英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

アストリッドとラファエル ~文書係の事件録~

2022-10-04 18:06:22 | ドラマ・映画
銀行で大金を引き出す男性。
窓口の女性行員は、あまりの額の多さに、おろすのには手続きが必要とか言っていたが、上司がやってきて手続きを省いて大金を渡していた(よほどの御得意様なのだろう)。
その後、男は駐車場に行くが、おもむろに灯油缶の灯油をかぶり、火をつける。全身火だるまになるが、助けを求める様子はなし。
(後に警察が確認した銀行の防犯カメラを見る限り、焼身自殺に思えた……)

画面は切り替わり、パズル(木片細工のような記憶があるが、よく覚えていません)を解いている女性。解き終えると、嬉しそうな表情……

何かのブログ記事を書いていたので、訳の分からない映像だな……とぼんやりと視聴。

その後、刑事たちの捜査会議らしきものが始まる……
ここで、《ああ、刑事ドラマか。なら、続けて観てみよう》となった次第。

このドラマを観たのは、全くの偶然。
非常に幸運な偶然だった。




事件(エピソード)は、興味深い状況から始まる
・弁護士が法廷の弁論中に心臓停止で急死。病死と思われたが…
・国立自然史博物館で古生物学者が遺体で発見される。死因は溺死だが周囲に水気はなかった……
・推理作家が服毒死しているのが発見される。自殺と思われたが…
・バスの中で電子タバコを吸っていた男が突然死亡する。しかし、身元が分からない……
・葬儀の直前に遺体が行方不明に……
…………などなど

 一見、病死や自殺と思われたが、実は殺人。遺体や現場の状況が不可思議で、説明がつかないような状況で、その真相にたどり着く過程がパズルを解いていくようで、面白い。
 真相は、ちょっと無理があることもあるが、些細なことである。
 実は、このドラマの面白さ・魅力は、事件解明、解決よりもアストリッドとラファエル、このふたりの心の繋がりが深まっていく道程に魅力がある。

アストリッド――
【AXNミステリーの番組紹介より引用】
犯罪資料局で働く自閉症のアストリッドは、警官だった父親の影響を受け子供の頃から刑事事件の調書や謎解きに人一倍興味を持っていた。そして、犯罪学者や監察医並の知識も兼ね備えている


 これだけだと、彼女の性質や性格が十分に分からないと思われるので、補足します。ただ、私自身、“自閉症”を理解していません。なので、アストリッドの独特な性格や行動が自閉症に起因するものなのか、彼女の性格によるものが大きいのかが、よくわかっていません。
 なので、以下の文は、アストリッドの特質を説明しているとお考えいただくと、気が楽になります。


・曖昧さが苦手で、人からの指示を100%か0%で受け止める。例えば、「そこで待っていて」と指示(お願い)すると、その指示を解除しないと、いつまでも待っていようとする
・曖昧さが苦手なので、一般の人(アストリッドや他の自閉症の人と区別して“一般の人”と記すのは、差別的な気もしますが、ご容赦ください)の気持ちや感情を理解し難い
・突発的な出来事に対処するのが苦手なので、いくつかの考えられる可能性を想定して事に当たるが、それでも、その想定外の事象が発生して、パニックに近い状態になる
・喧騒、特に、一度にあれこれ話しかけられるのが苦手
・他人に身体を触れられるのは苦痛
・非常に几帳面(『名探偵モンク』のモンクを思い浮かぶ。モンクの方が強度か?)

(後で、思いついたら補足します)

そして、
・膨大な犯罪資料に目を通し、それを記憶。さらに、ネットなど知識を補足。
・パズルが好きで、得意。それゆえ、物事を多角的にとらえ、論理的に事象を構築・検証するのに長じている
・確認した事象を整理・検証し、不合理・矛盾を見出し、逆に通常有り得ないと思われる結論でも、可能性が考えられれば、排除しない
・洞察力も並外れている

(これらもモンクに通じることが多い)

このアストリッドの特質については、第1シーズン最終話でフルニエ監察医が語った言葉が的確だったのでご紹介する
「あんたはこれまで組んできた犯罪科学者の中でもトップレベルだ。
 単に知識が豊富というだけじゃなく、多角的な視点で物事を見ている。
 言われなきゃ、見落としてたよ(この時の事件でも、彼女の呈した疑問点を踏まえて解剖・検視した)
 おかげで俺も刺激を受けた。慢心しちゃいかんと思いつつ、少し自分に甘くなっていた。
 でも、あんたが加わって、仕事に対する心構えが変わった。より熱が入っている。
 俺は不愛想なこともあるが、元からそういう人間なんだ。
 あんたの協力に感謝している。以上だ」

最初の頃は、自分の見立てに対し、アストリッドが疑問を呈し、結果的にやり込められることが多かった(アストリッド本人は、やり込める意思は全くない)
《素人が分かったようなことを言うな》と思っている節がありありだったが、彼女が論理的に考え、疑問や可能性を示しているだけと理解するようになっていった。
上記の言葉、彼は言いづらそうに発していたが、それは嫌々ではなく、単に照れくさいだけのようだった。
彼の言葉、私も嬉しかった。

ラファエル――
 思いつきで行動する猛進型だが、おおらかで誰に対してもフレンドリーな性格【AXNミステリーの番組紹介より引用】

 パリ警視庁の警視で、猛進型。少々“がさつ”
 几帳面(神経質)なアストリッドとは、水と油のように思われるが、包容力があって、優しく、アストリッドを理解しようと努める。
 自閉症が悪いことと決めつけず、そう言った面も含めて、アストリッドを受け止めている・
 「猛進型でがさつ」と書いたが、それは、自分の考えや気持ちを隠さずストレートにぶつけるからだ。なので、アストリッドもラファエルを理解しやすく、信頼もしている。



このふたりの繋がりが深く強くなっていく様が、非常に心地よく、嬉しい。


ラファエルと行動を共にすることで、アストリッドも進歩し、周囲の人間もアストリッドを理解していく。
そういった状況を、第1シーズンの最終話でのガイヤール(犯罪資料局の長官。アストリッドの父の友人であり、アストリッドの父の死後はアストリッドの後見人)が表現している。

「(君に感心した点は)ここ数か月のキミの進歩だ。
 当初は君が警察の捜査に協力するのに賛成できなかったが、コスト警視(=ラファエル)のおかげで、きみは成長した」
「でも私は変わっていません。今も自閉症ですが、これからも同じですし、このままでいたいです」
「そこがきみの凄いところだ。自分らしさを失わず、自信をつけた」



第1シーズンをNHKで視聴したが、第2、第3シリーズは未定。
AXNミステリーでは第3シリーズが放送中とのこと(オンデマンドでも見逃し配信中!第1~第3シーズンを10月15日まで)
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