札幌の中心部にある「ニューオータニイン札幌」。
昭和57年(1982年)8月1日に開業し、昨年40周年を迎えた、札幌市内では歴史のある高級ホテルです。
その正面玄関前に、何やら気になる彫刻作品が。
アルファベットで書いてますが「なんもさストーブ」と読むようです。
「なんもさ」とは、北海道弁で「大丈夫」「どうってことない」「気にすることない」というような意味で、例えば誰かがお詫びの言葉を口にしてきたときに、「なんもさ」「なんもなんも」と返すのが、道民の会話では定番といってもいい流れになっています。
「1868」とありますね。これは作られたのが西暦1868年ということなのでしょうか・・・?
おやおや、かの榎本武揚の名前がありますよ。
「蝦夷共和国」とは、かの戊辰戦争のとき、蝦夷地を支配した旧幕府軍勢力による事実上の政権の俗称とされていますが、その名前が書かれているということは、何やら深いご縁でもあるのでしょうかね・・・、
って、普通は思うところでしょうけど、実はそんなことはないようで、これは、制作者の、言ってみればジョークのようなもののようです。
このストーブの形は「ダルマストーブ」と言われているもので、記録によると、明治中期から、主に北海道内の鉄道車内に設置されていた丸形のストーブが、大正期に入り、灰取り用の引き出しを大きくし、底を平らにするという、この写真のような形で普及するようになったとされており、刻まれている「明治元年(1868年)」には、このような形のストーブはそもそも存在しなかったと言われています。
つまり、榎本がこのストーブを作らせたということでも勿論ないということになりますが、刻まれている「12月15日」という日付は、蝦夷地全島平定の祝賀祭(蝦夷地領有宣言式)が催され、榎本を総裁とする仮政府の樹立が宣言された日とされていることから、要するにこの彫刻は、その蝦夷共和国と、その総裁たる榎本武揚に敬意を表するような意味合いでも込められているということなのでしょうかね。
因みに、この彫刻の作者は、流政之さんという、五年前に亡くなられた彫刻家さんですが、長崎県出身で、香川県にアトリエを構えていたという、北海道とはこれと言って縁のない方だそうです。
また、設置年も、当然1868年などではなく、ニューオータニイン札幌と同じ、1982年だそうです。
本当、どういう意味が込められているのでしょうか。想像してみると面白い気がします。