英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2024年度NHK杯将棋トーナメント1回戦 西山女流三冠-木村九段 その2

2024-06-26 15:56:24 | 将棋
2024年度NHK杯将棋トーナメント1回戦 西山女流三冠-木村九段 その1の続きです。


 前記事最終の第2図より、△4二角▲6六角と進むが、この2手は疑問手だったようで、後手角は3三に居た方が反撃しやすく、替えて△9二香と▲5五角と出られた時に当たりをかわしておく方が良く、また、▲6六角では▲5四歩△同飛▲5六銀△8四飛▲4五歩の方が良かったようだ。と言っても、おそらく評価値でマイナス100点ぐらいで、誤差の範囲。評価値より、自分の指向で指した方が良い場合も多い。現に、実戦の▲6六角ではなく、▲5四歩△同飛▲5六銀△8四飛▲4五歩と進んだ場合には後手角は3三の方が良いというだけで、実戦の▲6六角に△5五歩▲同角に△6四歩と受ける手を用意している。
 解説の藤井九段は、この▲5五角と進むのなら《振り飛車良し》と見ていた(私も同感だったが)。
 それは△6四歩には▲5四歩のいわゆる“筋の手”▲5四歩(第3図)があり、気持ちよく捌けそうだからだ。

 図から△5四同銀に▲4四角で、5八の飛車による銀取りと次の▲6二角成(飛車取りになる)の両狙いがあり、先手良しに見える。
 ところが、後手木村九段に堂々と△6五歩と歩を取りながら伸ばされてみると…

 手順に銀取りを受けられ、▲6二角成(飛車取り)には△6四飛と馬取り!で返される手がある。
 西山女流三冠は馬取りの返し技を避けて▲7一角成としたが、あまり良い手ではなかった。ここは、▲4五桂と跳ねる手が最善で、以下△5七歩▲同飛△7五角と進みほぼ互角だったようだ(第3図もほぼ互角)。
 また、第4図から▲5三歩と指し、△5一歩と受けるなら▲2二角成△同金▲7四金と変則飛車銀両取りを掛ける手もありそうだ。以下△7四同飛▲同歩△6六歩で難解。
 さらに、角を成るなら、相手の思惑に嵌まるようでも▲6二角成の方がよく、△6四飛に▲4四馬(銀取りの逆先)△5五歩▲6八飛と辛抱した方が優った。▲7一角成で先手の不利がはっきりしてしまった。
 と言っても、多分、“誤差”の範囲。実戦も△3三角(”誤差の範囲”の疑問手)だった(△7五角が正着)。
 △3三角以下、▲6二馬△7三歩▲6四歩△6六歩(第5図)と進む。

 △3三角が疑問手だったので、"やや先手不利”に形勢が戻ったが、第5図に至る▲6二馬△7三歩が余計な利かしだったようで、また"先手不利”になってしまった(理由は後述)。

 △6六歩(第5図)に対する応手が悩ましい。①▲7六銀、②▲7八銀、③▲5四飛、④▲6六同銀などが見えるが…
①▲7六銀は、西山女流三冠が着手した手(その後の指し手は後述)
②▲7八銀は、以下△6四飛▲5三馬△6七歩成▲5四飛△同飛▲同馬△7八との進展が考えられる。①▲7六銀に対して、この順で進めると、銀が7六にいるので取ることができない。
③▲5四飛と銀を取る手には、後手は△6七歩成と銀を取り返す。と金を作られたうえ、3三の角に成り込まれては先手陣が持たないので▲4四銀と押さえ込みを図るが、△4二角と引かれて今度は6四への飛び出しが残るので▲5三銀不成とそれを防ぐことになるが、飛車と馬の焦点にわざわざ銀を進めるのでは冴えない。
④▲6六同銀は△6六同角なら▲5四飛と銀を取り返す意図だが、△6六同角ではなく△6四飛とされると6二の馬当たりにもなっているので▲5三馬とするしかなく、以下△6六飛▲5四飛と銀を取り合うが、これは8四で遊びそうだった飛車に成り込まれてしまうので面白くない。
 これが先の"▲6二馬△7三歩”を入れた罪である。

 本譜は▲7六銀△5七歩▲同飛△5六歩▲同飛△5五銀▲5九飛△6七歩成と進む。この歩成に▲6七同銀とできないのがつらいところ(△6四飛の馬銀両取りがある)。
 西山女流三冠は▲4五桂と攻め合いに懸けるが、木村九段は飛車を歩で止め、△4四角と馬との交換を迫る。

続く
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2024年度NHK杯将棋トーナメント1回戦 西山女流三冠-木村九段 その1

2024-06-25 17:22:25 | 将棋
 木村九段は好きな棋士(しかも、かなり)で、西山女流三冠も応援したい棋士。
 どっちを応援しようか?……ここは木村九段に我慢していただこう………
 まあ、木村九段が勝っても嬉しいので、けっこう、気楽に観戦していた。

木村研究会と藤井研究会
 解説は藤井猛九段。
 振り飛車の研究、理論、経験を数値化して合計すれば、トップに位置するのではないだろうか?
 「居飛車に急戦の気配がなければ、こう指すところ」
 「急戦に対しては、こう備えておく方がよいです」
と解説(↑文言の再現は適当です)、研究、理論、経験による序盤の体系が染みついている。振り飛車等の西山女流の解説者にはうってつけの棋士だ。

 本局に限らず、解説の合間に、棋士の情報を語ることが多い。本局も面白かった。
「西山さんは、木村九段によく教わったと語っていましたね。
 弟子の方が強くなること自体は嬉しいことだが、それは自分関係ないところで活躍する場合で、自分と対局が当たって、それで勝たれてしまうと、(教えるんじゃなかったと)後悔します。
 で、木村九段の研究会は“鍛錬”で厳しいです。で、私はやさしいんですよ。
 西山さんが属していた研究会(木村研究会?)の奨励会員は3人全員居飛車党で、振り飛車党1人対居飛車党3人では(気分的に)苦しい。
 なので、優しい私は《振り飛車等だけの研究会》を作り、西山さんを誘ったんです」
「今度西山さんに、《どっちの研究会が役に立ったか?》訊いてみたい」

 木村九段は強くするため鍛え、藤井九段は将棋を指す環境(精神的なモノを含めて)を整えた。二人ともやさしい。

異形の戦い

 将棋は予想通り、西山振り飛車対木村居飛車となったが、通常とは違う構え。(最近では、居飛車対振り飛車を“対抗形”と呼ぶが、どうもしっくりこない)
 木村玉は居飛車穴熊だが、2三銀・2二金の位置が異形。これは、左美濃から居飛車に変形した為。
 西山女流三冠の8五桂・7六銀形も珍しい。これは、7五歩と伸ばした西山布陣に対し、△6四銀と歩を取る指向を見せた為、銀で7五の歩を支えた為。さらに、その銀を活かすため、桂を9七~8五と跳ねて、歩を取った。
 木村九段の2二金型穴熊は「▲3一銀と絡まれてあっと言う間に寄ってしまう弱点もあるが、そうならないケースもある」と藤井九段。

 ただ、本局は、やはり弱点が気になるのか、木村九段は先手の動きを見ながら穴熊の強化を果たした。
 対する西山女流三冠は、8五の桂を安定させ後手の飛車の捌きを抑え、▲5五歩と中央に動きを求めた。
 “先手の1歩得”対“後手玉の堅さ”だが、やや後手有利というのがAIの評価(多分、プロ棋士の評価もそうだろう)。ただし、振り飛車党にとっては、このくらいは許容範囲。
 ただし、先手は8筋に桂、7筋に銀があり、中央より右(玉側)が戦場になる可能性が高いので、その銀桂が取り残される危険性がある。

振り飛車の呼吸
藤井九段「先手は7六に銀をおいたままで、決戦になっては勝てません。銀は6七に引いておきたい」と再三解説。「銀が6七にあれば、5八で交換になった場合、▲5八同銀とするのが味が良い(▲5八同金となるのとは雲泥の差)」

 その藤井九段の解説が聴こえたのか、西山女流三冠は▲6七銀!(もちろん、解説が聴こえるはずはなく、振り飛車としては当然の一着)
続く
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おそらく、300万人がグハッっと…

2024-05-14 21:05:27 | 将棋
300万人という数は適当です。
実際はもっと多いかも(←「そんなことねえよ」と突っ込むところです)

 難解な将棋をややリードし、着実にリードを広げていった中盤戦。
 夕方、羽生九段の残り時間は残り50分(持ち時間は4時間)、対する飯島八段は8分。優勢のうえ、残り時間もある。
 ここで41分を投入し▲7四銀!最善手、または最善手に近い手であろう。
 これで、残り時間は9分対8分と持ち時間の優位はなくなったが、勝ちを読み切ったのならそれでよい。

 ところが、その数手後、優位をふいにする悪手を指し、一気に形勢互角。
 先の長考の読み通り指し進めたのだが、その手順に読み抜けがあったと思われる。
 ▲7四銀(この手は最善手だった)に30分、更にその後、20分ほど読み直せば、間違えずに指し進めることができたであろう。

 それでも、まだ互角。しかし、この互角というのは、AIがはじき出す数値で、互いSに最善手を指した場合の形勢判断。
 人間の目からすると、飯島八段の指し手は分かりやすく、羽生九段は最善手を続けるのは難しそうだ。
 しかも、決めに行って決まらなかった……流れが悪すぎる。

 駄目かも……60%ほど負けを覚悟した。でも、飯島八段も残り時間は少ないので、羽生九段の強さを考えると、5分以上に勝てるかもと、気を取り直して観戦。
 その期待に応え、、残り時間の少ない中で、ほぼ最善手を指し続け、逆に飯島八段が間違え、勝勢に。
 それでも、将棋は一手の読み落としで簡単に逆転するので、気は抜けない。

 ……当然、羽生九段も気は抜かなかったが、自玉の頓死筋を見落とし、大逆転負け!

 グハッ!

 飛車を渡して必至を掛けたのが間違いで、飛車を渡したので、頓死してしまった。


 勝つことだけを考えれば、あそこで50分も考えずに時間を残しておくべきなのだろうが、あそこで勝ちを読み切る(最短の寄せを目指す)のが、羽生九段の羽生九段たる所以なのだろう。

 これで、王位への挑戦の道は閉ざされた。勝っていれば、4勝1敗で渡辺九段と並び、紅組優勝を掛けて戦うことになっていた。(それに勝つと、白組優勝者とプレーオフ。勝てば挑戦)
 まあ、あと2勝必要なので、今期はがなかったということで……
 リーグ残留ができて良かったと考えよう。(6人リーグで、上位2位までが残留)

 紅組は、最終局を前にして斎藤(慎)八段と佐々木(大)と藤本五段が3勝1敗で並んでいたが、
 斎藤八段が藤本五段との1敗決戦を勝利し、佐々木七段も佐藤(天)九段に敗れたので、斎藤八段が優勝。
 挑戦者決定戦は渡辺九段vs斎藤八段となった。
コメント (2)
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女流棋士考 その18「2024年4月 女流棋士独断ランキング」

2024-04-17 14:34:51 | 将棋
昨年(2023年4月)に「改・女流棋士独断ランキング」を考えた。
Aランク           B1ランク
 里見女流五冠         清水女流七段
 西山女流二冠         塚田女流初段
 加藤桃女流三段        中井女流六段
 伊藤女流四段         石本女流二段
 甲斐女流五段         室谷女流三段
 上田女流四段         中村真女流三段
 山根女流二段         千葉女流四段
 香川女流四段         野原女流初段
 渡部愛女流三段        山口恵女流二段
 鈴木女流三段         岩根女流三段
                加藤圭女流二段

 ここ1年で、福間女流五冠、西山女流三冠のツートップは揺るぎないが
・甲斐女流五段、引退
・大島女流二段、内山女流初段の台頭

など、動きが大きく、改定しなければならないと思っていた。
里見姓が福間姓に変化したのも、大きな動きだった。

 せっかくなので、少し深く考えてみたい。
まず、レーティング
 レーティングについては、過去にも使用させていただいた『将棋連盟 棋士別成績一覧』さんのデータを利用させていただくことにしました(前回「将棋情勢 2023年12月1日現在のレーティングランキング」の際、アポイントと承諾を試みたのですが、返答がありませんでした。「黙認」していただけたのかと、勝手に判断しています。ご容赦ください)

【女流棋士レーティング 2024年4月14日現在)】
1 福間香奈五冠   2011   22     16 山口恵梨子三段 1624  21
2 西山朋佳三冠   1999   28     17 加藤結李愛初段 1609  -8
3 加藤桃子四段   1890  -12     18 千葉涼子四段  1602   0   
4 伊藤沙恵四段   1838  -47     19 和田あき二段  1602  63
5 山根ことみ三段  1758  -39     20 今井絢初段   1599  90
6 上田初美四段   1729  -38     21 小髙佐季子初段 1597  45
7 鈴木環那三段   1720   -2      22 北村桂香二段  1592  20
8 大島綾華二段   1704  133     23 室谷由紀三段  1591  -17
9 野原未蘭初段   1701  104     24 清水市代七段  1588  -18
10 渡部愛三段   1699  -29     25 岩根忍三段   1587  34
11 石本さくら二段 1685   2     26 木村朱里初段  1586  -1
12 香川愛生四段  1676  -32     27 松下舞琳初段  1585  13
13 内山あや初段  1659   75     28 加藤圭二段   1582  -8
14 塚田恵梨花二段 1652   -4     29 中村真梨花四段 1580  -63
15 磯谷祐維初段  1648   44     30 中井広恵六段  1578  -62
(レーティング値の右の数字は、1年前からの増減)

 レーティングは直近の実力や成績をかなり正確に反映するが、
・若手は初期レートの低さに影響される
・ノーシード者は、勝ち星を稼ぎやすい
 上記の2点は、時の経過とともに解消されるが、上位棋士からの勝ち星が少なくても15位前後までは進出できる。
 なので、各棋戦で上位の成績を上げているかどうかも考慮する必要がある。

 これまで2回のランキングも、各棋戦での成績を考慮したが、けっこう大雑把だったような気がする。
 今回は、割と真面目に?調べたが、直近の白玲戦、名人リーグ、清麗戦、マイナビ(女王)、女流王座戦に限らせていただいた。女流王位戦、女流王将戦、倉敷藤花戦は省かせてください。手抜きです。ごめんなさい。

福間香奈女流五冠  
 レーティング2011(+22) 2023年度成績 34勝12敗 .7391
 白玲A級リーグ…5勝0敗(現時点)
 女流名人…奪取(リーグ戦7勝2敗)
 清麗…防衛
 マイナビ…ベスト8
 女流王座…防衛

西山朋佳女流三冠
 レーティング1999(+28) 2023年度成績 38勝13敗 .7450
 白玲…保持者
 女流名人戦…失冠
 清麗(進行中)…予選1位通過(ベスト4確定)
 マイナビ…女王保持者
 女流王座…挑決敗退

加藤桃子女流四段
 レーティング1890(-12) 2023年度成績 36勝16敗 .6923
 白玲A級リーグ…3勝2敗(現時点)
 女流名人…昨季リーグ戦4勝5敗陥落、今期予選勝ち上がりリーグ入り
 清麗(進行中)…ベスト7以上(予選通過決定戦進出)
 マイナビ…ベスト4
 女流王座…挑戦権獲得

伊藤沙恵女流四段
 レーティング1838(-47) 2023年度成績 30勝21敗 .5882
 白玲A級リーグ…4勝1敗(現時点)
 女流名人…昨季リーグ戦3勝6敗陥落、今期はリーグ入りの一戦で野原に敗退
 清麗(進行中)…ベスト7以上(予選通過決定戦進出)
 マイナビ…ベスト4
 女流王座…ベスト8

 福間、西山のツートップが抜きん出た存在。
 加藤桃、伊藤も昨期の名人リーグでは不覚を取ったが、他棋戦では挑戦権獲得など上位進出者に名を連ね、一段上の実力。


山根ことみ女流三段
 レーティング1758(-39) 2023年度成績 19勝17敗 .5277
 白玲A級リーグ…2勝3敗(現時点)
 女流名人…昨季リーグ戦5勝4敗(4位)でリーグ残留
 清麗(進行中)…ベスト7以上(予選通過決定戦進出) 
 マイナビ…ベスト32
 女流王座…一次予選敗退

上田女流四段
 レーティング1729(-38) 2023年度成績 19勝19敗 .5000
 白玲A級リーグ…2勝4敗(現時点)
 女流名人…昨季リーグ戦3勝6敗でリーグ陥落、今期は予選初戦敗退
 清麗(進行中)…予選本戦ベスト32、敗者戦は2勝後、伊藤に敗れる 
 マイナビ…ベスト8
 女流王座…ベスト4

鈴木環那女流三段
 レーティング1720(-2) 2023年度成績 21勝15敗 .5833
 白玲B級リーグ…4勝2敗(現時点)
 女流名人…昨季リーグ戦4勝5敗(6位)でリーグ残留
 清麗(進行中)…ベスト7以上(予選通過決定戦進出) 
 マイナビ…予選敗退
 女流王座…二次予選敗退

山根と上田は勝率は良くないが、ここまでは、この記述順でランク付けしていいように思う。


大島綾華女流二段
 レーティング1704(+133) 2023年度成績 32勝9敗 .7804
 白玲C級リーグ…1勝3敗(現時点)
 女流名人…予選勝ち上がりリーグ入り
 清麗(進行中)…予選本戦ベスト16、敗者戦は2勝後、鈴木に敗れる 
 マイナビ…挑戦権獲得
 女流王座…予選通過、本戦1回戦敗退

 マイナビでは福間、加藤桃を撃破し挑戦権獲得。これだけで、Aグループを確定しても良いが、白玲戦C級で1勝3敗はマイナス材料。
 白玲戦発足後に女流棋士になり、D級から参加なので、低いクラスに在籍しているのは仕方がないが、1勝3敗というのは不振と言って良い。
 そこで、もう少し吟味……女流王位戦ではライバルの内山を破ってリーグ入り、更にリーグ戦でも中井、伊藤、千葉、山根を連破。最終戦で西山に敗れ、4勝1敗となり、伊藤、西山と同成績の4勝1敗で並んだが、規定によりプレーオフなしで伊藤が紅組優勝(変な規定だ)。
 女流名人戦予選でも、室谷、岩根を破ってのリーグ入り。昨年度の成績も32勝9敗 .7804。やはり、Aグループ入りは異論が出ないであろう。


野原未蘭女流初段
 レーティング1701(+104) 2023年度成績 30勝12敗 .7142
 白玲B級リーグ…4勝2敗(現時点)
 女流名人…予選勝ち上がりリーグ入り
 清麗(進行中)…予選本戦ベスト32、敗者戦は3勝(渡部に勝利を含む)後、伊藤に敗れる 
 マイナビ…予選敗退
 女流王座…ベスト8

 女流棋士になった当初から、腕力(悪力?)はあったが、出来不出来の差が大きく星を取りこぼすことも多かった。2021年度は倉敷藤花戦の挑戦者決定戦まで進出したが、その年度成績は15勝14敗 .5172。翌2022年度も16勝12敗 .5714でややアップしたものの、物足りない成績であった。
 しかし、昨年度(2023年度)は30勝12敗と躍進。上位者相手にも、2023年4月~2024年4月14日の期間で、対加藤桃1勝1敗、対伊藤1勝1敗、対山根1勝0敗、対鈴木1勝1敗、対大島1勝0敗、対渡部1勝2敗、対香川1勝1敗、対石本0勝1敗、計7勝7敗と互角に戦っている。実績(タイトル挑戦など)はまだないが、Aクラスの力はあるのではないだろうか?これを書いている段階で、《Aクラスは10人》と考えており、《他の棋士と比較してどうなのか?》というところだ。
 いずれにしても、これから始まる名人戦リーグが彼女の試金石となる(初戦は4月22日、対大島戦)


渡部愛女流三段
 レーティング1699(-29) 2023年度成績 22勝18敗 .5500
 白玲A級リーグ…1勝5敗(現時点)
 女流名人…昨季リーグ戦5勝4敗(4位)でリーグ残留
 清麗(進行中)…予選本戦ベスト32、敗者戦は2勝後、野原に敗れる 
 マイナビ…予選敗退
 女流王座…ベスト4

 昨年度の成績は、 22勝18敗 .5500と物足りないが、その中身は濃い。
 2023年4月~2024年4月14日の期間で、対福間0勝2敗、対西山0勝1敗、対加藤桃1勝2敗(不戦勝1は除く)、対伊藤1勝1敗、対山根2勝1敗、対上田1勝1敗、対鈴木1勝1敗、対野原2勝1敗、対香川3勝1敗、対石本0勝2敗、対甲斐(引退)2勝0敗、計13勝13敗と互角。2トップ(福間、西山)戦を除くと13勝10敗(引退した甲斐戦を除外すると11勝10敗)、白玲戦では苦戦しているが、白玲A級、女流名人戦リーグに入っていることも合わせると、Aクラスであることに疑念の余地はない。


石本さくら女流二段
 レーティング1685(+2) 2023年度成績 17勝18敗 .4857
 白玲A級リーグ…4勝2敗(現時点)
 女流名人…昨季リーグ戦5勝4敗(3位)でリーグ残留
 清麗(進行中)…予選本戦ベスト8(西山に敗れる)、敗者戦はベスト7入り目前で磯谷に敗れる
 マイナビ…予選敗退
 女流王座…二次予選敗退

 昨年度の成績は17勝18敗の負け越しだが、白玲戦A級で現在4勝2敗、昨年度女流名人リーグで5勝4敗の3位で残留は軽視できない。
 2023年4月~2024年4月14日の期間で、対福間0勝2敗、対西山0勝1敗、対加藤桃2勝2敗、対伊藤1勝0敗、対山根0勝1敗、対上田0勝3敗、対鈴木1勝2敗、対野原1勝0敗、対渡部2勝0敗、対香川1勝0敗、対甲斐0勝1敗、計8勝12敗……苦戦していると言って良いだろう。ただし、対ツートップと対甲斐戦を除くと8勝8敗と互角の成績。対加藤桃、伊藤戦に限ると3勝2敗と健闘しており、対上田戦の3戦全敗が響いているとも考えられる。
 白玲、女流名人リーグも考慮すると……う~ん、《Aクラス・ボーダーライン》ということで保留。


香川愛生女流四段
 レーティング1676(-32) 2023年度成績 20勝24敗 .4545
 白玲B級リーグ…4勝2敗(現時点)
 女流名人…昨季リーグ戦2勝7敗でリーグ陥落
 清麗(進行中)…予選本戦初戦敗退(磯谷に敗れる)、敗者戦は1勝後、敗れる
 マイナビ…本戦1回戦敗退
 女流王座…二次予選敗退(渡部に敗れる)

 パッとしない……
 女流王位戦には予選決勝で鈴木を破って挑戦リーグ入りしたものの、1勝4敗で陥落。
 女流王将戦は挑戦権を獲得したが、0勝2敗で西山女流王将に敗れた。挑戦トーナメントでは、福間は準々決勝で小高初段に敗れ、加藤桃と伊藤が準々決勝でつぶし合い、それに勝った加藤桃も準決勝で渡部に敗れるという展開。香川の挑戦権獲得は評価できるが、決勝までに破った相手が木村1級、中井六段、小高初段と微妙(ごめんなさい)。
 昨年度の倉敷藤花でも初戦敗退(今井1級に敗れる)。
 2023年4月~2024年4月14日の期間での上位棋士との対戦は、対福間0勝1敗、対西山0勝3敗、対加藤桃0勝2敗、対伊藤1勝1敗、対山根0勝1敗、対上田0勝1敗、対鈴木2勝1敗、対野原1勝1敗、対渡部1勝3敗、対石本0勝1敗、計5勝15敗(四強との対戦を除いても4勝8敗)……本人が一番痛感していると思うが、残念というしかない。
 Aクラス(←私の独断クラス)陥落もやむを得ない。


 ……ここまでがAクラス候補だが、内山女流初段についても考慮する必要がありそうだ。
内山あや女流初段
 レーティング1659(+75) 2023年度成績 25勝14敗 .6410
 白玲C級リーグ…3勝2敗(現時点)
 女流名人…7勝2敗で福間とのプレーオフで挑戦権を争う
 清麗(進行中)…予選本戦初戦敗退(岩根に敗れる)、敗者戦は2勝後、敗れる
 マイナビ…予選敗退(上田に敗れる)
 女流王座…一次予選敗退(香川に敗れる)

 女流名人リーグで福間、伊藤、上田、鈴木、香川、渡部、石本に勝利したのは強烈な印象。
 白玲戦は第2期からの参戦なので、まだC級。やや伸び悩んでいる印象があり、今期も現在9番手で、昇級は少し難しそうだ。ただ、上位にいる清水(4勝1敗・現4位)、本田戦(4勝1敗・現3位)、田中(3勝2敗・現8位)を残しており、現在1位の千葉は小高(4勝1敗・現2位)、山口恵(3勝2敗・現7位)、加藤結(2勝2敗・5戦目に勝つと7位浮上)戦を残している。さらに、現2位の小高も千葉、清水、大島戦を残している。かなり、上位陣の星のつぶし合いが見込まれ、予断を許さない。
 他の棋戦では……女流王位戦はリーグ入りの一戦で大島に敗れている。
 女流王将戦は昨期は予選初戦敗退だったが、今期は本戦入りを果たしている(本戦はこれから)
 昨期倉敷藤花は準々決勝に進出したが、そこで西山に敗れている。(今期はこれから)
 2023年4月~2024年4月14日の期間での上位棋士との対戦は、対福間1勝1敗、対西山0勝1敗、対加藤桃0勝1敗、対伊藤1勝0敗、対山根0勝2敗、対上田1勝1敗、対鈴木1勝0敗、対渡部1勝0敗、対大島1勝1敗、対石本1勝0敗、対香川1勝1敗、計8勝8敗と互角に戦っている。

 上述した野原、渡部、石本、香川の項の段階では、内山女流二段が比較対象にはなっておらず、内山女流との対戦成績を記載しませんでした。
 本来なら、上記の項でも対内山戦の成績を加えるべきですが、省略させてください。「内山女流初段」の項で、各女流棋士との成績を記しているので、それをご参照ください。


 ここまで、レーティング上位13棋士について分析したが……
1位福間女流五冠、2位西山女流三冠、3位加藤桃女流四段、4位伊藤女流四段、5位山根女流三段、6位上田女流四段、7位鈴木女流三段、8位大島女流二段、9位渡部女流三段まではあまり悩まず決まった。大島、渡部の順位は少し悩んだが、大島のマイナビ女王挑戦、女流王位リーグ4勝1敗、女流名人リーグ入りを重視した。
 残る1枠……野原女流初段、石本女流二段、内山女流初段の比較で悩む……
 内山の女流名人リーグでの活躍、野原の強さの最大値の大きさ、石本の白玲、女流名人戦での着実な実績……甲乙つけ難い。
 無理に順位をつけるなら、10位内山女流初段、11位石本女流二段、12位野原女流初段の順か……と言っても、微差……無理にクラスを分けなくても………というわけで、12位までAクラス!


 13位以下のB1クラスのランキングは以下の通り。
13位…香川愛生女流四段、14位…磯谷祐維女流初段、15位…塚田恵梨花女流二段、16位…加藤結季愛女流初段、17位…千葉涼子四段、18位…山口恵梨子女流三段、19位…小高佐季子女流初段、20位…北村桂香女流二段、21位…今井絢女流初段、22位…和田あき女流二段。
この辺りまでがB1クラスだろうか……

 清水女流七段、中井女流六段、室谷女流三段、中村真女流四段、岩根女流三段、加藤圭女流二段は残念ながらランク落ち。ただし、岩根女流三段は復活の気配を感じる。
 松下舞琳女流初段は昨年度後半に調子を崩したのが残念。
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2023年度NHK杯将棋トーナメント 準決勝 羽生善治九段-藤井NHK杯保持者 その3

2024-03-29 14:33:17 | 将棋
間が空いてしまいました。(「その1」「その2」
……何を書くつもりだったのか……え~と………

 そうそう、まず、幻の妙手▲6三桂について
 この手については、「その2」で詳しく述べているので、《何を今更?》と思われることだろう。

 復習すると………
・第5図より、羽生九段は▲3六飛と角取りに逃げ、△5九角成▲同銀と進み、ほぼ互角。(△5九角成では△3七角成が正着で、後手が優勢だった)
・第5図では、▲6三桂と打てば、羽生九段が有利~優勢で勝ちやすい将棋になったはず。 


《ちょっと、この▲6三桂は浮かばない!》というのが巷の評判。
 そして、《藤井八冠は▲6三桂が見えていた!》(感想戦で、藤井八冠は「▲6三桂で自信がなかった」旨の言葉を発していた)
 でも、この▲6三桂って、そんなに見えにくい手なのだろうか?
 第5図の局面であるが、先手としては3三の成桂は4三に動かしたい。しかし、図からすぐ▲4三成桂とすると、△3八とと飛車を取られて、手負けになる。
 しかし、▲4三成桂の前に▲6三桂△同金を利かせておけば、▲4三成桂△3八とには▲5二銀と打つ手が成立しそう(実際にこう進めば先手勝勢。詳しくは「その2」
 この思考過程は、普通、行いそうな気がする。
 ▲3三桂成とする筋はずっと視野に入っており、桂成りの後、▲4三成桂と銀を取る手も自然な手の流れだ。そして、飛車当たりになっている第5図の局面になれば、攻め手を加速する▲6三桂が指し手の上位候補に上がってきそうに思える。
(藤井八冠がどの局面で▲6三桂が見えたのかは不明)
 

△3四歩(第6図)での▲3四同成桂について

 ▲3四同成桂は順当な手である。ただし、△同銀▲同飛△3三銀と受けられ、▲3六飛と引くことになっては、後手陣から先手の駒影が消えてしまっている。対する先手陣には4七にと金が残っている。しかも、手番は後手。(ただし、△3三銀では△4三銀が正着。△3三銀だと3二の金が浮いているので、▲7六角のような攻防手が生じている)
 ▲3四同成桂は無難な手だが、“無難”で済む局面ではなかった。▲3四同成銀では▲4三成銀と貪欲に指すべきであった。これに対し、△3五歩と飛車を取るのは▲6三桂△6一玉▲3四角で先手優勢。▲6三桂に△同金は▲5二銀で先手勝勢。なので、▲4三成桂には△同金と取ることになるが、▲4五飛△4四歩▲4七飛で手順にと金を消去でき、本譜とはかなり得(ほぼ互角だとは思う)


とにかく、ここ数年の羽生九段は、終盤になると踏み込みが浅くなる。貪欲さが足りない……そんな気がする。
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2023年度NHK杯将棋トーナメント 準決勝 羽生善治九段-藤井NHK杯保持者 その2

2024-03-20 09:40:11 | 将棋

 前記事は、この図から、《▲3六飛は疑問手で最善手を指せば、先手羽生九段がやや有利だったのでは》と述べたところまでだった。
 で、その最善手というのは、▲6三桂。(感想戦で、藤井八冠もこの手を示しており、自信がなかった模様)

 この手に対し、①△6三同金と取る手が当然考えられる。
 △6三同金以下▲4三成桂△同金▲3一飛成△4一歩▲3二銀△5二銀▲2三角(変化図2-1)が想定される。

 上記手順の▲4三成桂△同金では△3八とと飛車を取りたいが、▲5二銀△6二玉▲6三銀成△同玉▲4一角で先手勝勢。(▲6三桂はこの▲5二銀を打つためだった)
 当たりが掛かっていた飛車が手順に成り込め、後手玉に迫っていて調子が良い。
 ただし、図の局面は意外に難しい。図より△4二金▲4三歩で後手が困っているようだが、△6二玉と身を翻され、予定通り▲4二歩成と金を取ると△同銀が龍当たりになり、▲1一龍に△5七歩成という変化が考えられる。それに、▲4三歩に対して△4二ではなく△3三金と角取りに逃げておく手もありそうだ。
 ①△6三同金の変化は、先手が良いとは思うが、簡単ではない。

 ▲6三桂に△同金が思わしくないなら②△6一玉と躱す手のはどうだろうか?
 △6一玉には、▲3二成桂が調子が良い。後手は△3八とと飛車を取りたいが、▲7一金△5二玉▲4一角で詰んでしまう。かと言って、▲3二成桂に△同銀と取るのは▲同飛成で先手勝勢。そこで、もう一手△7二玉と先逃げする手がしぶとい。飛車当たりになっているので、▲3三飛成(変化図2ー2)と成り込むが、やや不満な成り込み位置。

 図より△4四銀と逃げる手や、逃げずに△8七歩と攻め合う手がある。先手が良さそうだが、相当難解な形勢。

 結論めいたことを言わせていただくと(自信なし)……
 ▲6三桂と打てば、①△6三同金も②△6一玉も難解ながらも先手がやや良し。

 先手が気持ちよく攻める手順なので、先手ペースで先手が勝ちやすそうだが、気持ちよく攻めている割には難解なので、《おかしいなあ》と焦りが生じるかもしれない。たいていの場合、後手が間違えそうな将棋だが、相手が藤井八冠なので踏みとどまる。そのうち、こちら(先手)が間違えてしまうことも大いにあり得る。


 実戦は、▲6三桂とせず、▲3六飛と角取りに逃げ、△5九角成▲同銀と進み、ほぼ互角に。実は、△5九角成では△3七角成が正着で、後手が優勢だったらしい。
 ▲5九同銀以後、△3五歩▲同飛△3四歩(第6図)と進み、

 ▲3四同成桂△同銀▲同飛△3三銀と進む。
 上記手順中、▲3四同成桂では▲4三成桂が、また、△3三銀では△4三銀が正着だったらしい。
 3三に歩でなく銀を打ったのは、▲2四飛と回られる手を防ぐためだが、△4三銀でも飛車回りは防げている。歩を使わなかったので、飛車回りには△2三歩と打つ歩が残っている。銀の位置は3三より4三の方が良いということなのだろう(よく分からないが、3二の金が浮いているかいないかの違い)。
 ともかく、△3三銀に▲3六飛と引いた局面はほぼ互角。
 ただし、ここで最善手を指すのが藤井八冠。やはり、最善手の△8七歩(第7図)を着手。

 歩を打たれて…
《そうか、藤井八冠に攻めのターンが回ってしまったのか……気がつけば、後手陣には敵影(先手の駒や足掛かり)が消えてしまっている
 評価値は互角でも…………》

 そこで、後手陣に手を付けておこうと▲2一角……
 次に▲3二角成と金を取られると、一気に後手玉は危険になる。△4二金と躱すなら、▲8七角成と打った歩を払いつつ、馬を自陣に引き付けることができるのだが……藤井八冠は△8六飛。この手が厳し過ぎた。
 ▲8九歩と受けたが△7六桂の追撃され、▲9七銀と飛車当たりに受けても、かまわず△5七歩成とされ、▲8六銀に△5八と左で先手玉に必至が掛かってしまった。羽生九段、敗勢に

 ▲2一角では、▲7六銀が粘り強い手で、まだまだ熱戦が続いていただろう。また、“寄せてみろ”と強く▲8七同金とする手もあった。以下△5七歩成に▲7六角なら、藤井八冠ももう一汗かかねばならなかっただろう。

 
 羽生九段は▲8一飛と王手。合駒に金を使ってくれれば、先手玉の詰めろ(必至)が解けるが、藤井八冠は当然、△6一金と金を引いて受ける。その後も正確に受け続けた。
 △5二玉で、羽生九段、投了。 



 面白い将棋だったが、やはり、負けたのは残念。本音を言えば、面白い将棋でなくても、勝ってほしい。
 ▲2一角が残念だったが、敗因は別のところにあったと思う。
 ここ数年の傾向として、中盤までは“斬り合い辞せず”と、強く踏み込んでいくが、終盤に差し掛かると、妥協してしまうことが多い(本譜で言えば、▲6三桂を逃した“▲3六飛”、第6図の△3四歩に対する“▲同成桂”
 勝ちを求める貪欲さが薄くなってきているように思う。
 それともう一点。
 中盤戦までで将棋力が消耗・摩耗してしまう。“局面でのアンテナの感度”、「“大局観”(ここはこう指せないとおかしい)と、それを実現させる“読みの精度・深さ・意欲”……終盤戦になるころには、そういったものが摩耗してしまう。
そんな気がする。

 とは言え、NHK杯の決勝戦での解説は、非常に手が良く見え、読みも正確だった。
 そう、羽生九段はまだまだ強いのである

(「その3(追記)」に続く)
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2023年度NHK杯将棋トーナメント 準決勝 羽生善治九段-藤井NHK杯保持者 その1

2024-03-19 15:21:47 | 将棋
決勝戦の放送も終わってしまいましたが、準決勝です。


 角換わり模様の出だしだったが、後手の藤井NHK杯保持者(以後“藤井八冠”と表記)が雁木を選択。
 角換わりの通常の初手▲2六歩ではなく、▲7六歩と指し飛先の歩も2六で留め▲7八金を先に指したので、羽生九段が後手雁木を誘導したのかもしれない。第1図の先手の陣形は短手数で固め、右四間飛車腰掛銀と戦闘意欲十分の構えだ。
 後手は居玉のうえ、桂頭も手薄。仕掛けるなら、今がタイミング。▲4五歩△同歩▲7五歩△同歩▲2四歩△同歩と進む。

 《陣形の差(後手は居玉で桂頭に弱点)》、《攻めている》ので、アマチュア二段同士なら相当先手の勝率が良いはずだ。もちろん、藤井八冠は先手の仕掛けとの間合いを計り、仕掛けられても大丈夫(悪くはならない)と見ている。
 ここで(第2図で)、▲4五桂と跳ねるのが順当と思われたが、羽生九段は▲3五歩。△同歩なら3三への歩の叩きが生じ、攻めの手段を広げる羽生九段好みの突き捨てだが、藤井八冠は取らずに△7七角成▲同桂△2六角(第3図)と角交換から先手飛車に当たりを掛けられ、

 ▲3八飛を強いられ△4六歩と突きだされ、先手の5六の銀がいなくなると△4七歩成とされる嫌味が生じている。それにより、《先手の先制攻撃から主導権を取って攻める》という目論見だったのが、《攻め合い》に持ち込まれてしまった感がある。
 先手としては、《先手攻勢、後手守勢》でも《攻め合い》でも攻めるという選択肢には変わりはなく、▲3四歩と攻めを継続。対する藤井八冠も△8六歩▲同歩を利かせ、△5五歩と狙い筋を敢行。▲同銀なら△4七歩成があるので、後手の攻めが部分的には決まってるのだが、先手も▲4五桂と跳ねて、全軍総攻撃の態勢。『肉を切らせて、骨を断つ』という兵法だ。

 後手も△5六歩と銀を取り、次に△4七歩成(これが飛車取りになる)を見せる。この猛烈な攻め合いは、先に銀を取った後手の攻めが速いように思えるが、NHKのAI形勢判断は若干先手に振れていたように思う。

 後手としては、銀取りに△5五歩と突きだした手では△7五歩、△5六歩と銀を取る手では△4四銀と手を戻す手が有力だったようだ。実際、感想戦で藤井八冠も「△7五歩の方が良かったかもしれない」と言っていたような…
 ただし、藤井八冠の感想はともかく、AIの評価値……例えば、勝利確率60%であっても、その60%の有利を維持する手が指せなければ意味がない。要は、棋士(人間)のトップレベルが勝ちやすいかどうかが問題なのである。

 とは、言ったものの、テレビ画面のAI形勢判断や候補手には、どうしても目が行ってしまう。
 △5六歩と銀を取られた局面は、評価値は“先手やや良し”だったと思う。そして、候補手の最上位(最善手)は▲7四歩(変化図1)

 私からすると、△4七歩成が相当な脅威で、対する▲7四歩は単なる桂取りで、反撃のパンチとしては軽すぎるように思える。
 しかし、△4七歩成には▲3六飛が角取りになる。この角取りには、△5九角成と切る“返し技”があるが、▲5九同銀と取る手が次の△5七歩成に対する先逃げとなっており、先手からは次の▲7三歩成の非常に厳しい手が残っている(△7三同金には▲5三桂成がある。角を切ったことで2六の角の5三への利きもなくなっている)
 なので、▲7四歩には△同飛としておく方が良いのかもしれない(飛車を7四に移動させた方が先手の得になるのかは私には分からないが、NHKのAIは“▲7四歩が良い”と言っていた)
 でも、これはAI的な手で、藤井八冠ならともかく、人間には浮かびにくい手だ。羽生九段は、人間の最善手の▲3三歩成。
 以下△3三同桂▲同桂成に△4七歩成と進む。

 ここで、羽生九段は▲3六飛と躱す。角取りの先なので当然に思えたが、この手で画面の形勢判断の藤井八冠の帯グラフがにゅ~と伸びた(60%ぐらいで藤井有利)。ただし、この将棋、AIにとっても難解らしく、よく帯が伸びたり縮んだりした。この局面について言うと、▲3六飛と指す直前で羽生有利の60%をが53%に減り、▲3六飛の直後には40%(藤井60%)になり、約30秒後に藤井八冠が指す直前は44%に戻っているという具合。

 ともかく、上記の評価値の変動が示すのは、《▲3六飛は疑問手で最善手を指せば、先手羽生九段がやや有利だった》ということ。
 で、その最善手というのは……「その2」に続く。
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嘆きの中村太地「その2」……2023年度NHK杯将棋トーナメント 準々決勝 中村太地八段-羽生善治九段

2024-03-06 15:38:22 | 将棋
「嘆きの中村太地……2023年度NHK杯将棋トーナメント 準々決勝 中村太地八段-羽生善治九段」の続きです。
《書かねば!》と思ってるうちに、2週間が経ってしまいました(それにしても、2週間の経過が速い)。


 図の▲6五歩は中村八段の新手。この手に対し、①△6五同銀、②△6五同桂、③△6五同歩が考えられたが、羽生九段は③△6五同歩を着手(①は先手優勢、②は形勢不明…詳しくは「その1」
 6五の地点は後手の銀と桂が利いていて、△6五歩と後手から仕掛けるのが通常で、羽生九段も「▲6五歩(新手図)は一度も考えたことがなかった」
 △6五同歩に▲6四角!

 この角打ちが中村八段が温めていた秘手で、この角を打つスペースを作るために▲6五歩の突き捨てだったのだ。
 この角打ちは、次に▲5三桂成とし△同金に▲7三角成とするのが直接の狙い。
 後手がこの筋を防ぐには、5三の地点の利きを増やすか、7三桂に紐をつけるかである。
 感想戦では、桂に紐をつける△8三飛も調べられた。ただし、飛車の位置は8一の方がよく、それを1手かけて8三に移動させるのは気が進まない。羽生九段もそんな感じで駒を動かしていた。
 中継の画面では、AI候補手として△8四角が示されていて、この角も△8三飛同様、桂に紐をつける手だ。この角打ちも受けの色が濃く、先手陣には響きが弱いので、感想戦では全く触れられなかった。ただし、中継AI評価値は最善手に挙げられていた(ただし、もっと読み込ませると評価が変わる可能性もある)
 羽生九段は△4四角。5三への利きを増やしつつ、先手陣を睨む攻防の角打ちで、プロ棋士なら第一感の角打ちだろう。(ただし、この角打ちも危険な一面もあり(後述)、その危険な一面を避ける意味では、△8四角も有力だった)
 中村八段も△4四角が最有力とみて、研究を掘り下げていたようだ。後続手は▲2四歩

 この▲2四歩は油断ならない手で、普通に△同歩▲同飛△2三銀と応対すると、▲4四飛と切られ、△同歩に▲7二角の必殺手が炸裂する。

 飛車取りだがこの角は只、△7二同金と取るのが当然なのだが、5三の利きがなくなるので▲5三角成が痛烈。以下△4一玉▲5四馬で先手勝勢になる。それなら、飛車取りを躱しつつ5三の利きを増やす△5一飛が考えられるが、この手には▲5四角成とタダで銀を取る手があって、後手陣は壊滅する。この筋があるので、《△4四角には危険な一面もある》のだ(△4四角が悪手という意味ではない)
 ▲7二角では▲5三桂成△同金▲7三角成も有力だが、

 これならば、後手も頑張れる。やはり、必殺図のほうが簡明であろう。
 私の想像であるが……
 …▲2四歩に対しては、やはり、まず素直に△2四同歩▲同飛を考え、△2三銀に▲4四飛△同歩▲5三桂成△同金▲7三角成を想定し、それで思わしくないと考えるなら、▲2四歩(第3図)や▲2四同飛の時に変化する手を考えるはずだ。
 微妙なのは、▲7三角成(良さげな図)で“後手も指せないこともなさそう”なこと。こちらの筋に隠れて、必殺手の▲7二角が見えないこともありそう。なので、▲2四歩(第3図)に素直に応じて、以下△2三銀▲4四飛△同歩に▲7二角を食らってしまう可能性も低くはなかった……(直前になれば▲7二角はひと目で見えるとは思うが)
 実際、感想戦では▲7二角が示された時、「そうそう、それが嫌だった……(実際の局面を目の当たりにして、凝視すること約20秒)……あ、これ…滅茶滅茶、痛いですね」と言葉を発し、さらに大きな声で「滅茶滅茶痛いですね」と。
 羽生九段は、先手から色々攻められる手を考え、その変化の中で飛車当たりを掛けられた時、△8六飛と走る余地を作るための△8六歩の突き捨てを入れておいた方が良さそう。更に、突き捨ては後からでは利かない可能性もあると考え、▲2四歩(第3図)のタイミングで△8六歩(第4図)と突いた。

 このタイミングでの△8六歩は、中村八段の想定外だったようだ。
 角か歩、どちらで取るか?……▲8六同歩だと、△6三金とされた時に、角が9七に帰還できないので、▲8六同角と角で取った。
 《▲4四飛~▲7二角の筋があるので良い》と考えたが、ここに大きな読み抜けがあった。
 角を引いて、《▲5三桂成~▲7三角成の筋が消してしまった》のが大きかったのだ。
 ▲8六同角の罪は2つ。
①(上記の)▲5三桂成~▲7三角成の筋がなくなった
②▲4四飛~▲7二角の筋の時の読み抜け

 この▲8六同角の周辺の気持ち(後悔)を、『棋士中村太地将棋はじめch』の「羽生善治九段戦の敗因を秒で当てたら怒られた」で、中村八段が吐露している。
 読み抜けは▲8六同角を指した後、気づいた。
 実戦は▲8六同角に△2四歩。この手に対して、中村八段は5分もの考慮時間を消費している。

 「△8六歩に対して、考慮時間の1分が惜しくて(この時、秒読みに入っていた。1分単位で消費できる考慮時間は10分全部残っていた)、ノータイム(25秒)で(ふらふらっと)▲8六同角と指してしまった。その後、5分も考慮時間を使うくらいなら、この時、もっと考えるんだった……」
 この時、先の必殺図を目指して、▲2四同飛~▲4四飛~▲7二角と進めたのが、“必殺もどき図”。(対比として必殺図も挙げておきます)

 “必殺もどき図”で後手が△7二同金と取ってくれるなら、思惑通り▲5三角成で勝勢になるが……
 ▲8六同角で角が8六にあるので、△8六飛と切られてしまう!

 NHK杯での初の準々決勝進出。相手は羽生九段(名誉NHK杯選手権者・優勝11回)。
 新手を披露、思惑通りの展開だったのに、ふらふらっと▲8六同角と指してしまい、研究が水泡と消えた……

 以降も、気力を振り絞って指し続けたが……


 無念さが滲み出る譜の進行だった。
 
 ちなみに、▲8六同角でなく▲8六同歩の場合は、△5二玉とするのが最善でほぼ互角らしい。
 8六の歩の突き捨ては、先手の角の可動域を狭める反面、先手に歩を与えるので▲3三歩などの攻め手を与えるので、一長一短で微妙とのこと。
 感想戦で、▲8六同歩に△6三金も調べられたが、▲5五銀△同銀▲同角△同角に▲7二銀が示された時、再び、羽生九段が「滅茶苦茶厳しい」と二度呟いていた。
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「何やってんだよぉ~」…その後

2024-03-02 10:51:34 | 将棋
「何やってんだよぉ~」の“その後”です。(「その2」ですが)


 第1図が問題の局面。合駒の選択肢は香、桂、銀、金、飛の5つ。
 合駒選択の考え方は、その局面によって異なり、難しい。
 金合いは先手を取る意味もあり有力。後手玉には詰めろが掛かっており、金1枚使っても詰めろは消えないのも魅力。ただし、△3八金▲同玉△5八龍などで取られてしまうことがマイナス。
 その意味では、安い駒の香を打ちたくもなる。歩がベストだが、あいにく二歩。香は後の△5七龍を防いでおり、桂は後に4六に駒を打たれる手を防いでいる。飛合いは後手玉を詰ますのに戦力低下になり、飛車を取られてしまう危険性もある。ただし、場合によっては、玉が右辺下段に逃げた時、防御になる可能性もある。
 銀合いも有力そうだ。守備力もそれなりにあり、持ち駒に銀が3枚あるので1枚消費しても影響なさそうだ。

 ……正解は、金、または香。桂合は優勢から互角になり、あまりよくない。飛と銀は敗勢になる。
 羽生九段は4分で銀をつまんだ……形勢を表す評価値の曲線は、東尋坊の断崖絶壁ごとく、急降下した……
 上記の△3八金▲同玉△5八龍の筋で、後手が銀を手に入れると先手玉は詰んでしまうのだ(厳密には、詰まない逃げ方があるが、絶望的な局面になる)
 評価値を知っている観戦者は、《銀合いは負けになる》と知っているので「何やってんだよぉ~」となるが、対局者が正着を指すのは非常に難しい局面だった。この記事を書くに当たり調べたが、相当難しい選択肢が多かったのも不運だった。それでも、32分残していたのに、4分で指してしまったのは残念だ。
 羽生九段も着手した暫く後、銀合いの非を悟っていたのが伺えたし、局後も悲痛な感情を隠せなかった。

 (香合でも良いようですが、この記事では金合いに絞って述べます)

 金合いに対しては、①△3八金と②△4七香がある
①△3八金
 第1図より△3八金▲同玉△5八龍と進んだ時、3六に利かせて▲4八桂と合駒をするのが正着。
 この時、㋐△4七金と㋑△3六香がある
㋐△4七金
 △4七金には▲2七玉。

 この時、もし4七に打った駒が銀ならば、△3六金▲同桂△同銀成と迫ることができる。この違いが大きい。この差は、最初の5八への合駒が金合いか銀合いで生じる。▲5八銀が大悪手である所以だ。
 とは言っても、金合いしても“金合い図2”から△3六金▲同桂△3八龍▲2六玉△3六龍と迫る手があり、気持ち悪い。

 だが、図から▲1五玉(金合い図4)で大丈夫。後手の1六歩がなければ簡単に詰むのだが…。

▲4八桂合に対して、㋑△3六香も有力。

 △3六香には⒜▲3七歩△2八金▲同玉△4八龍と迫る手が怖い。
 この手には▲3八飛が好守!
 以下△1七金▲2九玉で逃れている。(▲1九玉と逃げると△1八金▲同飛△2七桂以下詰み)

 また▲3八飛(金合い図6)の時

 △1八金も▲2七玉で大丈夫(▲1八同玉は詰む)
 ”金合い図5”の△3六香に対して⒝▲2七玉とかわした方が簡明かもしれない。
 以下△4七龍▲2六玉△1七龍▲1五玉(金合い図8)と追い込まれて絶体絶命のように思われる。

 この局面、後手の持駒に金が2枚あるが、先手玉に詰みはない。歩が打てないのが痛い。持駒に香か桂などもう一枚あれば詰むのだが…

 と言う訳で、▲5八金(金合い図)に①△3八金は詰まない
 では、②△4七香はどうだろうか?
②△4七香(△4五香と離して打つ手には▲4六歩で大丈夫)

 図以下▲4七同玉△3六金▲4八玉△4七金打(金合い図10)と迫られるが、

 ▲3九玉と引き、△3八金▲同玉△5八龍▲4八歩と凌ぐ(実は“金合い図10”の△4七金打ですぐに△3八金と打っても同じになる)
 ここで⑴△2七金打(金合い図11)

▲3九玉でも▲2九玉でも詰まない。
 また、⑵△4七金打も▲2九玉△4九龍▲3九香△3八金(金合い図12)

に、▲1八玉で詰まない。

 と言う訳で、△6八同飛成(第1図)に金合いで詰まない。

 実戦で羽生九段は4分で▲5八銀(銀合い図)と打った。何故、4分で指したのだろう?
 森内九段は6分の考慮で△3八金。
 ……羽生九段、15分考えて投了…………


 投了図以降の変化。
①▲3八同玉△5八龍▲4八桂△4七銀▲2七玉△3六金(銀合い図2)。

 4七に打った銀と利いていて▲1六玉と逃げることになるが、△1五歩(銀合い図3)以下詰み。
②▲4七玉△3六金▲5六玉△4五銀(銀合い図4)。(▲5六玉では▲3八玉△5八龍▲4八飛とすれば詰みは逃れられるが、以下駒をボロボロ取られて絶望的な局面になる)

 △4五銀が巧手で、以下▲4五同玉△6五龍▲3四玉△3三香(銀合い図5)▲同角成△同金で詰み。(▲4五同玉△6五龍に▲5五銀と合駒しても、△4四香▲3四玉△3三金で詰む)

 羽生九段は第1図の直前の△6八飛打に対して、51分考えて▲6八同金と指している。おそらく、この時に金合いしても詰まないことは読み切っていたが、銀合いしても大丈夫と読んだのではないだろうか?
 投了後のあの悲痛な表情は、歩詰めを読み切っていた金合いをしなかったことの後悔と、銀合い後の読み抜け(△4五銀をうっかりしたのでは?)を恥じたのだろう。

 この記事を書くに当たって金合いの変化を検証したが、《「何やってんだよぉ~」というレベルではなかった》ことを強く言いたい。
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2023年度 A級順位戦 最終局(結果)

2024-03-01 09:57:25 | 将棋
【A級順位戦 最終成績】(成績横の順位は今期A級ランキング)
豊島九段 7勝2敗(3位)○稲葉 ○佐々木○渡辺 ○永瀬 ○佐藤 ○中村 ●広瀬 ●斎藤 ○菅井
永瀬九段 6勝3敗(4位)●菅井 ○佐藤 ○斎藤 ●豊島 ○広瀬 ○渡辺 ●稲葉 ○佐々木○中村
渡辺九段 5勝4敗(1位)●佐々木○稲葉 ●豊島 ○佐藤 ○斎藤 ●永瀬 ○菅井 ●中村 ○広瀬
菅井八段 5勝4敗(6位)○永瀬 ○中村 ●稲葉 ○広瀬 ○佐々木○斎藤 ●渡辺 ●佐藤 ●豊島
稲葉八段 4勝5敗(7位)●豊島 ●渡辺 ○菅井 ●斎藤 ○中村 ●佐々木○永瀬 ●広瀬 ○佐藤
佐藤天九段4勝5敗(8位)○斎藤 ●永瀬 ●中村 ●渡辺 ●豊島 ○広瀬 ○佐々木○菅井 ●稲葉
佐々木八段4勝5敗(9位)○渡辺 ●豊島 ○広瀬 ●中村 ●菅井 ○稲葉 ●佐藤 ●永瀬 ○斎藤
中村太八段4勝5敗(10位)●広瀬 ●菅井 ○佐藤 ○佐々木●稲葉 ●豊島 ○斎藤 ○渡辺 ●永瀬
広瀬九段 3勝6敗(2位)○中村 ●斎藤 ●佐々木●菅井 ●永瀬 ●佐藤 ○豊島 ○稲葉 ●渡辺
斎藤八段 3勝6敗(5位)●佐藤 ○広瀬 ●永瀬 ○稲葉 ●渡辺 ●菅井 ●中村 ○豊島 ●佐々木


 午後9時ぐらいまでは、5局とも拮抗した戦いが続いた。(豊島-菅井戦は菅井優勢で進んでいたが、この時刻には互角になっていた)
 最初に、形勢が傾いたのは斎藤-佐々木戦。斎藤八段は敗れると即降級だ。いきなり形勢に差がついた感じだ。佐々木玉は不安定だったが、中段玉を馬と角を駆使して踏ん張り、先手の玉頭への強襲が炸裂しそうだ。
 10時過ぎ、豊島九段の玉が5筋方面に逃れている。菅井八段がやり損ねた感がある。
 永瀬-中村戦は、やや有利だった永瀬九段が優勢を拡大しつつあったが、永瀬九段も誤り、互角近くに戻ることもあるが、中村八段は残り時間が少なく、正着を続けるのが難しく、永瀬が再び優勢に。
 渡辺-広瀬戦は、渡辺玉に襲い掛かった角金銀桂が空振りし、渡辺九段が優勢。(広瀬九段は敗れると即降級)
 佐藤-稲葉戦は拮抗状態が続いていたが、形勢は稲葉に傾き始めた。

 23時13分、菅井八段投了。豊島九段が挑戦権獲得
 23時19分、中村太八段投了。この時点で残留は確定していない。広瀬と稲葉の両者が勝つと降級する。
 23時20分、斎藤八段投了。斎藤八段の降級が決定した。佐々木八段の残留が確定。
 23時24分、佐藤天九段投了。佐藤九段は中村八段敗れた時点で残留が確定していた。勝利した稲葉八段も残留確定。この時点で、降級の可能性があるのは、広瀬九段と中村八段。
 23時36分、広瀬九段投了。広瀬九段、降級

菅井 竜也八段(5勝4敗)●-○豊島 将之九段(7勝2敗)
永瀬 拓矢九段(6勝3敗)○-●中村 太地八段(4勝5敗)
斎藤 慎太郎八段(3勝6敗)●-○佐々木 勇気八段(4勝5敗)
稲葉 陽八段(4勝5敗)○-●佐藤 天彦九段(4勝5敗)
渡辺 明九段(5勝4敗)○-●広瀬 章人九段(3勝6敗)


 降級は広瀬九段と斎藤八段。上位安定勢力と考えていた両棋士の降級は意外。
 今期(2023年度)前半(←順位戦だけでなく)の不調が響いた。
 菅井八段は、王将戦での敗戦の痛手が大きかった気がする。
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