしています。対外債務の対GDP比率も32.0%と基準値の40%を大きく下回っています。消費者物価上昇率も2.9%に留まっており問題ないレベルにあるとしています。
金融セクターは、新型コロナショックに十分耐えていると分析しています。商業銀行の自己資本利益率(ROE)は、2019年の9.8%から2020年は8.7%と若干の減少に留まっています。不良債権比率も、2019年の1.7%から2020年の2.1%に若干上昇しているものの、問題ないレベルにあります。これは、新型コロナの影響で返済が困難になっている借入人に対し、中央銀行指示により、返済猶予等の借入条件変更を認めていることも一因と分析しています。また、金融機関のショック耐性が機能したことについては、これまでの金融機関健全性規制の強化が効果をあげたものと見ています。また、中央銀行の金融緩和措置も効果があったとしています。
2021年については、ワクチン接種の進行と世界経済の回復に伴い、カンボジア経済も成長率4%に回復すると予測しています。但し、ワクチンの接種状況や、主要国の経済回復に不確実性があるため、下振れするリスクもあると見ています。
(写真は、商業銀行最大手のACLEDA銀行本店)
カンボジア国立銀行のサイト
https://www.nbc.org.kh/english/publications/fsr.php
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2020年のカンボジア経済については、対外依存度が高いため、観光や縫製業に厳しい影響があり、GDP成長率はマイナス3.1%に下落したとしています。海外からの観光客数は80.2%減、縫製品輸出は9.7%減、履物輸出は11.6%減でした。輸出については、縫製品以外の電気機器、自転車、コメ、ゴム等が健闘したと評価しています。海外直接投資はマイナス1%でしたが、金融セクター向け投資は12.8%増でした。海外からの送金は大幅に減少し、17%減となっています。しかし、外貨準備は潤沢で、218億ドルと輸入の11カ月分を維持しています(基準は3か月分)。この他、建設・不動産業は低調でしたが、農業はプラス成長を維持したとしています。
財政については、新型コロナ対策の貧困世帯向け現金支援や失業労働者向け手当支給等により支出が膨らんでいるものの、健全性は維持しているとしています。対外債務の対GDP比率も32.0%と基準値の40%を大きく下回っています。消費者物価上昇率も2.9%に留まっており問題ないレベルにあるとしています。
金融セクターは、新型コロナショックに十分耐えていると分析しています。商業銀行の自己資本利益率(ROE)は、2019年の9.8%から2020年は8.7%と若干の減少に留まっています。不良債権比率も、2019年の1.7%から2020年の2.1%に若干上昇しているものの、問題ないレベルにあります。これは、新型コロナの影響で返済が困難になっている借入人に対し、中央銀行指示により、返済猶予等の借入条件変更を認めていることも一因と分析しています。また、金融機関のショック耐性が機能したことについては、これまでの金融機関健全性規制の強化が効果をあげたものと見ています。また、中央銀行の金融緩和措置も効果があったとしています。
2021年については、ワクチン接種の進行と世界経済の回復に伴い、カンボジア経済も成長率4%に回復すると予測しています。但し、ワクチンの接種状況や、主要国の経済回復に不確実性があるため、下振れするリスクもあると見ています。
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