以下は、昨日聴いてきたシンポジウムのメモです。例によって単なる個人的な忘備録なので、内容は全く保証の限りではありません。いくぶんかは妄想かも(笑)
新外交イニシアティブ(ND)シンポジウム
「安保関連法制を考える」
---集団的自衛権とこれからの外交・安全保障---
日時:2015年4月3日(金)18時~19時45分まで
場所:衆議院第一議員会館
私は何も状況を知らずに参加してきたのだが、議員会館を使って国の中心地(官邸の隣)で開催されるシンポジウムだから、当然開催自体に政治的な意味がある。
まずは安倍首相=官邸側が進めている安全保障に対するアンチ勢力の国会議員がシンパについているのだろう。民主党や維新の党の議員も参加していたようだ。
事務局長は 猿田佐世。資料には
1977年生まれ。日本及びニューヨーク洲で弁護士。対米ロビー活動を行う
とある。
立場としては立憲主義の観点から、安倍政権が十分な議論なく憲法9条の意義を変更したことに反対し、同時に中国・韓国との外交を重視して、アジア・太平洋地域の安定を図る、という方向。
前者においては憲法について知るほとんどすべての知識人の賛同を得られるだろうし、後者については、韓国や中国が(くだらないがしかし無視できない)政策として利用してもいる
「ダレガトクスル?ナショナリズム」
のレベルに反応してしまう「嫌韓中」の日本人以外にとっては、まあ常識の範囲内だろう。
どうしても大国と戦争したいなら別ですけどね。勝てない勝負を準備するだけじゃあ話にならない。安倍政権のようなムチャは、コントロール不可能な領域を「法律内」に抱え込んでしまう。この日の主題は明らかにそのバランスを欠いた安倍政権の安全保障法制を批判する動き、として、その限りでは共感できるものだった。
さて、以下はその具体的な内容のまとめ。いきます。
司会(猿田)から
外交に多様な声が反映されていないから、NDの活動している。(国民的議論を高めるための)キャッチコピーを募集中。
柳澤協二氏(以下「柳」)の報告
(柳)
与党協議が行われたが、何をしたいのか分からないし、方向性も見えない。
1~8の視点で考える。
まず、
1,原則事項
ア、国際法上の正当性に対する疑問がある。
国連安保理の議決がない場合でも、自衛隊は活動できるようになる。
その「自衛権行使」の正当性は?人道介入?
イ、国会関与による民主的統制
米軍の作戦を事前情報開示する、などできるのか?
ウ、自衛隊員の安全確保
非戦闘地域に限定・自己保存型に限定したから可能、というが、治安任務・警護と安全は背反
している。
非戦闘地域だから安全というのは幻想だ。自己保存型で銃を持ったら、現地の人に銃を向けることになる。
それが最悪。銃を使わなければならない状況で自衛隊活動をやるのは論外。
イラク派兵とは全く次元の違うところに自衛隊を送り込むことになる!
ア~ウを考えると、与党協議会の「具体的方向性」など、絶対できるわけがない!(柳)
2,グレーゾーン事態
「95条(自衛隊法)を踏まえ、わが国防衛力を構成する他国群の武器を防護」
とある。しかもそれを現場の判断でやる、という。
だが、95条は、国内争乱の時に暴徒に武器をうばわれないことを想定しているもの。
それなのに、もし公海上で他国の海軍に武力を使うこと自体が問題。
相手から見たらそれはあきらかに「戦争」です。
このとき、アメリカが某国との戦闘状態に入っていったら、「現場の判断」で歯止めができるのか?きわめて疑問だ。通常の演習ではなく
威嚇的演習の場合はキンチョウが激化するだろう。
具体的方向性対応ができるようになっているとはとても思えない。
3,他国軍隊への後方支援
「周辺事態」から「重要影響事態」に条件が変わった。
これはいったい何?
「周辺事態」というのは、このままいけば日本有事になる、という考え。
「周辺」の限定がとれると、地理的拡大が避けられない。
いわゆるシーレーン防護か?アメリカ軍の後方支援。
だが、相手国から見れば明らかに敵対行為。
どこを想定しているのか分からないが、ニホンに近い大国だろう。
だとすれば大国(中国)は、日本にミサイルを数発撃てばいいってなことになる。
つまり、日本有事を呼びこむ地理的範囲が、結果として広がるリスクがある、ということ。
4,国際平和維持・秩序維持(1)他国軍支援恒久法
なにがやばいって、これはメチャクチャやばい。前線に弾薬がないとしたら、「敵」はこの補給路をまず叩くに決まっている。
前線基地への弾薬輸送、これが国連決議なしでいい、といっている。だが、対ISISではない、ともいっている。じゃあ何をするの?
5,国際平和維持・秩序維持(2)PKOなど。
国連統括外活動、という。つまり、停戦合意に従わない状況だ。これは例えばアルカイダ。
相手からしたら完全に敵対する軍扱いになる。
6,新3要件による集団的自衛権
新3要件具体化の基準は?
こんなものは具体化できるわけがない。もともと無理筋。書けない。となると、「戦闘できない」じゃなくて、政府の最良で「戦闘政府できる」になってしまう!!!
(筆者注:たしかに、柳澤氏の言うように、他国で戦闘に参加する理由って、憲法前文に関わる理由とか、想像できないよねえ。むしろ、他国における戦闘が不利益をもたらすことなら簡単に想像できるが)
コトバンクより引用開始
政府は閣議決定で、集団的自衛権を使うことを「憲法第9条の下で許容される自衛の措置」と位置づけた。前提となる「武力行使の新3要件」に、まず「我が国に対する武力攻撃が発生した場合のみならず、我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生」と他国での戦争参加を明記。さらに憲法前文の「国民の平和的生存権」や13条の「生命、自由及び幸福追求権」に触れ、「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合」に、「必要最小限度」の武力行使ができるとした。
(2014-07-06 朝日新聞 朝刊 3総合)
コトバンクより引用終了
新3要件は論理的に言えば
武力攻撃未満、予測事態以上、
ということになるのだろう。しかし、これは何?具体的に説明できないだろう。
こういう場合に、もし軍事行動をやらないなら法律は不要。
いったん法律が作られたら、その法律目一杯使うとどんな事態が起きるのか、どんなリスクがあるのか、と考えるのは(法律論)の常識。
そのリスク認識がない。政府は十分にそのリスクの議論をしようとしていない!
8,イラク派遣の現実
イラク派遣時のサマワは比較的平穏だったが、それでも宿営地への砲撃やIEDの脅威はあった。
ひとりでもケガをしたら内閣がもたない、という認識があった。
そして結果として一発の弾も撃たなかった。
いつ止めるのかを考えるのも容易ではない。
イラク派遣は自衛隊と日本社会の限界なのではないか?
イラク後遺症として、派遣された29人の人が自殺している。これは非常に高い数字。
自衛隊の人の犠牲は政治にも返ってくる。それなのに、現場の知識もなければ覚悟もない。
70年戦争しなかった利点を生かすべき。中東に行ってこんにちは日本ができることはない!
ここはしばらく別の形で日本の国際的な高検を考えるべきだろう。
(以上、前半は柳澤氏の報告でした)
以下後半に続く。