英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

相棒 season14 第12話「陣川という名の犬」

2016-01-21 20:30:31 | ドラマ・映画
陣川の悲しみ・怒りの行方は何通りか考えられ、脚本(制作サイド)も迷ったのではないだろうか?
1.怒りを制御し、逮捕し法の捌きに委ねる
2.怒りに任せ、復讐する
 2-1 殺意あるいはそれに近い衝動に駆られ、暴力に及ぶが、途中で自制し踏みとどまる
 2-2 殺意あるいはそれに近い衝動に駆られ、暴力に及ぶが、右京たちに説得され踏みとどまる(自主的)
 2-3 殺意あるいはそれに近い衝動に駆られ、暴力に及ぶが、右京たちに制止される(強制的)
 2-4 殺意あるいはそれに近い衝動に駆られ、殺害する


 その他のケース(自暴自棄で無気力になる、自力では操作できないので右京に協力を求める)も考えられるが、大きく分類すると、上記のようになる。
 そして、「先行する陣川に右京たちが追い付くタイミング」「陣川が暴行に及んだ際の殺意の有無」が絡んでくる。


 今回の場合、殴り続けているところを右京と冠城が制止する「2-3」で、「殺意あり」であった。しかも、制止を何度も振り払うという状況。
 しかし、「正義に燃える熱血漢、思い込みが激しく、単純で、直情型」というのが、これまでの陣川像で、「2-3」に帰結したことに、違和感を感じる。

 大河内の事情聴取の際でも
「殺したい奴を殺すことが、なんで問題なんですか?……なぜ止めたんですか?……僕はあいつを殺したい。もう一回あいつを殺してやるっ!」(机を叩いて、激高)
 右京、陣川を押さえつけ、顔を間近に突き合わせ、
「目を覚ましなさぁいっ!…………元のキミに戻るんです」
「戻ってどうなるんですか……僕は彼女を守れなかった………」
………………………沈黙………………

 陣川らしくない言葉……陣川の悲しみの深さが感じられたが。


 愛した女性が顔を殴られたうえ、切り裂かれるという無惨な姿を見た陣川が、激高し殺意を抱くというのはあり得る。しかし、そこで踏みとどまるというのが陣川ではないのだろうか?私はそうであって欲しかった。
 よくあるシーンだが、……≪犯人をねじ伏せ、拳を振り上げ、振り下ろす。振り下ろした拳は、犯人の頬をかすめ床に撃砕。何度も何度も悲しみ怒りをぶつけ、拳を痛めつける≫……


 
ドラマ冒頭、陣川が連行されるシーンの後
右京「“叶わなかった恋を想うと、コーヒー豆を噛み潰した時のような苦み広がる”…冠城君はそう表現していました」


 このような時系列逆転は、効果的である……しかし………
 確かに、時系列順だと、≪優秀な右京たちが、暴走し先行する陣川に追いつき、陣川を説得するか、制止するだろう≫、≪陣川の拳が犯人の頬をかすめる≫(私が先に挙げたシーン)など予想する視聴者が多いと思われる。
 冒頭の陣川連行や右京の言葉を見聞すると、≪陣川が暴走してしまった≫と思い、視聴者の緊張感が高まるのは間違いない。その意味で、効果的な演出であったと言える。バックミュージックや情景描写も巧みで、ラストシーンにもうまく繋げていた。

 “時系列逆転”の演出は、それによって、ある程度ストーリーが予見できるのが欠点で、私は好きではない。今回の場合、脚本かが意図した「陣川が殺人」の筋書きと、「それがフェイクで陣川と犯人が大格闘しただけで殺人には至らなかった」という筋書きが見えてくる。
 そんな小細工より、正攻法な時系列で、陣川の恋、慟哭、怒り、暴走を真正面から描いてほしかった。そうしたら、今回のような陣川の殺意を伴う暴行シーンに帰結しなかったのではないだろうか?
 ミステリー性を持たせたいなら、陣川行方不明(暴走)から初めて、事の起こりを冠城に語らせてもよかった。
 それに、ヒロインを演じた黒川智花さん。清純な役も似合うが、割と裏(陰)の顔も持つ悪女の雰囲気もあるので、正順の時系列でも、彼女の裏を深読みしてしまうような気もする。


 陣川君に「殺したい奴を殺すことが、なんで問題なんですか?」言わせててほしくはなかった。
 言わせるとしても、もっと陣川君の心情を描いてからにしてほしかった。

 そもそも、フェイクの連続女性殺人犯のフェイクなどいらない。………≪5年ぶりに殺人行為を開始って、5年前、右京は何してたんだよ!≫って突っ込みを入れたくなった。
 それに、“女性にもてなかった”点で犯人と陣川をダブらせ、「あんた(陣川)の気持ちはよく分かるよ」と犯人が言ったが、全然違う!
 陣川は、正面から好きな女性にぶつかってふられた。こそこそ陰から動いているだけ、それに、自分の犯した罪から逃げ回っている犯人とは、まったく違う。

 余分なフェイクの犯人を挿入したため、陣川と犯人の描写が不十分であったし、被害者のさゆみが“足が臭い”とわざわざクレームを入れるというのも、彼女の人格と違和感がある。
 また、犯人に行きつくのが特殊能力というのも、尺が足りず端折った感が強い。
 陣川は「指名手配の特徴を完璧に暗記」。しかも、たまたま、事件の直前に陣川が破り捨てようとした写真の手配犯が犯人であったという偶然。
 また、冠城も「コーヒーの香りと一緒に、その場の画像が記憶に残ってしまうという身体になっている」という胡散臭い能力を駆使していた。
 
 ドラマにつきものの“偶然”もかなりの難易度。
 先述した指名手配の写真の他、「真犯人とさゆみの再会したところを、陣川と冠城が目撃」、「連続殺人犯の標的と真犯人の復讐相手が一致」、「真犯人がさゆみの顔をグーで殴る行為が、連続殺人犯の手口と一致」


 ラストシーンはよかった
 さゆみの陣川に対する気持ちを、右京と冠城が推測し、
 彼女の店で、彼女の用意したコーヒーを、琥珀色の中で飲む陣川。陣川の顔から、やるせない感情が少しだけ融けていくのを、右京と冠城が見守る……



【ストーリー】番組サイトより
逃亡中の連続殺人犯が5年の沈黙を破って再始動
恐ろしい事件が恋に落ちた陣川を復讐の鬼に変える!?

 監察官の大河内(神保悟志)から聴取を受ける右京(水谷豊)と亘(反町隆史)。捜査一課の経理担当で、特命係に在籍したこともある陣川(原田龍二)が、また何らかの事件に巻き込まれたらしい。事の発端は2週間前だった…。

 都内のマンションで女性が殺害された。捜査一課では、殺害の手口から、5年前に4人を殺して逃亡中の連続殺人犯が、沈黙を破って活動を再開したのではないかと見ていた。
 一方、相変わらず惚れっぽい陣川は、事件のことなど眼中にない様子で、今度はコーヒーショップの女性店主・さゆみ(黒川智花)に熱烈な片思いをしていた。思い込みの激しい陣川は、まだ交際もしていない内からプロポーズを決行するが…!?


連続殺人犯vs獲物を追う猟犬と化した陣川公平
陣川の恋が、かつてない衝撃の事態を巻き起こす!

ゲスト:原田龍二 黒川智花

脚本:真野勝成
監督:橋本一

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