英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

王将戦第1局 先崎八段の解説など ③

2010-02-05 21:28:27 | 将棋
 まず、下の2つの図を見比べてみてください。



 よく似ていますね。唯一の違いは、先手の銀の位置です。A図は5四、B図は4五にあります。
 手番は後手です。後手を持ったとして、あなたならA、Bどちらの図を選びますか?



 普通の人なら△5四歩と銀が取れるので、A図を選びますよね。見方を変えて、もしA図で先手番だったら、▲6五銀と逃げてB図に進める人が多いかもしれません。

 今日の譜は、この2つの図の違いと羽生名人の工夫(羽生マジック)が主題ですが、ひとまず先日の記事の続きです。



 第6図より羽生名人が△6二歩と辛抱したあと、▲7七桂△7六歩▲4五銀(第7図)と進む。



 第7図の▲4五銀では▲5五歩△4四飛▲6五桂△6六金▲5三桂成△同玉▲3六桂と進めるべきだったようだ(中継解説、週刊将棋)。しかし、対局中は久保棋王も検討陣も決め手に近い手と見ていて、「羽生マジック」が出なかったら「疑問手」の烙印を押されなかったかもしれない。
 ちなみに、先崎八段は「▲4六桂と桂打つ一手。桂打てば勝ちですけどね。▲4五銀は
絶対飛車を取るという手です」


 第7図より、△7七歩成▲同銀△7五桂▲6五飛と進む。いろいろ変化手順はあるが、検討陣の本命手順で進んでいる。そして……
 そして、飛び出した△5九飛成!(第8図)



 普通、△5九飛成では△7七角成と銀を取る。それに対し▲5四銀と飛車を取った局面がA図。で、A図で△5四歩と銀を取ってどうかと読み進める。検討陣もそう予想し、△5四歩に▲5三歩が厳しく先手良しの結論を出しかけていた。
 つまり、▲5四銀と飛車を取られたときに△同歩と取ることができない(飛車のタダ取られ)なら、△5九飛成とタダで捨てようというのだ。わざわざ一手を費やして飛車を捨てるのは損なようだが、▲5九同金に△7七角成が金当たりとなり、▲4九金(B図)と戻さなければならないので、手損にはならない。
 というわけで、普通に進めるA図とは銀の位置だけが違うB図が実現した。



 羽生名人は2つの局面を比較して、「銀は取れるが▲5三歩と急所に打たれる」より、「銀は取れないが、△7六馬と引いたとき飛車取りになる(銀が4五にいるので飛車には銀のヒモがない)」ほうが優っていると判断したのだ。
 それにしても、取れる銀を取れないようになっているB図の方が、A図より良いとは!

 A図からB図を仮定し、両局面を比較し、飛車を捨てる手順(桂の打ち場所も5五では飛車のタダ捨てが実現しない)の妙でB図を実現させてしまう羽生名人。異次元の大局観だ。
(谷川九段が『異次元の大局観』という著書を出していると記憶しているが、敢えて「異次元の大局観」と呼ばせてほしい)



 「羽生マジック」という表現をするのは、安易な気もするが、使わざるを得ない今日の記事である。
 と言いつつ、わからないことがひとつ。



 この図は、A図で△7六馬と引いた局面。本譜は羽生マジックを駆使して、銀を4五に留めて△7六馬を飛車取りの先手にしたのですが、この疑問図では銀のヒモがついているので、先手を取れていません。なので本譜より良くないはずです。
 では、この局面で先手はどう指せばいいのでしょうか?
 図で先手の飛車と銀の両方が当たっていて、かなり急かされた状態になっています。しかし、下手に動くと、例えば、▲6三歩成△同歩▲同銀に△6五馬、また、、▲6三歩成△同歩▲同飛成には△5四歩、さらに▲5三銀成△同金▲6二馬なら△6五馬と、飛車か銀が取られてしまいます。
 この疑問図より、先手はどう指せばいいのでしょうか?どなたか、ご教授ください。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする