英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

王将戦第1局 先崎八段の解説など ①

2010-02-01 01:18:43 | 将棋
 第二局もぎりぎりの将棋でした。二年前の王座戦と王将戦もスコアは開きましたが、内容は激戦で、この王将戦もそうなりそうです。
 先日、先崎八段について書いてしまいました。多少偏見があるのかもしれません。今回はそんな偏見を捨てて、第一局を振り返ってみようと思います。

 ▲7六歩△3四歩▲7五歩に△4二玉と進みました。この手は▲7八飛を牽制しています(▲7八飛△8八角成▲同銀△4五角▲7六角の時、あらかじめ4三の地点を受けている)。それで、本局は▲6六歩と持久戦調石田流に進みました。これはある意味、羽生名人が久保流を含む早石田戦法を避けたとも考えられます。



 ▲7六飛(17手目)の第1図は大きなポイントの局面。この2手前の▲6八銀が妥協しない指し手だった。
 つまり、6八銀型は8八の角に紐が付いていないので、第1図より△6五歩の仕掛けの可能性が生じており、実戦も羽生名人は仕掛けている。中継の解説によると、「▲6八銀に代えて▲5八金左だったら無難だが、△7二飛の揺さぶりが生じている。次に△7四歩▲同歩△同銀とまともに逆襲されてはいけないので▲8六歩ぐらいだが、そこでまた△8二飛と戻られて▲8五歩△同飛と進んだ局面は振り飛車失敗。そこで戻って金が5八ではなく6九のままならば、逆に▲7八金と上がって振り飛車の模様がよくなる」と。
 後手の羽生名人は3二玉の一手を省いて、△7二飛や△6五歩を見せているが、久保棋王としては△7二飛を警戒し、△6五歩なら大丈夫で「くるならどうぞ」と言っているのだ。
 この辺について、先崎解説は「▲6八銀は挑発的で、▲2八玉や▲5八金右が手堅い。やってこいという手で、この戦法に命を懸けている久保棋王は△6五歩なら研究し自信を持っているはず」と。
 「▲2八玉や▲5八金右が手堅い」というのは、やや疑問を感じる。
 

 挑発に乗ったのかどうかは分からないが、羽生名人は△6五歩を決行。私見では羽生名人はある程度研究をしていて、仕掛けはあり得る(成否は半々)。「指してみたかった」というところではないだろうか。



 第2図の△5四銀。この手は「石田流に対しての急所の7四の地点を薄くしてやや危険。△6五歩▲7七銀と愚形にしておいて△3二玉と指しておけば穏やかだった。さらに△5四銀▲7八金のところでも△6五歩▲7七銀と引かせておけば激しいことにはならない」と先崎解説。
 これに対し中継解説では「▲7七銀は愚形だが後に▲7八金、▲2八玉、▲6八銀と手を進めれば逆に理想形となる」と。



 第3図は△6二飛に▲6七歩と受けた局面。「△6二飛と回ったことにより▲7四歩△同歩▲同飛△7三歩▲8四飛が生じていて、羽生名人の△6二飛は自らを追い詰めた手」と評している。
 中継解説では「羽生名人は第3図の前に△8六歩▲同歩を入れておいて△6五銀▲同銀△8八角成▲同金△6五飛▲7八金△6九角という順も考えた」と。しかし、本局はじっと△6四飛と▲7四歩を受ける。
 (ここで聞き手の上田女流が△6五歩を利かせてから△6四飛と進めかける間違いを)

 △6四飛は「見るからに危ない形」と先崎解説。確かに飛車は安定感がなく、攻めても当たり(跳ね返り)が強い。さらに、玉形も未完成。「後手は腰高の感」とうまい表現。
 ここで先崎解説は「私が先手なら一回▲2八玉として△3二玉に『それから何か考えよう』というところ」と。
 これは解説用の言葉で、▲2八玉と△3二玉の手の交換は後手の得で、当事者(先手)だったら絶対ここで動きたいはずで、▲7四歩は当然の動きではないだろうか。久保棋王の機敏さを讃えたといったところだろう。

 第3図以下△6四飛▲7四歩に△同歩▲9六歩(次に△9七角を見せる)△6五歩▲7七銀△5五銀(▲9七角に△5四飛を用意)▲6八銀△6六歩▲同歩△7三桂(第4図)と進む。



 さて、ここでの久保棋王の次の一手には驚いた。「本局1番の驚き」と書きたいが、この後もっとびっくりする手が飛び出すので「2番」か。あ、でも、改めて冷静に考えると「1番」かも。
 「次の一手」で出題したら、まず当たらないのではないだろうか。
コメント (2)
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