英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『相棒season12』 第3話「原因菌」

2013-10-31 21:24:34 | ドラマ・映画
「張りつめた糸は切れやすい」
 そんな言葉が頭に浮かぶ話であった。若干、内容とずれていて、言うならば
「張りつめた糸は緩みたがる」
であろうか。

 今回の食中毒の誘発した原因は
①ドレッシングの原料に生食用ホタテでなく加熱用ホタテを使用したこと
 食品加工会社のミヤ食品加工が経費削減のために誤魔化した
②食品加工機械のメンテナンスが疎かだった
 食品加工機械のメーカーのウラカワ機械が、上海進出のゴタゴタにかまけて、手を抜いた
③レストランが保健所の検査を受けなかったこと
 レストラン・アプリティーボが、忙しいことを理由に検査を拒んだ(営業ができない)
③'保健所が検査を完遂しなかった(③に連動しているので③’とした)
 保健所は営業時間後(深夜)の検査は無理。強硬措置(検査を強行・営業停止)も取らなかった。

 ①②が直接の原因、③③'が間接原因。こうやって原因の要素を書き出せば、利潤追求や職務の怠慢によって引き起こされた食中毒という図式である。
 しかし、今回の件は、「いっぱいいっぱいの(張りつめた)」現代の社会情勢が生み出した食中毒に思えてならない。

 ①のミヤ食品加工の社長は「味がおかしい」とスープトップを分解して調べるような真面目さを持っており、②のウラカワ機械の社長も、「“おいしい”とお客が言ってくれるのが嬉しかった」と、仕事に誇りを持っていた。
 ③のアプリティーボも余ったソース(おそらく食材も)は廃棄し、容器や食器もしっかり洗浄するなど衛生面に気を配っていた。食材にもこだわりを持っていた。(加工品ばかりというのは、どうかと思うけれど)
 ③'の保健所所員も多忙(人員不足)だった。

 どこかの「誤表示」と言い張っているホテルよりはマシだと思う。

右京「要因3つのうち、どこか一つでも機能していれば、食中毒は起きなかったのかもしれませんねえ」
幸子「運が悪かったということですか」
享「運が悪かったじゃ済まない話ですよ」
幸子「みんな目先の利益に拘って、一番大切なお客様のことを忘れてしまったのかもしれませんねえ」
右京「明らかな人災です」
 確かにそうだが、味、食材、利益(単価)、忙しさがギリギリの状態で余裕をなくしていたのが一番の「原因菌」ではないだろうか?このような危うさは、そこらじゅうに存在している。私も他人事ではない。
 最近は雑用を押し付けられることも少なく、自由に(勝手に)捜査していて、「花の里」でくつろいでいる特命係(特に享)には言われたくない気もする。


★今回、刑事ドラマとしては……
 今回は上記のような問題提起で、関係者の事情を描いたため、視聴者が(少なくとも私は)右京の動きに振り回され、置いてけぼりにされてしまった。
 これが、亀山なら右京に疑問点を尋ねるし、尊なら自分なりの解釈を挟むが、今回の相棒は「助手」なので、したり顔でついていくだけだったり、助手なので右京の考えをくみ取り、質問を引き継いだり行動したりするので、ストーリーの進行はスムーズで(脚本家も話を進行させやすい)、更に視聴者は追いつけなくなる。

 享のしたり顔や関係者を糾弾したりするのは、虎の威を借る狐の感があり、良い感じがしない。相棒の先輩のふたりに言わせれば「10年早い」であろう。
 今回、偶然に食中毒の被害者に遭遇し病院に付き添った享だが、必要以上にその被害者親子に関与しすぎたように思う。確かに、そのおかげで、食中毒の原因がドレッシングであることに行きつくのだが、もっと軽症の患者から聴取し分析すれば、その過程に到着できるはずだ。
 まして、患者が1人死亡したと報じられ、病院に急行し、違う被害者と知り「よかった」と呟くのはどうかと思う。呟いたことも酷いが、捜査を放り投げて病院に行くのも感心できない。


☆ちょっと疑問のミヤ食品加工と食品卸商社・丸徳フーズの関係
 丸徳フーズがミヤ食品加工をアプリティーボに紹介してはいるが、ミヤへの発注元というわけではなく、実際は丸徳がミヤに食材を販売しており、丸徳フーズとミヤ食品加工の関係は、ミヤがお客の立場である。
 この複雑な関係が、余計に話が分かりにくくなっている。おそらく、丸徳がミヤに食材を卸していなければ、ミヤが「生食用ホタテ」を使わず「加熱用ホタテ」を使用していることに気づけないからであろう。

☆捜査一課コンビ(ちょっと寂しい呼称だ)の存在価値
 伊丹を静める役目の三浦さんが退職してしまい、伊丹が暴走気味。
 暴走するのは構わないが、相棒が独自のアプローチで真相に迫るのに対し、被害者の足取りや対人関係を調べるなど捜査をして欲しかった。

【その他、気になること】
・食中毒の被害者たちが急激に過激に倒れすぎる。特に享が関わった女性は演技が上手すぎるのか、即効性のウィルスにでも犯されたかのよう。冒頭、、意味なくヘリは飛んでいるし、ビル街の映し方も俯角、仰角などやや不穏な感じ(テロを匂わせる)。
・「あのぅ、忙しいんです。帰ってもらっていいですか?」(保健所所員)
文法というか、使用法が変。とにかく、失礼な言い回しだ。
・被害者・岡谷望の死亡時、むちゃくちゃ痛そう…

【ストーリー】番組サイトより
 「アプリティーボ」というレストランチェーンで食事をした人が、次々と倒れるという事件が発生した。どうやら食中毒の可能性が高いが、そんな騒動の最中、食品卸売商社社員・岡谷望(澤山薫)の他殺体が発見される。

 偶然、食中毒の被害者を助けた享(成宮寛貴)は原因菌の捜査に動き始めるが、右京(水谷豊)は殺人事件の捜査へ。鑑識の米沢(六角精児)によると、望の遺体の首には特徴的な傷があるという。致命傷ではないようだが、何によってついた傷なのか。

 食中毒の原因菌の捜査をする「アプリティーボ」へやってきた享は、そこで何かを探す右京とばったり遭遇する。やはり食中毒事件と殺人事件は関係があるのだろうか? 合流した二人は、「アプリティーボ」が調理済みの食品のみを使っていることを知ると、その加工会社「ミヤ食品加工」へと向かう。

 「ミヤ食品加工」の社長・円(赤塚真人)によると、「アプリティーボ」の料理に使う材料は望の会社から仕入れており、営業の担当は望だった。事件当夜、望が会社に来ることはなかったという円だが、右京はそこでスープやソースを作る「スープトップ」という機械に興味を示すのだが…。

 ほぼ同時に起こった食中毒事件と殺人事件は関連があるのだろうか? 被害者についていた謎の傷跡と料理の味のわずかな変化から浮かび上がってきた二つの事件の犯人とは?

ゲスト:赤塚真人、朝倉伸二、於保佐代子、吉永秀平

脚本:櫻井武晴
監督:和泉聖治

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2 コメント

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Unknown (亀山君恋し)
2021-06-04 15:23:44
保健所が、時々、保険所になってます。
私も、この『原因菌』の回は
好きです
返信する
オワッ! ()
2021-06-04 17:49:29
 亀山君恋しさん、ご指摘ありがとうございます。
ついでに、他の間違いにも気づきました。
「職本加工機械」って何?……おそらく「食品加工機械」ですよね(恥っ)

 亀山君ですが、そろそろ帰国してほしいですね。
返信する

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