英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

鎌倉殿の13人 第40話「罠と罠」

2022-10-25 17:53:18 | ドラマ・映画
「最も頼りになる者が、最も恐ろしい」
……今話で義時が和田を滅ぼす意を示した時に語った言葉だ
そして、このセリフは…………
第15話で、上総介広常に謀反の罪を着せ、討ち取ろうとするのを、義時が必死に止めるよう懇願した時に、頼朝が言ったセリフと同じ。

15話の記事の時、このセリフを取り上げなかったのは、残念……(言い訳:論理的には正しいが、出した結論の「消す」に共感できなかったため)
 義時は頼朝の考え方や施策を踏襲してきているが、今回のセリフ(考え)は、如実にそれを表すエピソードだ。

【このセリフ周辺(和田合戦・和田義盛の乱に至るまで)の概要】
閑院内裏の修復を後鳥羽上皇から依頼されたが、重い負担に御家人たちが反発。和田義盛が旗頭となり、八田知家(市原隼人)らが集う状況となっていた
②信濃で“泉親衡の乱”が起こる……“泉親衡の乱”=《鎌倉幕府御家人で信濃源氏の泉親衡が源頼家の遺児千寿丸を鎌倉殿に擁立し執権北条義時を打倒しようとした陰謀とそれに続いた合戦》(ウィキペディアより)
 ………事を起こす前に発覚したが、企てに加わった者の中に、和田義盛の息子の義直・義重と、甥の胤長がいたことが判明。和田義盛の縁者とは言え、免罪することはできない。
③義盛は赦免を請うが、義時は義盛の息子の義直・義重は許すも、甥の胤長については、積極的に企てに加担したとして、流刑とした。

 ……で、冒頭のセリフに繋がる。
義時は、単に泉親衡の乱について胤長を処したのではなく、胤長の処罰を利用して、最も頼りになり、最も恐ろしい和田一族を滅ぼそうと考えたのだ。

 「最も頼りになる者が、最も恐ろしい」という論理は間違ってはいない。しかし、「頼りになるが(敵になると)恐ろしい者」を重用するか、排除するかで、その是非(結果)は大きく違ってしまう。
 有能な者やライバルを排除することは当人の地位を安泰にするのには有効な手段ではあるが(どこぞの国の党のように)、その組織の総力は衰退していく。
 もちろん、有能な者が反旗を翻して内紛が起これば、組織は大ダメージを受けてしまうが、その有能者と良好な関係を築いて活用するのが組織トップの腕の見せ所だ。

 今回の騒動、義盛が頭を下げているので、それに応えてやれば、鎌倉も北条も安泰なはず。義盛の性格を考えると、恩義を感じてより働いてくれるはず。
 義時は、孫子(まごこ)の世代のことを考えて、危険因子は排除しようと考えた。だが、(もう少し後の時代だが)戦国時代に下剋上の風潮がまん延してしまったように、悪い風潮は繰り返される。
 もちろん、義時もそのことを考え独裁・傲慢と言われないように、相手から謀反を起こされるように仕向けている。赦免を願い出た約100人の和田義盛(ふうの男)たちに説明する際、わざわざ、縛りあげられた胤長を皆に見せて、怒りを煽った。
 さらに、善村に義盛に協力するふりをさせ、謀反の企てをチラつかせる
 そのうえ、義時の仕業ではないが、胤長の娘が病死するという悲運

 個人的には…とにかく、そんな先の憂いを考えず(原発問題や資源や環境問題は大切で別次元の問題)、ヤン・ウェンリーも「私の希望は、たかだかこの先何十年かの平和なんだ」と言っているように(“何十年”と言っているが、そんなに長期間ではないというニュアンス)、自分が生きているうちだけのことを考えた方がよい。畠山重忠や義盛を討つという罪を犯さずに済めば、もっともっと心の平安を得られただろうに…
 なので、義時が手本としている頼朝の最期が、割と平安な死だったのが私は非常に不満である。

【悲劇を避けるための動き】
泰時
「私は誰とも敵を作らず、皆で安寧の世を築いて見せます。父上は間違っているっ!」と諫言するも、謹慎を言い渡される。
政子に「このままいけば、和田殿は挙兵する。そして、父(義時)は和田を滅ぼすつもり……諫められるのは尼御台(政子)だけ」と訴える

政子――姉弟の攻防――
「和田は野心がない」(政子)
「(和田を)周りが担ぎ上げる。姉上は関わらないでいただきたい」(義時)
「ひとりで勝手なことをしないっ!」(政子)
「姉上に叱られたのはいつ以来でしょう……承知いたしました。
 和田殿をこれ以上けしかけることは致しません
」(義時、承服して去る…)

……舌の根も乾かないうちに
「和田を焚き付ける良い手を思いついた」(義時)

姉は弟が承服していないことはお見通しで義村に北条か三浦のどちらに付くかを尋ねる
「小四郎とは固いきずなで結ばれている」(義村)
政子は《義村は損得勘定で動く》こともお見通しで、更に、言う。
《三浦がこちら(北条)に付けば、和田は孤立する(挙兵を諦める》と、三浦が和田が挙兵するかどうかの分かれ目であると強調。見返りに宿老の座を約束し、三浦を説得する

実朝
――歩き巫女の見立て、占い――
・夫婦の交わりを見透かし、「幸せ三、寂しさ七……だが、寂しさ十よりはマシ」と
・「肘があごに付くかね?」 試みようとする千世に「やらなくていいから」と実朝
・「この鎌倉が火の海になる。たくさんの血が流れる。
  死ぬ……みんな死ぬ。由比ガ浜に髭面の首が並ぶ」


この予言に、顔色を変える実朝のもとに、緊急の知らせ……
《和田胤長の屋敷が没収》……同族の者が受け継ぐのが常だったが

実朝、政子に相談。政子は《三浦が北条に付くことを約束したので、和田が単独で立つことはない》という予見を語るが
「あの者(義盛)は、追い詰められれば(意を決すれば)、ひとりになっても戦う。そういう男です」と断言。
《義盛と話して、戦を止めたい》と訴える。

政子は北条家に伝わる秘策(女装)を用いて、義盛と対面することに成功
(“1勝1敗”…1/2……“北条家に伝わる秘策”というほどの成功率でも伝統でもない)

「ここまでコケにされては武士の名折れ。もう後へは引けない」(義盛)
実朝、義盛の手を握り、
「いつまでもそばにいてくれ」
「義時には二度と行き過ぎた真似をしないよう、私が目を光らせる」(←多分、無理)
「また旨い獅子汁を食べさせてくれ」
「義盛は鎌倉一の忠臣だ。それは私が一番分かっている」

……義盛、じ~ん。(私もこんなこと、言われたいなあ)

大団円か?
義盛が折れ、実朝、政子を前にしては、流石の義時も
「和田殿は歴戦の強者(つわもの)。戦わずに済めば、これ以上のことはございません」
と言わざるを得ない。ただし、不承不承の様子。

実朝と義盛は、これで落着したと、久しぶりに双六に興じようと場を去る。
しかし、政子は安心せず、義時に
「あなたは、まだ、あきらめていない。和田を滅ぼしてしまいたい(と思っている)」
「“鎌倉の為”ですべてが通るとなぜ思う。
 戦をせずに、鎌倉を栄えさせてみよ!」
「あなたならこんなやり方でなくても、皆をまとめていけるはず」

と、《念押し》《正道を示し》《才覚を信じて、励ます》で、畳みかける。
 ようやく姉から解放された義時だったが、義盛が待ち受けていて
「みんな死んじまったなあ。昔からいるのは、俺と平六くらいだ」
「今の鎌倉殿は、賢いし度胸もあるし、何より、ここ(心)が温かい。
 ようやく俺たちは、望みの鎌倉殿を手に入れたのかもしれないぞ」
「政はお前に任せる。力が必要な時は、俺に言え。鎌倉の敵は俺が討ち取るぞ。
 これからも支え合っていこうぜ」


 この時の頼時の様子は、透かした感じ
「透かした」という表現は、「気どる。すます。かっこつけてる」という態度を表しているが、この時の義時は……
自分の心の内を知られるのが嫌と言うか、恥ずかしいというか……う~ん、義盛に心を見透かされるのを避けていることもあるが、素直に心の内をさらけ出すのが恥ずかしい……照れていると感じた。
気持ちをストレートに示し、行動する(態度に表す)義盛がうらやましかったのかもしれない。


そんな気持ちを、時房には見透かされてしまった。
「戦にならずによかったです」(時房)
「和田を滅ぼすには、良い口実だったが…」(義時)
「またまたぁ、思ってもないことを」(時房)
「そんなことはない」(義時)
「和田殿を好きなくせに」(時房)
「おいっ!」(義時)
「あのお方を嫌いな人なんて、いませんよ。
 ……御所の守りを解くように言ってきます」


怒涛の連続攻撃に、ついに、トウを呼びつけ
「和田の館にいる平六(義村)に引き上げるよう伝えよ」と、終了宣言。


透かした態度は変わらないが、どこか、ほっとしていて、嬉しそう。

ところが……平六(義村)たちは、それどころではなかった。
寝返るつもりだったが、巴御前に起請文を書かされ、その起請文を焼き、その灰を神前に供えた水(神水、神酒)に入れて飲む羽目になってしまった。
次週の悲劇(和田合戦)が決定的となってしまった瞬間だが、義村の本当に困った顔は、面白かった。


【個人的な独り言】(独り言は、たいてい個人的なものだが)
 御家人の不満を大きくさせた閑院内裏の修復、和田合戦の要因となった泉親衡の乱は、後鳥羽上皇らの策略。
 特に、泉親衡なる人物を不審に思い、京の仕業ではないかと推測していた。
 それにも拘らず、それを利用して和田一族を排除する思惑があったとはいえ、戦を起こすこと前提に動き、結果的にも鎌倉で大戦が起こってしまったのは、後鳥羽上皇を喜ばすことになる。
 鎌倉の為ではなく、北条の為という思考に囚われた、義時の失態だった。



第1話「大いなる小競り合い」  第2話「佐殿の腹」
第3話「挙兵は慎重に」     第4話「矢のゆくえ」
第5話「兄との約束」      第6話「悪い知らせ」
第7話「敵か、あるいは」    第8話「いざ、鎌倉」
第9話「決戦前夜」       第10話「根拠なき自信」
第11話「許されざる嘘」     第12話「亀の前事件」
第13話「幼なじみの絆」     第14話「都の義仲」
第15話「足固めの儀式」     第16話「伝説の幕開け」
第17話「助命と宿命」      第18話「壇ノ浦で舞った男」
第19話「果たせぬ凱旋」     第20話「帰ってきた義経」
第21話「仏の眼差し」      第22話「義時の生きる道」
第23話「狩りと獲物」      第24話「変わらぬ人」
第25話「天が望んだ男」     第26話「悲しむ前に」
第27話「鎌倉殿と十三人」    第28話「名刀の主」
第29話「ままならぬ玉」     第30話「全成の確率」
第31話「諦めの悪い男」     第32話「災いの種」
第33話「修善寺」        第34話「理想の結婚」
第35話「苦い盃」        第36話「武士の鑑」
第37話「オンベレブンビンバ」  第38話「時を継ぐ者」
第39話「穏やかな一日」     第40話「罠と罠」
第41話「義盛、お前に罪はない」 第42話「夢のゆくえ」
第43話「資格と死角」      第44話「審判の日」


【ストーリー】番組サイトより
 閑院内裏の修復を計画する後鳥羽上皇(尾上松也)は、鎌倉に引き受けさせるという藤原兼子(シルビア・グラブ)の進言に心を躍らせ、慈円(山寺宏一)と共に笑みを浮かべる。
 一方、京から知らせが届いた鎌倉では、重い負担に御家人たちが反発。源実朝(柿澤勇人)からも慕われる和田義盛(横田栄司)が旗頭となり、八田知家(市原隼人)らが集う状況を、義時(小栗旬)が苦々しく思っていた。
 そんな中、信濃で一つの事件が起こり……

脚本:三谷幸喜
コメント (2)
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