豊昇龍優勝!
場所中に横綱・照ノ富士が引退、大関・琴桜は不振で5勝10敗の負け越しと上位陣が堅調ではなかったが、再入幕の金峰山(12勝3敗)、サラブレット王鵬(“大鵬の孫”という肩書は本人は煩わしいかも)、復調の元大関・霧島(11勝4敗)、新入幕優勝当時に近くまで戻してきた尊富士(10勝5敗)、“伝え反り”などとにかく面白い宇良(7勝8敗)、突きの威力が戻ってきて関脇・大栄翔(11勝4敗)、くせ者?小結・阿炎(7勝8敗)、翔猿(7勝8敗)、40歳勝ち越しの鉄人・玉鷲(9勝6敗)、怪童?・伯桜鵬(10勝5敗)、強い時は無茶苦茶強い元大関・正代(6勝9敗)、突進力の豪ノ山(8勝7敗)などが土俵で乱舞し、初場所は面白かった!
優勝した豊昇龍は、9日目までに平幕に3敗を喫し、6勝3敗で横綱昇進は厳しくなった。しかし、師匠の「楽しく取れ」という助言に、心を立て直し、勝ち続けた。
強かった。
霧島戦……実力者霧島に対し攻め続ける。それを凌ごうとする霧島に何もさせずに寄り切った。
翔猿戦……上手をつかむと同時に引き付け、くせ者・翔猿を一気に土俵の外に運んだ。決まり手は“寄り倒し”だが、“寄り飛ばし”と言った方がよいかも(そんな決まり手はない?)
若隆景戦…厳しい突きに、若隆景もなすすべがなく、突き出された。
隆の勝戦…激しい突き合いの中、隆の勝を土俵際に追い詰めるが、突き切れずに反撃にあい、逆に土俵際に追い詰められる。そこで、隆の勝の突く手の上腕部(脇の付近)に手をあてがい、突きあげるようにして隆の勝の突進ベクトルをそらす。タイミングと豊昇龍の腕力が合致し、隆の勝は土俵の外に投げ飛ばされる。決まり手は“突き落とし”だが、“突き放り投げ”。
熱海富士戦…突きと投げを駆使して熱海富士を攻め続け、決め所と寄るが、熱海富士に抱えられた腕を決められ振り回され、土俵外に。巨漢の熱海富士に腕を決められての小手投げを堪えるのは難しかった。
豪ノ山戦…豪ノ山の突きをしっかり受け止め、豪ノ山の右半身に身体を寄せ、そのまま土俵の外に運ぶ。
王鵬戦……初日から6戦全勝の王鵬、この日も持ち前の突き押しで攻めるが、突きの力で豊昇龍が上回り、王鵬は反ってその力を逸らそうとするが、それに乗じて豊昇龍は、王鵬の横、更に後ろに回り込み、土俵の外まで運ぶ。決まり手は“送り倒し”。王鵬を圧倒した。
正代戦……豊昇龍の厳しい突き押しに正代は後退するが、豊昇龍の突く左腕の脇付近を正代が右手で押し上げ跳ね上げる。それを起点に正代が反撃、土俵際で何とか回り込もうとする豊昇龍に、追撃を緩めず押し倒した。
この一番は、立ち合い前の豊昇龍の気合が入りすぎで、《元大関の正代など、何するものぞ!》という闘志が満々と溢れていた。それを正代を察知、表情こそあまり変化しなかったが、《何だこの野郎》という怒気が漏れていた。こういう時の正代は無茶苦茶強い。実際、無茶苦茶強かった。
平戸海……突き押し正統派の平戸海、この一番も低く頭からぶつかる。これに対し、豊昇龍も同じく低く辺り、突きあげる。さらに、二の手で押し上げようとした瞬間、平戸海がその手を手繰るようにして、いなしながら突き落とす。これがタイミングよく決まり、豊昇龍は思わず土俵に手を突いてしまった。前日の敗戦で、身体(動き)が硬くなったのかもしれない。
大栄翔戦……突き押しが強力な大栄翔だが、突こうとする気持ちが強すぎて、下半身が伴わず、相手の叩きにばったり落ちることが多い。この日の一番はその典型で、このふたりの対戦はこのパターンが多い。
千代翔馬戦…この日は張り差し。上手を取って、千代相馬を振り回し続ける。千代翔馬は、最後はこらえきれずに腰から落ちた(尻もち)
金峰山戦…この日まで10勝1敗と単独トップの金峰山、強烈な突き上げで豊昇龍に挑む。豊昇龍も右で突き上げるように受け止める。二に矢の突きを繰り出そうとするが、足が伴わず前のめりに。それを見た豊昇龍が叩くと、金峰山は土俵にバッタリ手を突いた。
大の里戦…立ち合いは互角。次の押しは大の里が勝り、もろ差しになりながら豊昇龍を押す。《これは大の里の勝ちか》と思ったが(大の里もそう思ったかも)、喜んで?そのまま寄った瞬間、豊昇龍は左足を引いて身体を開きながら首投げ!これが綺麗に決まり、豊昇龍の勝利。首投げと同時に、柔道の払い腰のように足で大の里の身体を跳ね上げたのも勝因。
尊富士戦…張り差しから素早くもろ差しに。両まわしを掴むと、一気に土俵外まで電車道で寄り切る
琴桜戦…互角の立ち合い。やや押され気味の豊昇龍が強引な下手投げで残される。豊昇龍も強引と判断したのか深追いの投げは打たず、投げを堪える際、琴桜が下手を放したのに乗じ、もろ差しになり、そこから一気に寄り切った。
【優勝決定戦(巴戦)】
金峰山戦…張り差しでまわしを取ろうとした。下手しか取れなかったが、すぐさま下手投げ。そこから金峰山に身体を寄せて寄り、一気に寄り切った。
王鵬戦……低く立ち合い、ぶつかり具合は互角以上。そこから、少し腰が落ちかけたが、立て直して四つ身で寄る。寄り切れなかったが、その間に上手を掴む。王鵬も踏ん張り、土俵中央で右腕で絞り、豊昇龍にした手を取らせない。しばらく、動きは止まったが、豊昇龍は肩透かし(実況では“出し投げ”)を放ち、体勢を崩させ、渾身の寄り身。王鵬も堪えるが、豊昇龍は右腕で応報の身体を起こしながらさらに寄るり、ついに、投げつけるような感じで、寄り倒した。
強かった。場所を通して、常に攻めの相撲を貫いた。
まわしを掴めばぶん投げる。あるいは寄る(押す)。
まわしを取れば強い。でも、取らなくてもそれなりに強い。反射神経、腕力が凄い。足腰も強い。
動きながら勝機をつかむのは、白鵬や朝青龍に似ているが、千代の富士に一番近いかも。
横綱昇進は?
【NHK NEWS WEB より】
横綱審議委員会は日本相撲協会から豊昇龍の横綱昇進の諮問を受けて27日夕方から東京・両国の国技館で横綱に推薦するかどうか議論します。
横綱審議委員会は横綱に推薦する条件として、大関で2場所連続の優勝を原則とし、これに準ずる成績をあげた力士を推薦する場合は、出席した委員の3分の2以上の決議が必要と内規で定めています。
一般報道では「大関豊昇龍の横綱昇進がこの日、確実な状況」とか、「日本相撲協会の審判部は豊昇龍を横綱に昇進させる方針を決定。27日の横綱審議委員会の決議を経て推薦が決まれば、29日に正式に新横綱が誕生する」とか報じられているが、“諮問”なので、《豊昇龍を横綱に昇進させるのは妥当か?》と横綱審議委員会に意見を尋ね求めるだけなのだが、実際は《相撲協会が横綱昇進を決めて、横綱審議委員会が同意(確認)する》ような感じなのだろう。
で、問題は《豊昇龍に昇進する資格(成績)があるか?》だ。
私見では、資格(成績)は昇進に値するものだと思う。(ギリギリだけど)
『大関で2場所連続の優勝を原則とし、これに準ずる成績をあげた力士を推薦する場合は、出席した委員の3分の2以上の決議が必要と内規』に関しては、、先場所は準優勝(優勝に準じている)、今場所は優勝なので、“推薦”条件はクリアしている。マイナス材料は先々場所が8勝7敗であることだが、推薦条件には直接関係ない。
推薦(諮問)する条件は満たしているので、あとは《出席した横綱審議委員の3分の2以上の決議(同意)》が得られるかだが、照ノ富士が引退し、横綱不在となってしまうので、同意は得られるのではないだろうか。そもそも、横綱昇進の諮問で否決されることはほとんどなかったはずだ。(なので、報道の推薦(諮問)を決定した段階で、“横綱昇進、確実”とするのは妥当なのだろう)
まあ、今場所の取り口は非常に評価できるし、千秋楽の結びの一番、優勝決定戦の2戦、ほぼ連チャン状態での3連勝は強烈だった。
更に、今後も強くなりそうだ。
豊昇龍の横綱昇進は賛成だ。
ただし、甘い前例を作るのは今後の横綱昇進の基準が甘くなるので、豊昇龍の昇進させた理由を特記すべきだ。
ちなみに、当ブログでは「横綱昇進の甘い基準」(2017年1月23日記事)という記事を書いている。(手前みそだが、詳細に書いていて、感心した)
場所中に横綱・照ノ富士が引退、大関・琴桜は不振で5勝10敗の負け越しと上位陣が堅調ではなかったが、再入幕の金峰山(12勝3敗)、サラブレット王鵬(“大鵬の孫”という肩書は本人は煩わしいかも)、復調の元大関・霧島(11勝4敗)、新入幕優勝当時に近くまで戻してきた尊富士(10勝5敗)、“伝え反り”などとにかく面白い宇良(7勝8敗)、突きの威力が戻ってきて関脇・大栄翔(11勝4敗)、くせ者?小結・阿炎(7勝8敗)、翔猿(7勝8敗)、40歳勝ち越しの鉄人・玉鷲(9勝6敗)、怪童?・伯桜鵬(10勝5敗)、強い時は無茶苦茶強い元大関・正代(6勝9敗)、突進力の豪ノ山(8勝7敗)などが土俵で乱舞し、初場所は面白かった!
優勝した豊昇龍は、9日目までに平幕に3敗を喫し、6勝3敗で横綱昇進は厳しくなった。しかし、師匠の「楽しく取れ」という助言に、心を立て直し、勝ち続けた。
強かった。
霧島戦……実力者霧島に対し攻め続ける。それを凌ごうとする霧島に何もさせずに寄り切った。
翔猿戦……上手をつかむと同時に引き付け、くせ者・翔猿を一気に土俵の外に運んだ。決まり手は“寄り倒し”だが、“寄り飛ばし”と言った方がよいかも(そんな決まり手はない?)
若隆景戦…厳しい突きに、若隆景もなすすべがなく、突き出された。
隆の勝戦…激しい突き合いの中、隆の勝を土俵際に追い詰めるが、突き切れずに反撃にあい、逆に土俵際に追い詰められる。そこで、隆の勝の突く手の上腕部(脇の付近)に手をあてがい、突きあげるようにして隆の勝の突進ベクトルをそらす。タイミングと豊昇龍の腕力が合致し、隆の勝は土俵の外に投げ飛ばされる。決まり手は“突き落とし”だが、“突き放り投げ”。
熱海富士戦…突きと投げを駆使して熱海富士を攻め続け、決め所と寄るが、熱海富士に抱えられた腕を決められ振り回され、土俵外に。巨漢の熱海富士に腕を決められての小手投げを堪えるのは難しかった。
豪ノ山戦…豪ノ山の突きをしっかり受け止め、豪ノ山の右半身に身体を寄せ、そのまま土俵の外に運ぶ。
王鵬戦……初日から6戦全勝の王鵬、この日も持ち前の突き押しで攻めるが、突きの力で豊昇龍が上回り、王鵬は反ってその力を逸らそうとするが、それに乗じて豊昇龍は、王鵬の横、更に後ろに回り込み、土俵の外まで運ぶ。決まり手は“送り倒し”。王鵬を圧倒した。
正代戦……豊昇龍の厳しい突き押しに正代は後退するが、豊昇龍の突く左腕の脇付近を正代が右手で押し上げ跳ね上げる。それを起点に正代が反撃、土俵際で何とか回り込もうとする豊昇龍に、追撃を緩めず押し倒した。
この一番は、立ち合い前の豊昇龍の気合が入りすぎで、《元大関の正代など、何するものぞ!》という闘志が満々と溢れていた。それを正代を察知、表情こそあまり変化しなかったが、《何だこの野郎》という怒気が漏れていた。こういう時の正代は無茶苦茶強い。実際、無茶苦茶強かった。
平戸海……突き押し正統派の平戸海、この一番も低く頭からぶつかる。これに対し、豊昇龍も同じく低く辺り、突きあげる。さらに、二の手で押し上げようとした瞬間、平戸海がその手を手繰るようにして、いなしながら突き落とす。これがタイミングよく決まり、豊昇龍は思わず土俵に手を突いてしまった。前日の敗戦で、身体(動き)が硬くなったのかもしれない。
大栄翔戦……突き押しが強力な大栄翔だが、突こうとする気持ちが強すぎて、下半身が伴わず、相手の叩きにばったり落ちることが多い。この日の一番はその典型で、このふたりの対戦はこのパターンが多い。
千代翔馬戦…この日は張り差し。上手を取って、千代相馬を振り回し続ける。千代翔馬は、最後はこらえきれずに腰から落ちた(尻もち)
金峰山戦…この日まで10勝1敗と単独トップの金峰山、強烈な突き上げで豊昇龍に挑む。豊昇龍も右で突き上げるように受け止める。二に矢の突きを繰り出そうとするが、足が伴わず前のめりに。それを見た豊昇龍が叩くと、金峰山は土俵にバッタリ手を突いた。
大の里戦…立ち合いは互角。次の押しは大の里が勝り、もろ差しになりながら豊昇龍を押す。《これは大の里の勝ちか》と思ったが(大の里もそう思ったかも)、喜んで?そのまま寄った瞬間、豊昇龍は左足を引いて身体を開きながら首投げ!これが綺麗に決まり、豊昇龍の勝利。首投げと同時に、柔道の払い腰のように足で大の里の身体を跳ね上げたのも勝因。
尊富士戦…張り差しから素早くもろ差しに。両まわしを掴むと、一気に土俵外まで電車道で寄り切る
琴桜戦…互角の立ち合い。やや押され気味の豊昇龍が強引な下手投げで残される。豊昇龍も強引と判断したのか深追いの投げは打たず、投げを堪える際、琴桜が下手を放したのに乗じ、もろ差しになり、そこから一気に寄り切った。
【優勝決定戦(巴戦)】
金峰山戦…張り差しでまわしを取ろうとした。下手しか取れなかったが、すぐさま下手投げ。そこから金峰山に身体を寄せて寄り、一気に寄り切った。
王鵬戦……低く立ち合い、ぶつかり具合は互角以上。そこから、少し腰が落ちかけたが、立て直して四つ身で寄る。寄り切れなかったが、その間に上手を掴む。王鵬も踏ん張り、土俵中央で右腕で絞り、豊昇龍にした手を取らせない。しばらく、動きは止まったが、豊昇龍は肩透かし(実況では“出し投げ”)を放ち、体勢を崩させ、渾身の寄り身。王鵬も堪えるが、豊昇龍は右腕で応報の身体を起こしながらさらに寄るり、ついに、投げつけるような感じで、寄り倒した。
強かった。場所を通して、常に攻めの相撲を貫いた。
まわしを掴めばぶん投げる。あるいは寄る(押す)。
まわしを取れば強い。でも、取らなくてもそれなりに強い。反射神経、腕力が凄い。足腰も強い。
動きながら勝機をつかむのは、白鵬や朝青龍に似ているが、千代の富士に一番近いかも。
横綱昇進は?
【NHK NEWS WEB より】
横綱審議委員会は日本相撲協会から豊昇龍の横綱昇進の諮問を受けて27日夕方から東京・両国の国技館で横綱に推薦するかどうか議論します。
横綱審議委員会は横綱に推薦する条件として、大関で2場所連続の優勝を原則とし、これに準ずる成績をあげた力士を推薦する場合は、出席した委員の3分の2以上の決議が必要と内規で定めています。
一般報道では「大関豊昇龍の横綱昇進がこの日、確実な状況」とか、「日本相撲協会の審判部は豊昇龍を横綱に昇進させる方針を決定。27日の横綱審議委員会の決議を経て推薦が決まれば、29日に正式に新横綱が誕生する」とか報じられているが、“諮問”なので、《豊昇龍を横綱に昇進させるのは妥当か?》と横綱審議委員会に意見を尋ね求めるだけなのだが、実際は《相撲協会が横綱昇進を決めて、横綱審議委員会が同意(確認)する》ような感じなのだろう。
で、問題は《豊昇龍に昇進する資格(成績)があるか?》だ。
私見では、資格(成績)は昇進に値するものだと思う。(ギリギリだけど)
『大関で2場所連続の優勝を原則とし、これに準ずる成績をあげた力士を推薦する場合は、出席した委員の3分の2以上の決議が必要と内規』に関しては、、先場所は準優勝(優勝に準じている)、今場所は優勝なので、“推薦”条件はクリアしている。マイナス材料は先々場所が8勝7敗であることだが、推薦条件には直接関係ない。
推薦(諮問)する条件は満たしているので、あとは《出席した横綱審議委員の3分の2以上の決議(同意)》が得られるかだが、照ノ富士が引退し、横綱不在となってしまうので、同意は得られるのではないだろうか。そもそも、横綱昇進の諮問で否決されることはほとんどなかったはずだ。(なので、報道の推薦(諮問)を決定した段階で、“横綱昇進、確実”とするのは妥当なのだろう)
まあ、今場所の取り口は非常に評価できるし、千秋楽の結びの一番、優勝決定戦の2戦、ほぼ連チャン状態での3連勝は強烈だった。
更に、今後も強くなりそうだ。
豊昇龍の横綱昇進は賛成だ。
ただし、甘い前例を作るのは今後の横綱昇進の基準が甘くなるので、豊昇龍の昇進させた理由を特記すべきだ。
ちなみに、当ブログでは「横綱昇進の甘い基準」(2017年1月23日記事)という記事を書いている。(手前みそだが、詳細に書いていて、感心した)
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