①夫(つま)が笑み指の重みを我が魂に刻みつけたる病床の夕(た)
②病妻を気遣い先に転ぶ我を 「年ね」と笑う横顔愛(かな)し(ま)
(た)は亡妻、(ま)は夫の私。
4年半前に手術した卵巣癌が、もうすぐ5年というところでマーカーが急激に上がり、検査をしている時の歌。
思えばこの最初の一首から、妻の不安というか 「魂」の揺らぎが感じられる。その時は 「気弱になった」というよりは 「無理をしなくてよくなった」というような表情として受け止めていた。
両方の感情があったのかもしれない。私の歌は、日常の二人のやりとりを写したもの。