よとともに ながれてぞふる なみだがは ふゆもこほらぬ みなわなりけり
よとともに ながれてぞふる 涙川 冬もこほらぬ 水泡なりけり
私の人生とともに夜毎に流れる涙の川は、冬でも凍ることなくしぶきをあげて行くのであるよ。
「よ」に「世」と「夜」、「ながれて」に「流れて」と「泣かれて」、「ふる」に「降る」と「経る」がかかっています。「世」はここでは「一生」「生涯」の意。「水泡」は文字通り水に立つ泡の意ですが、はかないものの喩えともなっていますね。恋心ゆえの涙の川は、その流れが激しいがために寒い冬にも凍ることがない、というわけです。
この歌は古今和歌集(巻第十二「恋二」 第573番)に入集しており、そちらでは第二句が「ながれてぞ行く」とされています。