まず、この本を読もう。
at プラス叢書04
白井聡『永続敗戦論-戦後日本の核心-』(太田出版)
この本の叙述には、混乱の真っ只中だからこそ考え続けねばならないという姿勢を貫く「倫理」がある。
「原発はないほうがいいが、直ぐには脱原発は無理だ」
とかいった牧歌的な「現実感覚」が吹き飛ぶような、この国が徹底的に依拠し続けている「侮辱」の構造についての極めて激しく、しかも鋭くかつ真っ当な分析がつづく。
もし「怒り」を語るとするなら、この怒りをこそ共有したい。
そう思った。
ここには日本を戦後以降「永続敗戦」し続けている、という冷徹な分析がある。
おそらく、この世代でなければこれは書き得ない種類の文章だったろう。
混乱し続けている「今」だからこそ、この文章は読まれなければならない。
まあそれでも
「もう、原発事故に関する『混乱』など過去のものだ」
と考えるような「日本人」には無縁なこと、なのかもしれないけれど。
そんな忘却装置が機能し続けている中で、このような文章を書くことには(特に学者の場合)覚悟が要るのかもしれない。
白井氏が後書きで引用しているガンジーの言葉が胸に刺さる。
「あなたがすることのほとんどは無意味であるが、それでもしなくてはならない。そうしたことをするのは、世界を変えるためではなく、世界によって自分が変えられないようにするためである」ガンジー
内容はまず読むべし。
とりあえず簡単にあとがきから紹介するなら、
私たちは戦争責任をきわめて不十分にしか問うていないこと、そしてその戦後日本の問題は、この原発事故の問題とも深く関わっている
ということ。
特に目新しいというわけではない視点だ。
しかし、尊厳を賭けてこの「侮辱」のことを考える「知性のクリアさ」に、読者はきちんとますは驚くべきだ。
ぜひ一読を。
ちなみに白井聡は社会思想・政治学が専門。
『未完のレーニン』
『「物質」蜂起をめざして-レーニン、<力>の思想』
徹底的にレーニンを読み直すその鋭く深く明晰な知性が、日本を読むとこうなる、という本でふ。