私ごときが《羽生九段の勝てなくなった理由》をあれこれ言うのは、おこがましいが……
1.内的要因(本人に起因する要素)
①棋力の衰え
ここでの“棋力”というのは、正味の将棋の実力のこと。つまり、読みの精度(読みの量、深さ、大局観などに基づいて最善手を指す頻度の高さ)とスピード。“能力”とか"脳力”と言うべきか…。
②体力や持久力の減退
「将棋は体力」と故・板谷進九段が言ったように、長時間させるだけの体力が必要。病気や怪我など健康状態も大きな要素。
③モチベーション・気力(集中力)の低下
《将棋が好き……将棋を指したいという気持ち》も肝心。そういう純粋な気持ちの他に、名誉欲・金欲もモチベーションに繋がる。
また、心配事などの精神的要因も集中力・気力に影響する。集中力は、➀や②から影響を受けることもありそうだ。
要因①の「棋力の衰え」も、健康状態に左右されそうだ。まあ、厳密に考えず、本人に起因する要素、つまり、よく言われる「心・技・体」が肝心ということを、もっともらしく言っただけ。
これらは、個人差はあるが、40歳過ぎてから、下り坂の勾配が強くなり始める(②の根本である健康状態は個人差が大きい)。当然、羽生九段も年齢による衰えを掛けることはできない。とは言え、羽生九段の場合は、その降下の具合が少し違う気がする。
「その1」で書いたように、《年度別成績が2016年に5割台に落ち、2018年12月に広瀬八段に敗れて竜王位失冠し、無冠に。2020年に豊島竜王に挑戦するも、1勝4敗で奪取ならなかった》という状況は、ずっとタイトルを保持してきて、タイトル挑戦もしてきた実績、そのイメージが強いだけに、成績の落差が大きく感じてしまう。が、そうではない実績もある。詳しくは、「その3」で。
それはともかく、昨年度は14勝24敗、勝率.368。7月から9月にかけて6連敗。NHK杯で準決勝進出して、希望を感じたが、準決勝の敗戦を含め年度末7連敗(今年度初戦敗局を含めると8連敗)し、順位戦A級陥落……年によって出来不出来はあるにしても、つらい一年だった。
通常の下降曲線を大きく下回った原因は、内的要因だけではなく、外的要因が働いた為と考える。
2.外的要因
④棋界全体のレベルアップ
a.AIによる詳細に及ぶ定跡研究
b.実戦の敗因究明とそれによる更なる定跡の上乗せ
c.対戦相手に対する研究が深くなり、局面を想定して対策が練れるようになった
d.今までの常識を超える大局観や新たなる手筋の開発
これらにより、棋界全体の棋力が上がり、羽生九段が勝つのが大変になった。
⑤羽生九段への畏れや信用の低下
前項目(項目④)の要素cにより、羽生九段に対する事前対策が深くなった。
それに付随して、羽生九段が最善手を続けているわけではない……《けっこう、間違えている》ことが分かった。これにより、羽生九段の指し手を《羽生九段の指した手だから、良い手なのだろう》という先入観がなくなった。さらに言うと、予想外の手を指された時、《そうか、そんな手があったのか!》と少なからず動揺してしまうことがあったが、羽生九段への恐れが低下したことにより、《もしかしたら、悪手かも?》と冷静に分析されている。
⑥羽生九段本人の読み筋への自信の揺らぎ、迷い、大局観の狂いが生じている
(“内的要因”に入れた方がいいかもしれないが、項目④の二次的現象なので、敢えて「外的要因」に入れることにする)
長い項目題名と括弧内の説明により、記述することがなくなってしまった(笑)。
自身の読み筋や大局観への自信が揺らいでいるため、入念に読むようになり、時間とエネルギーを消費して終盤のミスが増えた。
要約すると、年齢的衰えと、対局相手の棋力向上と羽生九段への畏れ低下による“羽生マジック的効果”が薄れ、羽生九段の迷いなどによるエネルギーのロスによるミスの増加が相まって、勝ちにくくなった……
その3「棋戦による相性」に続く
1.内的要因(本人に起因する要素)
①棋力の衰え
ここでの“棋力”というのは、正味の将棋の実力のこと。つまり、読みの精度(読みの量、深さ、大局観などに基づいて最善手を指す頻度の高さ)とスピード。“能力”とか"脳力”と言うべきか…。
②体力や持久力の減退
「将棋は体力」と故・板谷進九段が言ったように、長時間させるだけの体力が必要。病気や怪我など健康状態も大きな要素。
③モチベーション・気力(集中力)の低下
《将棋が好き……将棋を指したいという気持ち》も肝心。そういう純粋な気持ちの他に、名誉欲・金欲もモチベーションに繋がる。
また、心配事などの精神的要因も集中力・気力に影響する。集中力は、➀や②から影響を受けることもありそうだ。
要因①の「棋力の衰え」も、健康状態に左右されそうだ。まあ、厳密に考えず、本人に起因する要素、つまり、よく言われる「心・技・体」が肝心ということを、もっともらしく言っただけ。
これらは、個人差はあるが、40歳過ぎてから、下り坂の勾配が強くなり始める(②の根本である健康状態は個人差が大きい)。当然、羽生九段も年齢による衰えを掛けることはできない。とは言え、羽生九段の場合は、その降下の具合が少し違う気がする。
「その1」で書いたように、《年度別成績が2016年に5割台に落ち、2018年12月に広瀬八段に敗れて竜王位失冠し、無冠に。2020年に豊島竜王に挑戦するも、1勝4敗で奪取ならなかった》という状況は、ずっとタイトルを保持してきて、タイトル挑戦もしてきた実績、そのイメージが強いだけに、成績の落差が大きく感じてしまう。が、そうではない実績もある。詳しくは、「その3」で。
それはともかく、昨年度は14勝24敗、勝率.368。7月から9月にかけて6連敗。NHK杯で準決勝進出して、希望を感じたが、準決勝の敗戦を含め年度末7連敗(今年度初戦敗局を含めると8連敗)し、順位戦A級陥落……年によって出来不出来はあるにしても、つらい一年だった。
通常の下降曲線を大きく下回った原因は、内的要因だけではなく、外的要因が働いた為と考える。
2.外的要因
④棋界全体のレベルアップ
a.AIによる詳細に及ぶ定跡研究
b.実戦の敗因究明とそれによる更なる定跡の上乗せ
c.対戦相手に対する研究が深くなり、局面を想定して対策が練れるようになった
d.今までの常識を超える大局観や新たなる手筋の開発
これらにより、棋界全体の棋力が上がり、羽生九段が勝つのが大変になった。
⑤羽生九段への畏れや信用の低下
前項目(項目④)の要素cにより、羽生九段に対する事前対策が深くなった。
それに付随して、羽生九段が最善手を続けているわけではない……《けっこう、間違えている》ことが分かった。これにより、羽生九段の指し手を《羽生九段の指した手だから、良い手なのだろう》という先入観がなくなった。さらに言うと、予想外の手を指された時、《そうか、そんな手があったのか!》と少なからず動揺してしまうことがあったが、羽生九段への恐れが低下したことにより、《もしかしたら、悪手かも?》と冷静に分析されている。
⑥羽生九段本人の読み筋への自信の揺らぎ、迷い、大局観の狂いが生じている
(“内的要因”に入れた方がいいかもしれないが、項目④の二次的現象なので、敢えて「外的要因」に入れることにする)
長い項目題名と括弧内の説明により、記述することがなくなってしまった(笑)。
自身の読み筋や大局観への自信が揺らいでいるため、入念に読むようになり、時間とエネルギーを消費して終盤のミスが増えた。
要約すると、年齢的衰えと、対局相手の棋力向上と羽生九段への畏れ低下による“羽生マジック的効果”が薄れ、羽生九段の迷いなどによるエネルギーのロスによるミスの増加が相まって、勝ちにくくなった……
その3「棋戦による相性」に続く