英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2020A級順位戦 羽生九段-佐藤天九段 その4(終)

2020-10-07 21:45:57 | 将棋
「その1」「その2」「その3」の続きです。


 ここで先手に好手があった。

 ▲2五角(変化図6)………これが見た目以上に厳しい。

 ===以下は『将棋世界』10月号の棋戦情報の解説===
 対して△8六飛は▲同歩△6七銀打▲7九玉△7七銀成に▲8一飛(変化図7)から後手玉が詰む。

 また、△7七銀成に代えて△5五銀は、▲8一飛△5一金▲2二歩成(変化図8)で先手勝ち。

 ▲2五角には△5五銀くらいだが、そこで▲9六香(変化図9)ならば先手有望だった。(表記の都合で、語順など原文と少し異なっています)

 ==================================【引用 終】


 第12図から変化図9へ進めば、先手玉のひっ迫感がかなり減少している。
 その上、後手陣への4枚の垂れ歩や2五の角の利きは相当な脅威で、▲2二歩成△同銀▲3二金の筋(ただし、この後▲2二金と銀を取る手が甘い)や▲6三桂の打ち込みなど、後手玉に迫る手に事欠かない。
 ただし、この変化図9は上記のように先手が相当よく見えるが、実際はそれほど簡単ではないようだ。
 変化図9以下、△4四角▲2一金(次に▲3一金で△同玉なら▲3二銀で詰み)△5一玉と早逃げし

 以下▲3一金にも△6一玉と遁走し、▲3二歩成に△2四歩▲3四角△3五金と先手攻撃の主軸である角に圧力をかける。
 要領を得ない手順だが、先手角を主戦から追いやると同時に、先手玉に対して遠巻きではあるが包囲網を築いている。
 もちろん、これは変化の一例だが、中継解説の“先手有望”という表現は的確かもしれない。

 ともあれ、第12図では▲2五角の一手だった。
 しかし、羽生九段は単に▲9六香……痛恨の手順前後だった。
 すかさず、△8六飛と切られてしまった。以下▲同歩△6七銀打▲7九玉△7七銀成と進むと、

 ▲8一飛と打っても、変化図7とは違い先手の角が2五に居ないので後手玉は詰まない。
 なので、羽生九段は△8六飛に▲6三桂△同銀を利かせて後手玉を詰みやすくしておいて▲8六歩と手を戻したが、やはり、△6七銀打▲7九玉△7七銀成と進められて、はっきりと後手の一手勝ちとなった。
 ずっと、▲9六香と桂を取るチャンスがあったのだが、最も悪いタイミングで桂を取ってしまった。

 「はっきり勝ちと書いた」が△7七銀成に▲3二金と打ち込んだ手に対して

 うっかり、玉を逃げると頓死してしまう。
 △5一玉は▲4一飛以下簡単。△5二玉にも▲2五角△4三桂▲6三歩成△同玉▲3六角△4三桂▲6四飛△7二玉▲6三銀△同玉▲5四角△6二玉▲7二金△5三玉▲4五桂△5二玉▲4三歩成△同歩▲6四桂△5一玉▲4一金△同玉▲6三角成△4二金▲5二馬で詰む。
 なので、佐藤天九段は▲3二金(第13図)に△同銀と取る。以下▲同歩成に、ここでも迂闊に△5二玉と逃げると、やはり頓死する(手順は省略)。
 佐藤天九段は誤らず、△3二同玉と取り、羽生九段が投了。

 投了図以降、▲2二飛には△3三玉▲3四銀△2四玉で逃れている。以下▲2五銀には△3三玉(△1三玉)▲3四銀(▲1四銀)△2四玉の連続王手の千日手で先手の負け。
 ただし、ここでも▲2二飛に△4一玉と逃げると、▲3二銀△4二玉▲2五角(変化図13)以下頓死する。

 図以下、△4三桂▲同角成△同歩▲同銀不成(成りでも詰む)△6一玉▲6二飛成△同玉▲6三歩成△同玉▲6四金(変化図13)△7二玉▲8四桂以下詰み。


 押し引きがあったが、拮抗した形勢が続いた。非常に難解な将棋だった。
 終盤、痛恨の手順前後で、急転直下の終局となったのが残念。

 順位戦は初戦の菅井戦は勝利したが、この佐藤天戦、糸谷戦、そして、先日の斎藤戦も敗れ、1勝3敗と苦しい星勘定。
 斎藤戦はやや変調だったが、他の将棋は悪くない。今後の巻き返しに期待したい。
 それと、やはり竜王戦はモノにしてほしい。挑戦者決定3番勝負は仕事が手につかなかった。
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学術会議任命拒否問題②……「いけしゃあしゃあと」政府内文書&自己満足の見解

2020-10-07 09:26:55 | 時事
学術会議任命拒否問題①の続報】
★政府内文書(一昨年)……「学術会議任命拒否問題 野党合同ヒアリング」で公表
――「日本学術会議」について
・国の行政機関であることから、首相は会員の任命権者として、人事を通じて一定の監督権を行使できる
――会員の任命について
・憲法で定められた国民主権の原理からすれば、首相に会議の推薦通りに任命すべき義務があるとは言えない
・(その一方で)科学者が自主的に会員を選出するという基本的な考え方に変更はない
・首相は会議からの推薦を十分に尊重する必要がある

 この政府内文書の位置づけがよくわからないが、「昨日公表された」という報道なので、文字通り政府内での文書で、“学術会議についての任命に関する見解レポート”的なものと考えられる。
 公表されていない政府内だけの文書を今回の任命拒否を“法に基づいた措置”と言い張るのは、著しい無理がある。


★内閣法制局の担当者の説明……学術会議任命拒否問題 野党合同ヒアリング
《“義務とは言えない”いうのは、解釈の変更になるのではないか?》(野党の質問)に対して
「解釈の変更ではない。公務員の罷免・任命権を首相が請け負って、国民に対する責任を負っている。
 その前提をもとに、昭和58年の答弁もなされている」

 公務員の罷免・任命云々はそのことだけを取り上げれば正しいのかもしれないが、今回の首相の任命を拒否したことが国民に対する責任を果たしているとは思えない。昭和58年の答弁がその前提をもとになされているというのはこじつけで、それこそ、政府得意の“解釈の変更”である。

★菅総理の説明……自民党役員会
「“日本学術会議は年間約10億円の予算を使い活動”、“現状では会員が自分の公認を指名可能な仕組みであることなどを踏まえ、対応してきた”」と改めて説明。
「丁寧に説明しながらご理解いただけるよう努めていきたい」

 “現状では会員が自分の公認を指名可能な仕組み”……これを問題視するなら、その点を改善するよう求めれば済むことだ。
 それと、安倍総理もよく使用した“丁寧な説明”。
 政府の言う“丁寧な説明”とは、《都合の悪い事象には一切触れず、都合の良い法や過去の事例を挙げ、更にそれを曲解してこじつける》ということなのだろう。


★世耕参院幹事長……自民党の会議(党役員会とは別の場と思われる)
「(5日の)内閣記者会とのインタビューで菅総理は極めてきちんと説明した」
「単純な前例踏襲は認めないのが菅総理の政治姿勢そのもの。国民にも伝わったのではないか」

 あれで“極めてきちんと説明”としたと評価するなら、どんな説明もきちんとした説明になる。
 《単純な前例踏襲は認めないのが菅総理の政治姿勢》と部分的に正当性のある主張を取り上げて、行為の正当性を強調する政府の常套手段である。


………“いけしゃあしゃあと”という言葉が浮かんだ
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