英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

「何やってんだよぉ~」…その後

2024-03-02 10:51:34 | 将棋
「何やってんだよぉ~」の“その後”です。(「その2」ですが)


 第1図が問題の局面。合駒の選択肢は香、桂、銀、金、飛の5つ。
 合駒選択の考え方は、その局面によって異なり、難しい。
 金合いは先手を取る意味もあり有力。後手玉には詰めろが掛かっており、金1枚使っても詰めろは消えないのも魅力。ただし、△3八金▲同玉△5八龍などで取られてしまうことがマイナス。
 その意味では、安い駒の香を打ちたくもなる。歩がベストだが、あいにく二歩。香は後の△5七龍を防いでおり、桂は後に4六に駒を打たれる手を防いでいる。飛合いは後手玉を詰ますのに戦力低下になり、飛車を取られてしまう危険性もある。ただし、場合によっては、玉が右辺下段に逃げた時、防御になる可能性もある。
 銀合いも有力そうだ。守備力もそれなりにあり、持ち駒に銀が3枚あるので1枚消費しても影響なさそうだ。

 ……正解は、金、または香。桂合は優勢から互角になり、あまりよくない。飛と銀は敗勢になる。
 羽生九段は4分で銀をつまんだ……形勢を表す評価値の曲線は、東尋坊の断崖絶壁ごとく、急降下した……
 上記の△3八金▲同玉△5八龍の筋で、後手が銀を手に入れると先手玉は詰んでしまうのだ(厳密には、詰まない逃げ方があるが、絶望的な局面になる)
 評価値を知っている観戦者は、《銀合いは負けになる》と知っているので「何やってんだよぉ~」となるが、対局者が正着を指すのは非常に難しい局面だった。この記事を書くに当たり調べたが、相当難しい選択肢が多かったのも不運だった。それでも、32分残していたのに、4分で指してしまったのは残念だ。
 羽生九段も着手した暫く後、銀合いの非を悟っていたのが伺えたし、局後も悲痛な感情を隠せなかった。

 (香合でも良いようですが、この記事では金合いに絞って述べます)

 金合いに対しては、①△3八金と②△4七香がある
①△3八金
 第1図より△3八金▲同玉△5八龍と進んだ時、3六に利かせて▲4八桂と合駒をするのが正着。
 この時、㋐△4七金と㋑△3六香がある
㋐△4七金
 △4七金には▲2七玉。

 この時、もし4七に打った駒が銀ならば、△3六金▲同桂△同銀成と迫ることができる。この違いが大きい。この差は、最初の5八への合駒が金合いか銀合いで生じる。▲5八銀が大悪手である所以だ。
 とは言っても、金合いしても“金合い図2”から△3六金▲同桂△3八龍▲2六玉△3六龍と迫る手があり、気持ち悪い。

 だが、図から▲1五玉(金合い図4)で大丈夫。後手の1六歩がなければ簡単に詰むのだが…。

▲4八桂合に対して、㋑△3六香も有力。

 △3六香には⒜▲3七歩△2八金▲同玉△4八龍と迫る手が怖い。
 この手には▲3八飛が好守!
 以下△1七金▲2九玉で逃れている。(▲1九玉と逃げると△1八金▲同飛△2七桂以下詰み)

 また▲3八飛(金合い図6)の時

 △1八金も▲2七玉で大丈夫(▲1八同玉は詰む)
 ”金合い図5”の△3六香に対して⒝▲2七玉とかわした方が簡明かもしれない。
 以下△4七龍▲2六玉△1七龍▲1五玉(金合い図8)と追い込まれて絶体絶命のように思われる。

 この局面、後手の持駒に金が2枚あるが、先手玉に詰みはない。歩が打てないのが痛い。持駒に香か桂などもう一枚あれば詰むのだが…

 と言う訳で、▲5八金(金合い図)に①△3八金は詰まない
 では、②△4七香はどうだろうか?
②△4七香(△4五香と離して打つ手には▲4六歩で大丈夫)

 図以下▲4七同玉△3六金▲4八玉△4七金打(金合い図10)と迫られるが、

 ▲3九玉と引き、△3八金▲同玉△5八龍▲4八歩と凌ぐ(実は“金合い図10”の△4七金打ですぐに△3八金と打っても同じになる)
 ここで⑴△2七金打(金合い図11)

▲3九玉でも▲2九玉でも詰まない。
 また、⑵△4七金打も▲2九玉△4九龍▲3九香△3八金(金合い図12)

に、▲1八玉で詰まない。

 と言う訳で、△6八同飛成(第1図)に金合いで詰まない。

 実戦で羽生九段は4分で▲5八銀(銀合い図)と打った。何故、4分で指したのだろう?
 森内九段は6分の考慮で△3八金。
 ……羽生九段、15分考えて投了…………


 投了図以降の変化。
①▲3八同玉△5八龍▲4八桂△4七銀▲2七玉△3六金(銀合い図2)。

 4七に打った銀と利いていて▲1六玉と逃げることになるが、△1五歩(銀合い図3)以下詰み。
②▲4七玉△3六金▲5六玉△4五銀(銀合い図4)。(▲5六玉では▲3八玉△5八龍▲4八飛とすれば詰みは逃れられるが、以下駒をボロボロ取られて絶望的な局面になる)

 △4五銀が巧手で、以下▲4五同玉△6五龍▲3四玉△3三香(銀合い図5)▲同角成△同金で詰み。(▲4五同玉△6五龍に▲5五銀と合駒しても、△4四香▲3四玉△3三金で詰む)

 羽生九段は第1図の直前の△6八飛打に対して、51分考えて▲6八同金と指している。おそらく、この時に金合いしても詰まないことは読み切っていたが、銀合いしても大丈夫と読んだのではないだろうか?
 投了後のあの悲痛な表情は、歩詰めを読み切っていた金合いをしなかったことの後悔と、銀合い後の読み抜け(△4五銀をうっかりしたのでは?)を恥じたのだろう。

 この記事を書くに当たって金合いの変化を検証したが、《「何やってんだよぉ~」というレベルではなかった》ことを強く言いたい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2023年度 A級順位戦 最終局(結果)

2024-03-01 09:57:25 | 将棋
【A級順位戦 最終成績】(成績横の順位は今期A級ランキング)
豊島九段 7勝2敗(3位)○稲葉 ○佐々木○渡辺 ○永瀬 ○佐藤 ○中村 ●広瀬 ●斎藤 ○菅井
永瀬九段 6勝3敗(4位)●菅井 ○佐藤 ○斎藤 ●豊島 ○広瀬 ○渡辺 ●稲葉 ○佐々木○中村
渡辺九段 5勝4敗(1位)●佐々木○稲葉 ●豊島 ○佐藤 ○斎藤 ●永瀬 ○菅井 ●中村 ○広瀬
菅井八段 5勝4敗(6位)○永瀬 ○中村 ●稲葉 ○広瀬 ○佐々木○斎藤 ●渡辺 ●佐藤 ●豊島
稲葉八段 4勝5敗(7位)●豊島 ●渡辺 ○菅井 ●斎藤 ○中村 ●佐々木○永瀬 ●広瀬 ○佐藤
佐藤天九段4勝5敗(8位)○斎藤 ●永瀬 ●中村 ●渡辺 ●豊島 ○広瀬 ○佐々木○菅井 ●稲葉
佐々木八段4勝5敗(9位)○渡辺 ●豊島 ○広瀬 ●中村 ●菅井 ○稲葉 ●佐藤 ●永瀬 ○斎藤
中村太八段4勝5敗(10位)●広瀬 ●菅井 ○佐藤 ○佐々木●稲葉 ●豊島 ○斎藤 ○渡辺 ●永瀬
広瀬九段 3勝6敗(2位)○中村 ●斎藤 ●佐々木●菅井 ●永瀬 ●佐藤 ○豊島 ○稲葉 ●渡辺
斎藤八段 3勝6敗(5位)●佐藤 ○広瀬 ●永瀬 ○稲葉 ●渡辺 ●菅井 ●中村 ○豊島 ●佐々木


 午後9時ぐらいまでは、5局とも拮抗した戦いが続いた。(豊島-菅井戦は菅井優勢で進んでいたが、この時刻には互角になっていた)
 最初に、形勢が傾いたのは斎藤-佐々木戦。斎藤八段は敗れると即降級だ。いきなり形勢に差がついた感じだ。佐々木玉は不安定だったが、中段玉を馬と角を駆使して踏ん張り、先手の玉頭への強襲が炸裂しそうだ。
 10時過ぎ、豊島九段の玉が5筋方面に逃れている。菅井八段がやり損ねた感がある。
 永瀬-中村戦は、やや有利だった永瀬九段が優勢を拡大しつつあったが、永瀬九段も誤り、互角近くに戻ることもあるが、中村八段は残り時間が少なく、正着を続けるのが難しく、永瀬が再び優勢に。
 渡辺-広瀬戦は、渡辺玉に襲い掛かった角金銀桂が空振りし、渡辺九段が優勢。(広瀬九段は敗れると即降級)
 佐藤-稲葉戦は拮抗状態が続いていたが、形勢は稲葉に傾き始めた。

 23時13分、菅井八段投了。豊島九段が挑戦権獲得
 23時19分、中村太八段投了。この時点で残留は確定していない。広瀬と稲葉の両者が勝つと降級する。
 23時20分、斎藤八段投了。斎藤八段の降級が決定した。佐々木八段の残留が確定。
 23時24分、佐藤天九段投了。佐藤九段は中村八段敗れた時点で残留が確定していた。勝利した稲葉八段も残留確定。この時点で、降級の可能性があるのは、広瀬九段と中村八段。
 23時36分、広瀬九段投了。広瀬九段、降級

菅井 竜也八段(5勝4敗)●-○豊島 将之九段(7勝2敗)
永瀬 拓矢九段(6勝3敗)○-●中村 太地八段(4勝5敗)
斎藤 慎太郎八段(3勝6敗)●-○佐々木 勇気八段(4勝5敗)
稲葉 陽八段(4勝5敗)○-●佐藤 天彦九段(4勝5敗)
渡辺 明九段(5勝4敗)○-●広瀬 章人九段(3勝6敗)


 降級は広瀬九段と斎藤八段。上位安定勢力と考えていた両棋士の降級は意外。
 今期(2023年度)前半(←順位戦だけでなく)の不調が響いた。
 菅井八段は、王将戦での敗戦の痛手が大きかった気がする。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2023年度 A級順位戦 最終局を前に

2024-02-28 11:48:16 | 将棋
「嘆きの中村太地」「何やってんだよぉ」の続記事も書かねばならない?し、政治資金関連については書きたいことはたくさんあるので、新たに記事を書くのは避けたいのだが、最終局が迫っているので、まずこれを書かねばならない(笑)(自民党はダメだなあ……)

【8回戦終了時の成績】(成績横の順位は今期A級ランキング)
豊島九段 6勝2敗(3位)○稲葉 ○佐々木○渡辺 ○永瀬 ○佐藤 ○中村 ●広瀬 ●斎藤  菅井
永瀬九段 5勝3敗(4位)●菅井 ○佐藤 ○斎藤 ●豊島 ○広瀬 ○渡辺 ●稲葉 ○佐々木 中村
菅井八段 5勝3敗(6位)○永瀬 ○中村 ●稲葉 ○広瀬 ○佐々木○斎藤 ●渡辺 ●佐藤  豊島
渡辺九段 4勝4敗(1位)●佐々木○稲葉 ●豊島 ○佐藤 ○斎藤 ●永瀬 ○菅井 ●中村  広瀬
佐藤天九段4勝4敗(8位)○斎藤 ●永瀬 ●中村 ●渡辺 ●豊島 ○広瀬 ○佐々木○菅井  稲葉
中村太八段4勝4敗(10位)●広瀬 ●菅井 ○佐藤 ○佐々木●稲葉 ●豊島 ○斎藤 ○渡辺  永瀬
広瀬九段 3勝5敗(2位)○中村 ●斎藤 ●佐々木●菅井 ●永瀬 ●佐藤 ○豊島 ○稲葉  渡辺
斎藤八段 3勝5敗(5位)●佐藤 ○広瀬 ●永瀬 ○稲葉 ●渡辺 ●菅井 ●中村 ○豊島  佐々木
稲葉八段 3勝5敗(7位)●豊島 ●渡辺 ○菅井 ●斎藤 ○中村 ●佐々木○永瀬 ●広瀬  佐藤
佐々木八段3勝5敗(9位)○渡辺 ●豊島 ○広瀬 ●中村 ●菅井 ○稲葉 ●佐藤 ●永瀬  斎藤
右端の棋士名は最終局の対戦相手


 挑戦権争いは、全勝の豊島九段と1敗で追う菅井八段の争いと観られていたが、両者が連敗した為、永瀬九段にもチャンスが巡ってきた。現状は6勝2敗の豊島九段が、5勝3敗の永瀬九段と菅井八段より有利だが、最終局は豊島-菅井の直接対決。菅井八段も挑戦権は自力。永瀬九段は他力であるが、勝って結果を待ちたいところ。(先に豊島-菅井が終局する場合もあるが)
 ○豊島-菅井●、○永瀬-中村●の場合は三者が同星となり、順位下位の永瀬ー菅井戦勝者と豊島九段の決戦となる。

 残留争い大激戦(大混戦)
 上表の佐藤天九段~佐々木勇八段まで降級の可能性がある。下方ほど危険なのだが、稲葉八段までは自力残留。

(以下の説明では段位を省略します。ご了承ください)
佐藤天九段 4勝4敗(8位) (カッコ内の順位は今期の順位戦のランキングで、同星の場合、これが優先される)
 最終局を負けた場合、佐々木ー斎藤戦で佐々木が勝てば残留で、斎藤が勝った場合は中村と広瀬の両者が勝つと降級。
 勝ち負けを5割と仮定すれば
 降級確率は1/2×1/2×1/2×1/2=1/16……6.25%
 佐藤(本人)負け×斎藤勝ち×中村勝ち×広瀬勝ち

中村太八段 4勝4敗(10位)
 最終局を負けた場合、広瀬と稲葉の両者が勝つと降級。
 降級確率は1/2×1/2×1/2=1/8……12.5%
 中村(本人)負け×広瀬勝ち×稲葉勝ち

広瀬九段 3勝5敗(2位)
 最終局を負けた場合、稲葉が勝つと降級。
 降級確率は1/2×1/2=1/4……25%
 広瀬(本人)負け×稲葉勝ち

斎藤八段 3勝5敗(5位)
 最終局に勝てば残留、負けると他の結果に関係なく降級
 降級確率は1/2……50%

稲葉八段 3勝5敗(7位)
 最終局に勝てば残留、負けると他の結果に関係なく降級
 降級確率は1/2……50%
 稲葉八段は現段階で9位で本来なら自力ではないのだが、最終局で稲葉(本人)ー佐藤戦があるので自力。
 稲葉(本人)ー佐藤戦で稲葉(本人)が勝つと、両者は4勝5敗で並ぶが稲葉7位、佐藤8位なので稲葉が上位となる。
 さらに、佐々木八段3勝5敗(9位)に対しては、佐々木が勝っても4勝5敗(9位)で稲葉の4勝5敗(7位)を上回れない。(←稲葉が最終局を勝てば)

佐々木八段 3勝5敗(9位)
 最終局(対斎藤)に負けると他の結果に関係なく降級。
 最終局に勝った場合は、3勝6敗の斎藤を上回る。
 あと一人を上回るには…中村(現在4勝4敗・10位)、広瀬(現3勝5敗・2位)、稲葉(現3勝5敗・7位)のうち一人が敗れれば残留。
 逆に、3人全員が勝つと降級となる。
 その確率は…1/2×1/2×1/2×1/2=1/16 佐々木(本人)負け×中村勝ち×広瀬勝ち×稲葉勝ち
 これに佐々木負けの確率1/2を加えれば、佐々木の降級確率となる
 降級確率は1/2+1/16=9/16……56.25%

まとめると、
佐藤天九段 6.25%、中村太八段 12.5%、広瀬九段 25%、斎藤八段 50%、稲葉八段 50%、佐々木八段 56.25%となる。
 斎藤八段vs佐々木八段戦は、降級決定戦になっている。

 しかし、あくまでも机上の計算。
 棋力、相性、精神力、体調、好不調もあり、そんな単純ではない。要は、盤上の勝負。
 勝てばよい。

 実際、佐藤天九段 、中村太八段 、広瀬九段 、斎藤八段 、稲葉八段 は自力残留、佐々木勇八段も勝てばほぼ残留(勝てば降級するのは1/8の確率)。

 全然、当てにならないが、最終局の私の予想は……
○豊島九段 6勝2敗(3位)vs 菅井八段 5勝3敗(6位)●
○永瀬九段 5勝3敗(4位)vs 中村太八段4勝4敗(10位)●
●渡辺九段 4勝4敗(1位)vs 広瀬九段 3勝5敗(2位)○
●佐藤天九段4勝4敗(8位)vs 稲葉八段 3勝5敗(7位)○
○斎藤八段 3勝5敗(5位)vs 佐々木八段3勝5敗(9位)●


予想最終成績は
豊島九段 7勝2敗(3位)
永瀬九段 6勝3敗(4位)
菅井八段 5勝4敗(6位)
渡辺九段 4勝5敗(1位)
広瀬九段 4勝5敗(2位)
斎藤八段 4勝5敗(5位)
稲葉八段 4勝5敗(7位)
佐藤天九段4勝5敗(8位)
中村太八段4勝5敗(10位)
佐々木八段3勝6敗(9位)

 豊島九段が挑戦権獲得、降級は中村太八段と佐々木八段となる……(あくまでも予想)
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「何やってんだよぉ~」

2024-02-26 19:22:31 | 将棋
「何やってんだよぉ~」








………………………………30分もあったのに……4分しか考えず……
………………………………香合、金合いでもよかったのに。桂合いでも少し不利になるくらいで済んだのに。
………………………………よりによって銀合して敗勢に転落(飛車合いも負け)。
森内九段の攻めを紙一重で受け切り、ようやく優勢を確立したと思ったのに。


今日は早く寝て、明日から頑張ろう(羽生九段に言っているのではなく、私に向けての言葉)
コメント (3)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

嘆きの中村太地……2023年度NHK杯将棋トーナメント 準々決勝 中村太地八段-羽生善治九段

2024-02-20 20:30:57 | 将棋
2023年度NHK杯将棋トーナメント 準々決勝 中村太地八段-羽生善治九段戦
 中村太地八段は、NHK杯戦に於いて、これまで思わしい戦績を挙げていないようだ。解説の谷川十七世名人も「意外なんですが、中村八段は初のベスト8進出なのではないでしょうか」と述べていた。中村八段も動画配信での解説の際、「初のベスト8で、相当、気合が入っていました」と述べていた。
 それはさておき、今期の中村八段は、1回戦で阿部光瑠七段、2回戦で広瀬八段(現九段)、3回戦で菅井八段を、激戦の末、降してきた。

 将棋は、先手の中村八段の角換わり志向に、羽生九段はそれを避けるような指し手を見せたが、結局、角換わり腰掛銀に落ち着いた。

 

 第1図は、後手が5二の玉を4二に寄せたところ。手待ちというか、間合いを計った手。よく出現する局面である。
 2019年に同戦型で、羽生九段が3連敗した記憶が残っている。
 ▲羽生九段-△屋敷九段(NHK杯)、▲広瀬竜王(当時)-△羽生九段(王将リーグ)、▲糸谷八段-△羽生九段(A級順位戦)。詳しくは、リンク記事をご参照ください。
「NHK杯戦など……羽生九段、先手番、後手番でワンツーパンチを食らい、4連敗……」(2019年11月4日記事)
「鬼門の戦型だなあ 2019A級順位戦 糸谷八段-羽生九段」(2019年12月4日記事)

 3局とも、第1図より▲4五桂と跳ね、△2二銀に▲7五歩△同歩と突き捨て▲5三桂成と仕掛けている。(▲5三桂成の前に、3筋や1筋の突き捨てを入れる実戦もある)

 以下、△5三同玉▲7四歩△4四歩▲4五歩△5五歩▲7三歩成△同金▲4六桂△5六歩▲5四桂△同玉と進んでいる。この仕掛けは最近は観ていない気がする(先手が避けているのだろうか?実戦的には後手を持ちたくないが)

 本局の中村九段は、▲4五桂△2二銀に▲3五歩と突く。この手を見て、谷川十七世名人は「少し前には、見かけた仕掛けですが」という解説をしていた。
 ▲3五歩に羽生九段は少考後、△同歩と応じる。
 ここで、▲6五歩!

 この手が、中村八段が温めていた新手!。
 NHK杯の準々決勝という晴れの舞台で、羽生九段相手に披露できる
……中村八段も心が躍ったのではないだろうか。
 羽生九段も「この仕掛けには驚いた。今まで1回も考えたことはなかった。指されてみると、先手の攻めがなかなかうるさくて、どう対処して良いのか分からなかったというようなことを感想戦で述べていた。

 この手に対して、△4四歩と桂を取りに行く手が考えられるが、以下▲6四歩△4五歩▲同銀(変化図1)で後手が困る。

 △4五同銀なら▲4五同歩でもよさそうだが、▲6三歩成△同金に▲7二角が痛い。
 「▲6四歩の取り込みが、桂1枚では釣り合わないほど大きい」(谷川解説)という。

 なので、▲6五歩は取るしかない。
①△6五同銀
 銀で取る手が第一感という人は少ないと思う。この手には▲同桂△同桂に▲6三銀が炸裂する(炸裂図)

 これを△同銀なら、▲7二角が決まる。
 よって、△6一金と辛抱するが、▲6六銀と一旦かわしておいて、先手優勢。先手の銀と桂が後手陣の急所に利いていて、次に▲6五銀と桂を取って▲3四桂もあり、後手陣は持たない。
②△6五同桂
 この手には、▲同銀△同歩▲3四桂がある。

 気持ちの良い両取りで、先手が良さそうだが、以下△3一玉▲2二桂成△同玉で、先に銀桂交換しているので、銀桂の損得はなく、先手は歩切れなので、意外といい勝負かも。実戦的には▲3四銀と嵩にかかられる手が見えるので、後手としては選択肢に入れにくいだろう。

 再掲載:新手図

③△6五同歩
 普通は歩で取るが、この後、いろいろ先手からの攻め筋が見える。羽生九段もかなり考えて、△6五同歩と応じた

「その2」へ続く。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2023年度 A級順位戦 8回戦終了

2024-02-01 18:21:06 | 将棋
【8回戦終了時の成績】(成績横の順位は今期A級ランキング)
豊島九段 6勝2敗(3位)○稲葉 ○佐々木○渡辺 ○永瀬 ○佐藤 ○中村 ●広瀬 ●斎藤 菅井(←1位)
永瀬九段 5勝3敗(4位)●菅井 ○佐藤 ○斎藤 ●豊島 ○広瀬 ○渡辺 ●稲葉 ○佐々木 中村(↑4位)
菅井八段 5勝3敗(6位)○永瀬 ○中村 ●稲葉 ○広瀬 ○佐々木○斎藤 ●渡辺 ●佐藤 豊島(↓2位)
渡辺九段 4勝4敗(1位)●佐々木○稲葉 ●豊島 ○佐藤 ○斎藤 ●永瀬 ○菅井 ●中村 広瀬(↓3位)
佐藤天九段4勝4敗(8位)○斎藤 ●永瀬 ●中村 ●渡辺 ●豊島 ○広瀬 ○佐々木○菅井 稲葉(↑6位)
中村太八段4勝4敗(10位)●広瀬 ●菅井 ○佐藤 ○佐々木●稲葉 ●豊島 ○斎藤 ○渡辺 永瀬(↑8位)
広瀬九段 3勝5敗(2位)○中村 ●斎藤 ●佐々木●菅井 ●永瀬 ●佐藤 ○豊島 ○稲葉 渡辺(↑9位)
斎藤八段 3勝5敗(5位)●佐藤 ○広瀬 ●永瀬 ○稲葉 ●渡辺 ●菅井 ●中村 ○豊島 佐々木(↑10)
稲葉八段 3勝5敗(7位)●豊島 ●渡辺 ○菅井 ●斎藤 ○中村 ●佐々木○永瀬 ●広瀬 佐藤(↓5位)
佐々木八段3勝5敗(9位)○渡辺 ●豊島 ○広瀬 ●中村 ●菅井 ○稲葉 ●佐藤 ●永瀬 斎藤(↓7位)
右端の順位は7回戦終了時の暫定順位


【8回戦】(赤字は予想が外れた対局)
●渡辺明九段-中村太地八段○
○広瀬章人九段-稲葉陽八段●
●豊島将之九段-斎藤慎太郎八段○
○永瀬拓矢九段-佐々木勇気八段●
●菅井竜也八段-佐藤天彦九段○

  ……全部的中しそうな時間帯もあったが、3つも外れた。懸賞商品は露と消えた……

 7回戦終了時点での暫定順位が5~7位の棋士が敗れ、8~10位の棋士が勝ったので、団子状態は解れない。
 “ほぐれない”どころか、“さらに密”と言った方が良いかもしれない
 〈3勝棋士4名、2勝棋士2名〉⇒〈4勝棋士3名、3勝棋士4名〉……ただし、4勝の最上位の渡辺九段は降級の可能性はない

菅井竜也八段-佐藤天彦九段
 初手から▲2六歩△3四歩▲7六歩△3二飛▲2二角成△同飛▲6五角△7四角(第1図)

 この局面、菅井八段は順位戦で2局経験しているらしい。(▲羽生九段ー△菅井八段、▲豊島九段ー△菅井八段)
 この2局は、1図から▲4三角成△5二金左▲3四馬△4七角成……と進んでいる。
 本局は1図より▲7四同角△同歩▲5五角△8二角(第2図)▲7七角△4二金▲2二角成(第3図)△同銀と進んだ。

 第2図で、一旦▲7七角と引いた後、△4二金に▲2二角成としたのは不思議な手順だが、▲7七角自体は前例の多い手順で、その直後の△4二金が珍しいそうだ。
 以下、指し手は省略するが、第4図、第5図と進む。

 第5図から、菅井八段が切り込んでいく。
 2八で総交換(角飛交換だけに留める選択もあった)し、飛車打ち~飛車合~交換~飛車打ち~飛車打ち返し、と進み第6図

 図の△5七銀では△5九同飛成▲同金△3九飛とする手もあったが、菅井八段はもっと過激だった。
 ただ、少し過激すぎたのか、少し攻めが細くなってしまった。


 第7図では△4八成桂と飛車を取りに行きたいが(▲7九飛なら△6八金)、かまわずの▲7四歩が厳しすぎる。
 そこで、△4四銀~△7五歩と手を戻した後、飛車に迫るが、

 と、巧く立ち回られて、余されてしまった。
 この後、幾ばくもなく投了。持ち時間を約3時間を残しての早い終局だった。

 この将棋、菅井八段が主導権を握っていたが、少し過激に行き過ぎて、やや不利に陥った。
 問題はその後の淡白な指し手。気になる負け方だった。



渡辺明九段-中村太地八段
 相掛かりの将棋から、先手の中村八段が7四の歩をかすめ取り、さらに、3四の歩も取る。
 もちろん、後手もむざむざ2歩損に甘んじるわけがなく、歩が取られる間に、どんどん銀をどんどん繰り出し、盤面を支配する。


 《歩得 対 手得》の戦いとなったが、先手の中村八段によると「7七角と3六飛の組み合わせがよくなかった」らしい。
 下図の少し前には、6八の玉を6九に引いて6八にスペースを作って、▲6八銀と守ったり、7七の角も8八に引いて敵銀の進出に備えるなどの辛抱を強いられた。

 図の局面は、▲5六同歩とすると△7六銀と銀の進出が可能となってしまう。かと言って、放置も出来ず、▲5六同歩と応じるしかなかった。
 その後、後手は飛車先を交換。先手は7七銀と専守態勢。(先手の角が隠居状態)


 先手の辛抱が続き、後手の渡辺九段は気分が良かったことだろう。
 ただし、第4図での評価値は後手の+300弱程度で、実感ほどは後手に形勢は振れていない。中村八段の辛抱が見事だったと言える。
 気分が良かった(←私の推測)渡辺九段、ここでの形勢を過大評価していたようだ。

 
 その因として、渡辺九段は第4図からの△4五銀を挙げている。この手では、△5二飛とするんだったと。
 AI評価値は、第5図の△3三桂のマイナス評価が大きかった。この△3三桂では△1三桂とこちらに跳ねるべきだったと。
 桂を端に跳ねてしまうと、当然、中央での働きは不可能。さらに、下手をすると端攻めを食らってしまう。それで、△1三桂を選択肢から外したのだ。

《なぜ、桂を当然と思われる3三に跳ねてはいけないのか?》
 おそらく……恐らくだが、桂で角筋を遮ってしまったので、桂を跳ねての飛車当たりに対して、▲2六飛が可能になったことが理由。
 △1三桂だったら▲2六飛に△4四角で、先手は飛車を引かざるを得ない。
 渡辺九段にとって不運だったのは、《△3三桂と角道を遮断しても、角は1三に出れば、活躍できる》こと。さらに、第4図で形勢の利はわずかと判断していれば、△3三桂▲2六飛の変化が思わしくないと読めたのではないだろうか。

 第6図では、成り込んだ銀が負担になっており、先手の角も働いてきており、先手が有利になっている。


 図の△5五歩は流石の最善手。
 4五での銀桂交換は甘んじて、先手の角を働かせない。形勢は利あらずと切り替えて、倒されないことを重視した。
 それが功を奏して、形勢を押し返した局面もあったが、徐々に、形勢は中村八段に傾いていった。
 終盤冴えなかったのは、4図~6図の釈然としない気持ちが影響したのかもしれない。

 一方の中村八段。
 序盤から中盤の辛抱。中盤以降の後手の攻め駒にプレッシャーを与え続け、押し返した強い受け手。
 終盤の的確さは見事だった。


再掲載【8回戦終了時の成績】(成績横の順位は今期A級ランキング)
豊島九段 6勝2敗(3位)○稲葉 ○佐々木○渡辺 ○永瀬 ○佐藤 ○中村 ●広瀬 ●斎藤 菅井(←1位)
永瀬九段 5勝3敗(4位)●菅井 ○佐藤 ○斎藤 ●豊島 ○広瀬 ○渡辺 ●稲葉 ○佐々木 中村(↑4位)
菅井八段 5勝3敗(6位)○永瀬 ○中村 ●稲葉 ○広瀬 ○佐々木○斎藤 ●渡辺 ●佐藤 豊島(↓2位)
渡辺九段 4勝4敗(1位)●佐々木○稲葉 ●豊島 ○佐藤 ○斎藤 ●永瀬 ○菅井 ●中村 広瀬(↓3位)
佐藤天九段4勝4敗(8位)○斎藤 ●永瀬 ●中村 ●渡辺 ●豊島 ○広瀬 ○佐々木○菅井 稲葉(↑6位)
中村太八段4勝4敗(10位)●広瀬 ●菅井 ○佐藤 ○佐々木●稲葉 ●豊島 ○斎藤 ○渡辺 永瀬(↑8位)
広瀬九段 3勝5敗(2位)○中村 ●斎藤 ●佐々木●菅井 ●永瀬 ●佐藤 ○豊島 ○稲葉 渡辺(↑9位)
斎藤八段 3勝5敗(5位)●佐藤 ○広瀬 ●永瀬 ○稲葉 ●渡辺 ●菅井 ●中村 ○豊島 佐々木(↑10)
稲葉八段 3勝5敗(7位)●豊島 ●渡辺 ○菅井 ●斎藤 ○中村 ●佐々木○永瀬 ●広瀬 佐藤(↓5位)
佐々木八段3勝5敗(9位)○渡辺 ●豊島 ○広瀬 ●中村 ●菅井 ○稲葉 ●佐藤 ●永瀬 斎藤(↓7位)
右端の順位は7回戦終了時の暫定順位


 1敗の豊島九段、2敗の菅井八段が敗れ、永瀬九段が星一つ差の2位に浮上。
 最終局は、豊島九段(6勝2敗)vs菅井八段(5勝3敗)、永瀬九段(5勝3敗)vs中村八段(4勝4敗)。
 挑戦権争いも、風雲急を告げてきた(←古い言い回しだ・笑)

 残留争いは、3勝5敗の佐々木八段、稲葉八段、斎藤八段、広瀬九段、さらに4勝4敗の中村太八段、佐藤天九段に降級の可能性がある(危険度は先に名前を挙げた方ほど大きい)
 確率的には、暫定5位の中村太八段辺りは降級危険度は低いかもしれないが、最終局の相手は永瀬九段。対戦成績は中村八段の3勝4敗と拮抗しているが、あの永瀬八段なので、負ける確率の方が高い。
 で、敗れて4勝5敗になると……

渡辺九段(4勝4敗・1位)-広瀬九段(3勝5敗・2位)
斎藤八段(3勝5敗・5位)-佐々木八段(3勝5敗・9位)
稲葉八段(3勝5敗・7位)-佐藤天九段(4勝4敗・8位)
対局が関係してくる(渡辺九段は降級の可能性はない)

斎藤八段(3勝5敗・5位)-佐々木八段(3勝5敗・9位)は、どちらが負けても3勝6敗になるので、中村八段が敗れても4勝5敗なので、中村八段は敗者より上位になる。
勝者は4勝5敗で中村八段と同星になるが、中村八段はランク最下位なので、この1局の勝者よりは下になる。
渡辺九段(4勝4敗・1位)-広瀬九段(3勝5敗・2位)戦は、広瀬九段が勝つと、渡辺、広瀬の両者とも中村八段より上位になる。広瀬九段が敗れると3勝6敗で、中村八段より下位になる
稲葉八段(3勝5敗・7位)-佐藤天九段(4勝4敗・8位)は、稲葉八段が勝つと、稲葉、佐藤の両者とも4勝5敗となり、ランク最下位の中村八段より上位になる。佐藤八段が勝つと、佐藤5勝4敗、稲葉3勝6敗となり、稲葉八段は中村八段より下位になる
 斎藤八段ー佐々木八段戦は勝敗に関わらず、どちらか一方が必ず中村八段より下位になるので、残りの2局で、下位者が1人生じれば8位以上になり、残留できる。
 その2局で、中村八段より下位者が生じるのは、①「渡辺-広瀬で広瀬負け」と②「稲葉-佐藤戦で稲葉負け」の場合。
 この①②のうち、どちらかが成立すれば中村残留となる。逆に陥落するケースは①②の逆の目が両方出る場合だけ。
 勝ち負けを50%とすると、中村降級の確率は25%となる(中村八段が最終局敗れると仮定した場合)


 とにかく、降級危険度は僅差で密集しているので、誰が降級するかは分からない状況だ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2023年度 A級順位戦予想クイズ

2024-01-30 18:33:21 | 将棋
将棋連盟のA級順位戦予想クイズに応募した。
8回戦、9回戦(最終局)の10局の勝敗予想で、今回は的中率の順に賞品がもらえるらしい。今期から、少し要綱が変わったらしいが、私は7、8年に1回ぐらいしか応募していないので、どう変わったのかよく分からない。
それでも、応募はしないが、最終局の勝敗予想は当ブログでも何回かしている。
的中率は6割ぐらいだと思うが、全部外れたこともあった。

今期は挑戦権争いは、ほぼ豊島九段、菅井八段に絞られているが、残留争いは、3勝4敗の4棋士と2勝5敗の2棋士に降級の恐れがあるという大混戦。(詳しくは、1月20日記事
【7回戦終了時の成績】(成績横の順位は今期A級ランキング)
豊島九段  6勝1敗(3位) ○稲葉 ○佐々木○渡辺 ○永瀬 ○佐藤 ○中村 ●広瀬  斎藤  菅井
菅井八段  5勝2敗(6位) ○永瀬 ○中村 ●稲葉 ○広瀬 ○佐々木○斎藤 ●渡辺  佐藤  豊島
渡辺九段  4勝3敗(1位) ●佐々木○稲葉 ●豊島 ○佐藤 ○斎藤 ●永瀬 ○菅井  中村  広瀬
永瀬九段  4勝3敗(4位) ●菅井 ○佐藤 ○斎藤 ●豊島 ○広瀬 ○渡辺 ●稲葉  佐々木 中村
稲葉八段  3勝4敗(7位) ●豊島 ●渡辺 ○菅井 ●斎藤 ○中村 ●佐々木○永瀬  広瀬  佐藤
佐藤天九段 3勝4敗(8位) ○斎藤 ●永瀬 ●中村 ●渡辺 ●豊島 ○広瀬 ○佐々木 菅井  稲葉
佐々木勇八段3勝4敗(9位) ○渡辺 ●豊島 ○広瀬 ●中村 ●菅井 ○稲葉 ●佐藤  永瀬  斎藤
中村太八段 3勝4敗(10位) ●広瀬 ●菅井 ○佐藤 ○佐々木●稲葉 ●豊島 ○斎藤  渡辺  永瀬
広瀬九段  2勝5敗(2位) ○中村 ●斎藤 ●佐々木●菅井 ●永瀬 ●佐藤 ○豊島  稲葉  渡辺
斎藤八段  2勝5敗(5位) ●佐藤 ○広瀬 ●永瀬 ○稲葉 ●渡辺 ●菅井 ●中村  豊島  佐々木

【8回戦】
○渡辺明九段-中村太地八段●
○広瀬章人九段-稲葉陽八段●
○豊島将之九段-斎藤慎太郎八段●
○永瀬拓矢九段-佐々木勇気八段●
○菅井竜也八段-佐藤天彦九段●
 4局は迷わず星を予想したが、菅井-佐藤戦は迷った。菅井八段の現在の調子は最悪に近いが、何となく菅井八段が勝つような気がする。

【9回戦】
●渡辺明九段-広瀬章人九段○
○豊島将之九段-菅井竜也八段●
○永瀬拓矢九段-中村太地八段●
○斎藤慎太郎八段-佐々木勇気八段●
●稲葉陽八段-佐藤天彦九段○
 上の3局はすんなり予想が立てられたが、下の2局は迷った。
 迷った3局……実は、ハガキにどう書き込んだのか、はっきりと覚えていない。たぶん、このように書き込んだと思うし、今、改めて考えても迷いはしたが、記憶と同じ予想になった。
 ここで、気がついたが、一公さんと9局が同じ
 一公さんと張り合うとか、感情的なモノは全くないが、9局が同じというのは、張り合う意味では、つまらないなあ(笑)

 とにかく、星取表を完成させてみよう。
豊島九段 (3位) ○稲葉 ○佐々木 ○渡辺 ○永瀬 ○佐藤 ○中村 ●広瀬 ○斎藤  ○菅井
菅井八段 (6位) ○永瀬 ○中村 ●稲葉 ○広瀬 ○佐々木○斎藤 ●渡辺  ○佐藤  ●豊島
渡辺九段 (1位) ●佐々木○稲葉 ●豊島 ○佐藤 ○斎藤 ●永瀬 ○菅井  ○中村  ●広瀬
永瀬九段 (4位) ●菅井 ○佐藤 ○斎藤 ●豊島 ○広瀬 ○渡辺 ●稲葉  ○佐々木 ○中村
稲葉八段 (7位) ●豊島 ●渡辺 ○菅井 ●斎藤 ○中村 ●佐々木○永瀬  ●広瀬  ●佐藤
佐藤天九段(8位) ○斎藤 ●永瀬 ●中村 ●渡辺 ●豊島 ○広瀬 ○佐々木 ●菅井  ○稲葉
佐々木八段(9位) ○渡辺 ●豊島 ○広瀬 ●中村 ●菅井 ○稲葉 ●佐藤  ●永瀬  ●斎藤
中村太八段(10位) ●広瀬 ●菅井 ○佐藤 ○佐々木●稲葉 ●豊島 ○斎藤  ●渡辺  ●永瀬
広瀬九段 (2位) ○中村 ●斎藤 ●佐々木●菅井 ●永瀬 ●佐藤 ○豊島  ○稲葉  ○渡辺
斎藤八段 (5位) ●佐藤 ○広瀬 ●永瀬 ○稲葉 ●渡辺 ●菅井 ●中村  ●豊島  ○佐々木


 これを成績順に並び替えると
豊島九段 8勝1敗(3位)○稲葉○佐々木 ○渡辺 ○永瀬 ○佐藤 ○中村 ●広瀬 ○斎藤 ○菅井
菅井八段 6勝3敗(6位)○永瀬 ○中村 ●稲葉 ○広瀬 ○佐々木○斎藤 ●渡辺 ○佐藤 ●豊島
永瀬九段 6勝3敗(4位)●菅井 ○佐藤 ○斎藤 ●豊島 ○広瀬 ○渡辺 ●稲葉 ○佐々木○中村
渡辺九段 5勝4敗(1位)●佐々木○稲葉 ●豊島 ○佐藤 ○斎藤 ●永瀬 ○菅井 ○中村 ●広瀬
広瀬九段 4勝5敗(2位)○中村 ●斎藤 ●佐々木●菅井 ●永瀬 ●佐藤 ○豊島 ○稲葉 ○渡辺
佐藤天九段4勝5敗(8位)○斎藤 ●永瀬 ●中村 ●渡辺 ●豊島 ○広瀬 ○佐々木●菅井 ○稲葉
斎藤八段 3勝6敗(5位)●佐藤 ○広瀬 ●永瀬 ○稲葉 ●渡辺 ●菅井 ●中村 ●豊島 ○佐々木
稲葉八段 3勝6敗(7位)●豊島 ●渡辺 ○菅井 ●斎藤 ○中村 ●佐々木○永瀬 ●広瀬 ●佐藤
佐々木八段3勝6敗(9位)○渡辺 ●豊島 ○広瀬 ●中村 ●菅井 ○稲葉 ●佐藤 ●永瀬 ●斎藤
中村太八段3勝6敗(10位)●広瀬 ●菅井 ○佐藤 ○佐々木●稲葉 ●豊島 ○斎藤 ●渡辺 ●永瀬


【あくまで、予想です】
 名人挑戦は豊島九段。
 降級は3勝6敗の佐々木勇八段と中村太八段。斎藤八段と稲葉八段も3勝6敗だが、順位の差で残留。

 B級からの昇級者が降級する例が多い。《A級昇級が“いっぱい”という棋士もいるが、順位の差で降級という例も多い。
 広瀬九段は残り2局とも勝利と予想したが、この星取りならば、1勝1敗でも残留できている。やはり、順位の差は大きい。同様に、現成績最下位の斎藤八段も1勝1敗で残留(私の星取り予想通りなら)

 さて、どうなるか…
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

2023年度 A級順位戦 7回戦終了

2024-01-20 15:19:10 | 将棋
【7回戦終了時の成績】(5回戦、6回戦、7回戦結果と今後の対戦相手)
豊島九段  6勝1敗(ランク3位) ○佐藤  ○中村  ●広瀬  斎藤  菅井
菅井八段  5勝2敗(ランク6位) ○佐々木 ○斎藤  ●渡辺  佐藤  豊島
渡辺九段  4勝3敗(ランク1位) ○斎藤  ●永瀬  ○菅井  中村  広瀬
永瀬九段  4勝3敗(ランク4位) ○広瀬  ○渡辺  ●稲葉  佐々木 中村
稲葉八段  3勝4敗(ランク7位) ○中村  ●佐々木 ○永瀬  広瀬  佐藤
佐藤天九段 3勝4敗(ランク8位) ●豊島  ○広瀬  ○佐々木 菅井  稲葉
佐々木勇八段3勝4敗(ランク9位) ●菅井  ○稲葉  ●佐藤  永瀬  斎藤
中村太八段 3勝4敗(ランク10位) ●稲葉  ●豊島  ○斎藤  渡辺  永瀬
広瀬九段  2勝5敗(ランク2位) ●永瀬  ●佐藤  ○豊島  稲葉  渡辺
斎藤八段  2勝5敗(ランク5位) ●渡辺  ●菅井  ●中村  豊島  佐々木

 7回戦は、すべて成績下位者が勝ち、混戦の度合いが強くなった。
 とは言え、挑戦権争いは、依然、豊島九段、菅井八段に絞られている(渡辺、永瀬にもわずかに可能性は残されているが)。
 星一つリードしている豊島九段が有利なのは間違いないが、最終局に豊島-菅井戦があるので、菅井八段も自力だ。
 仮に、8回戦で豊島●で菅井○なら、最終局が決定戦となる。(豊島○で菅井●なら、豊島の挑戦権獲得が決まる)
 残留争いは大混戦。3勝以下の6棋士に降級の可能性がある。上表の下位ほど危険度が高いが、現在2勝の広瀬九段と斎藤八段でも、ランクが上位なので、3勝に留まっても残留の可能性(あくまで可能性)があるという微差だ。
 とにかく、1対戦の勝敗が入れ替わると、大きく情勢が変わってしまうので、8回戦が終わらないと全く予想ができない。
 個人的には、8回戦で広瀬九段と斎藤八段が勝利した方が面白い。

 それはそうと、今年度の広瀬、斎藤の不振はどうしたことか?
 昨日の広瀬-豊島戦の広瀬九段は強かった。広瀬九段は残留すると予想。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

羽生の法則 その2

2024-01-19 17:39:05 | 将棋
「その2」となっていますが、「その1」の単独記事はありません。
法則「その1」としては、《夕食中継付近の長考は、ロクなことがない》です。
該当記事としては……
「2020 A級順位戦 羽生九段-糸谷八段 その1」
「2020 A級順位戦 羽生九段-糸谷八段 その5」
「順位戦(B級1組)……羽生九段敗れ、2勝3敗に」
「2022年度 順位戦B級1組 千田七段-羽生九段  ~やっぱり、夕食休憩を挟んでの長考はロクなことがない…~」
「やはり、夕食休憩前の長考は……」

 で、今回は《候補手がいくつかある局面での“ノータイム指し”は悪手が多い》

 問題の局面は

 千田七段が7八の金を8七に上がったところ。角取りで、これに角が逃げれば端を攻められていた先手は手順に補強したことになる。
 これに対して、△8七同角成や△7五歩や△2二玉が考えられる。
 △8七同角成がおそらく最善手で、以下▲同銀△8五歩と攻めてどうか?(形勢不明)

 しかし、羽生九段は、▲8七金(第1図)に、ほぼノータイムで△2四香!

 この手は、▲3三桂成と銀を取る手に△同桂とせず、△2九香成と自玉に構わず飛車を取ろうという手。
 飛車を取れば自玉の脅威は減り、手駒に飛車を加えることで攻撃力はアップとなるが、▲3二成桂と銀に加えて金まで取られてしまう。

 このやり取りでの駒割は、金銀対飛桂でほぼ互角だが2九の成香は働きが弱く、香を使った分だけ後手が損なのかも。その上、後手玉は非常に弱体化し、手番も先手。……後手は形勢を大きく損じてしまった。

 こういった形勢互角の候補手がいくつかある局面で、ノータイムで着手し、その手が悪手……そういうケースを何度も観ているような気がする。
 もちろん、その数手前の△9八歩から香車を取りに行った辺りから、△2四香の筋は視野に入れていたのだろうが、先に述べたようにリスクを伴う手だったので、着手に当たっては再考してほしかった。

 第3図で千田七段は▲1一角成と馬を作りつつ、香を手駒に加え、後手玉への脅威を大きくした。
 これに対し、羽生九段は△8六飛と大技を放つ!

 「飛車がタダですよと」▲8六同金とすると、△7八飛▲9七玉△8五桂以下の頓死を食らってしまう。
 が、千田七段は▲7七玉。
 これで、後手の攻めを余している……

 これで順位戦は6勝6敗となった。ここ5戦は1勝4敗と大失速。A級復帰の目は消滅した。
 この11回戦は、成績上位者が軒並み敗れたので、羽生九段が勝っていれば、相当有力となったのだが……残念。
 いや、それどころか、残り2局を連敗すると、降級してしまう可能性もある。
 それはともかく、残り2局は勝ってほしい。と言うか、羽生ファンは《羽生九段には全部勝ってほしい》と思っているはずだ。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

羽生情勢(12月26日) ~順位戦B級1組10回戦など~

2023-12-26 22:31:37 | 将棋
“ひとり表彰式”で盛り上がった達人戦(リンク記事の最後の方に少しだけ情報)の後は、
●久保九段 竜王戦1組 ランキング戦 2回戦 (12月7日)
○岡部四段 朝日杯 二次予選 1回戦(12月14日)
●近藤七段 朝日杯 二次予選 決勝(12月14日)
○島 九段 叡王戦 九段戦 3回戦(12月18日)
○豊島九段 叡王戦 九段戦 決勝(12月18日)
●木村一基 順位戦 B級1組 10回戦(12月21日)

 順位戦B1の対木村戦は……
①中盤の入り口辺りでは、やや有利→
②指し手の方向を誤り、やや不利→
③辛抱強く指して踏みとどまる→
④終盤、勝機が訪れる→
⑤急所で誤り、敗勢…敗局
 ……《羽生九段の負けパターンのひとつ》に陥ってしまった。
 ③、④の振れ幅は対局によって異なり、③は“踏みとどまる”ではなく“逆転、優勢に”というパターンも多く、④も“勝機が訪れる”程度ではなく、“優勢から勝勢を確立”という将棋も多い(そこから逆転負け)
 傍流として、④が夕休前で絶対優勢まで持っていきながら、夕休を挟んでの大長考で指した手が悪手で、その後踏みとどまり、勝機を掴みかけたものの、勝ち切れず敗局
というパターンもある。
 いや、このパターン(夕休付近での長考→悪手)の方が多い。

 以前も書いたが、終盤、時間切迫で勝ち切れないパターンが多く、さらに、夕休付近での長考後の悪手が多いので、そこはセーブして、寄せの段階で1時間10分は残していただきたい
 《熟慮して納得した手を指したい》《妥協した手は指したくない》という姿勢は棋士としては正しい。終盤に時間を残すために妥協して、時間を残してほしいというのは、ファンの我儘であろう。
 だが、勝つことに比重があるのなら、戦い方を少し変えた方が良いのではないだろうか?
・どちらが良いか分からずに迷う場合は、ある程度深く読んで、自分の大局観や指したい手を信じて決断を早くすべき
・AIの手は、筋は変だが最善手という場合が多いが(羽生九段もその傾向はある)、ある程度、棋士としての筋を優先した方が良い
・突き捨てを入れるかどうかは、非常に難しいが、《突き捨ては入れない方が良い》ことが多い。一方、《何故ここで突き捨てを入れる?》と思うこともあり(後で、その理由が判明する》、突き捨ての判断は非常に難しい。その場合は、ある程度考えて着手して、局後分析するぐらいで良いのでは?そして、それを積み上げて、“経験則”を積み上げる


 ……まあ、とにかく、もう少し寄せの段階で、時間と体力(脳力)を残してほしい。

 さて、B級1組は10回戦が終了
 13人なので消化対局数が8局または9局と揃わないが、成績順に並べると カッコ内の数字はランキング(昨年度成績による順位付け)で、同星の場合はこのランキングが優先される
1位 増田七段(13) 8勝2敗 残り対局 大橋 ーー 屋敷  
2位 千田七段( 8) 6勝3敗 残り対局 羽生 屋敷 大橋
3位 澤田七段( 4) 6勝4敗 残り対局 横山 佐藤 ーー
4位 糸谷八段( 1) 5勝4敗 残り対局 三浦 羽生 佐藤
5位 羽生九段( 6) 5勝4敗 残り対局 千田 糸谷 三浦
6位 山崎八段( 7) 5勝4敗 残り対局 木村 三浦 近藤
7位 屋敷九段(10) 5勝4敗 残り対局 佐藤 千田 増田
8位 大橋七段(11) 5勝4敗 残り対局 増田 横山 千田
9位 近藤七段( 3) 5勝5敗 残り対局 ーー 木村 山崎
10位 佐藤九段( 2) 4勝5敗 残り対局 屋敷 澤田 糸谷
11位 三浦九段( 5) 4勝5敗 残り対局 糸谷 山崎 羽生
12位 横山七段( 9) 1勝8敗 残り対局 澤田 大橋 木村
13位 木村九段(12) 1勝8敗 残り対局 山崎 近藤 横山


 9回戦でトップを快走していた増田康七段が澤田七段に敗れ、さらに3敗だった糸谷八段、羽生九段、大橋七段も敗れ、混戦模様になってきた。
 とは言え、増田七段は残り2局で1勝すると9勝となり、それを上回れるのは千田七段だけ(両者とも増田七段よりランクが上なので、同じ9勝でも上位になる)となり、2位以上が確定し、昇級が決まる。
 残り1席は大混戦。暫定順位2位の千田七段が有利なのは間違いないが、千田七段から暫定8位の大橋七段辺りまでは、昇級の可能性がありそう。


 羽生九段は、降級が決まっていた木村九段が相手だったので、勝ち星が大いに期待されたが、痛い1敗。しかし、同じ3敗者も敗れたので、昇級の可能性は意外と残されている。
 しかも、暫定順位が上の千田七段、糸谷八段戦が残っており、自力で逆転が可能。昇級するには、さらに増田七段か澤田七段を上回らなければならないが、羽生九段が残り3戦全勝すれば、《増田七段は2連敗》または《澤田七段は残り2局の内1敗》でA級復帰となる。
 なので、3連勝すれば、かなり昇級が期待できそう。とは言え、3連勝はなかなか難しいので、昇級には固執しないでおこう。でも、2勝1敗では終えてほしい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする