英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『崖の上のポニョ』

2010-02-11 21:20:08 | ドラマ・映画
 先日、テレビで放映されたのを見ました。
 「面白かった」と思います。そう、(子どもにとっては)「面白かったと思う」のです。

(この放送の前に、制作秘話みたいな解説番組があり、本編映画を見た後、その解説番組を見た上で、以後の文章を書いています)

 この作品は子供向けの「童話」なので、単純に子どもの気持ちで深く考えずに、ポニョが宗介を好きな気持ち、宗介の頑張る気持ち、魔法などのファンタジックな現象やその表現を楽しめばいいのでしょう。
 宮崎駿氏も「めまいがしそうな波を表現したかった」と述べています。氏は作品の根幹となるモチーフを1枚の絵で描くそうですが、今回は波の上に立つポニョの絵でタイトルは『ポニョ、来る』でした。
 あとは、鉛筆、つまり、手書きで描くことも目標だったようで、今回の作品は、柔らかみのある童話的な雰囲気にあふれていました。
今作品は、波が表現できてポニョと宗介の真っ直ぐな気持ちが書ければ、詳細なんてどうでもいいのです。

 しかし、ひねくれた私はあれこれ細かいことを考えてしまい、釈然としないものがたくさん残りました。

①ポニョが宗介に出会い、宗介に会いたくて人間になり、宗介の元に向かいます。これが作品の主題といっていいでしょう。
 私も「宗介、好き」とバケツの中(上?)で跳ね回るシーンが最も好きですし、ポニョが波の上を走るシーンも好きです。
 ただ、最初ポニョが宗介と出会って別れるまでは半日です。その半日だけで、人間になって今までいた世界を捨てるほど宗介への思いが強くなるとは思えません。人間になって宗介に会いたい。一緒にいたいという気持ちは痛いほど伝わってきますが、宗介のどういうところを好きになったかが分からないのです。
 それはともかく、再開シーンで宗介に飛びつくシーンはポニョの気持ちがストレートに伝わってきて、ジーンときましたが。

②宗介の母、リサなのですが、自立していて、物事に動じず、強くて、行動的です。しかし、こんなことを書くと、数少ない女性訪問者に嫌われてしまいそうですが、あまり好きではありません。
 おおざっぱに見えますが、宗介を見ていると、母親としても素晴らしいのでしょう。夫が帰ってこれなくなって、腹を立てて、モールス信号で「バカ」を連発するのも、わがままというより素直な感情表現で、いいと思いました。
 では、何が気に入らないかというと、強すぎるのです。結局、仕事も母親としても料理も発電機やアンテナの扱いや車の運転も何でもこなしてしまい、精神的にも強くて、海の女神?(ポニョの母)のグランマンマーレとも対等に話し合っているなんて、とんでもない強さです。
 この作品の対象が幼児で、当然、映画館には若い母親が多いと思われるので、彼女たちへの受けを良くしようと思ったのではないかとさえ、勘ぐってしまいました。
 とにかく、リサが強すぎて、父親の存在感は全くありません。ただ、海の上をうろつくだけでした。フジモトにしてもそうです。もう少し、幼児対象なのですから、父親の存在意義も示してほしかったです。

③荒れ狂う波と、その波の上を走るポニョと、それらに追いかけらてルパン三世『カリオストロの城』を彷彿させる車を爆走させるシーンは、ドキドキ感いっぱいで、この作品の一番の見せ場ですが、車を爆走させなければならなかったのでしょうか?
 朝の運転シーンでもわき見運転もあり、跳ね橋を強行突破もありました。安易な言い方ですが、教育上よくないです。
 そんなことにこだわっては、表現したいことが表現できないという考えを理解できます。しかし、本作品の場合、幼児をターゲットにしているのと舞台が瀬戸内海の街で現実ぽいので、もう少し考慮してもいいと思うのです。
 車を並行させることによって、描きたかった波の躍動感がより効果的に表現できるので、難しいところですが。

④老人ホームの方で何か光っているのを見て、「誰かいる?」と疑問を持ち、宗介を置いてホームに向かいます。「誰かいる?」程度で、この異常時に宗介を置いていってしまうのは、ちょっとあり得ないと思いました。

⑤裏話では話題になりませんでしたが、嵐の後、舟でリサを探しに行くシーンで、水没した街が出てきます。道義的に公言しにくかったと想像するのですが、水没した街も描きたかったのではと感じました。
 ③でも書きましたが、現実的な街と現代的な老人ホームが関わっているので、大人の目で見ると、大惨事に見えてしまいます。古代の魚が回遊しているので、現実離れはしていますが、グロテスクなので悲劇的に思えてしまうのです。
 しかし、町の人からは全く悲壮感が感じられないので、すごく違和感を感じました。

⑥舞台設定(ポニョは何か、フジモトはどういう存在?、ポニョの暴走がどのように影響しているのか?など)がよくわからないので、モヤモヤ感が残る。

 面白いという感触と、釈然としないモヤモヤ、「ぽ~にょ、ぽにょ、ぽにょ♪」の唄声と、ポニョのかわいらしさが、混ざり合った複雑な気持ちが残る作品でした。
コメント (8)
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