60歳からの眼差し

人生の最終章へ、見る物聞くもの、今何を感じるのか綴って見ようと思う。

婚活

2010年02月12日 11時42分31秒 | Weblog
最近耳にする「就活」や「婚活」という言葉、それを聞くと学校の「部活」を連想してしまう。
だからなのか「婚活」という言葉に、味気なさや、義務的なイメージを感じてしまうのである。
戦後の意識の変革の中で、「恋愛の自由」という価値観が定着し、結婚は当人同士の
自由意思で決めるものになった。だから本来なら明るく楽しく,、希望に満ちたことだろうが、
今は「婚活」が若者にとって「就活」と同じように、大きな壁になっているように思われる。
「なるべくいい条件の相手を見つける」それが「婚活」の最大の目標になってしまったようだ。

自分の周りを見ても「望む相手がいなければ結婚はしたくない」というスタンスを取る人が
多くなったように思うのである。しかし、一旦そういうスタンスを取ってしまうと、周りの人にも、
自分に対しても妥協しづらくなってしまい、結婚に対して柔軟さを失ったまま婚期を逸して
しまう人が多いようにも思うのである。「本当は結婚しておきたかった」それが結婚しなかった
彼らの本音だと思うのであるが、結局当初設定した条件から抜け出せなかったのだろうと思う。
それは「結婚活動」の「活動」という意味合いが強くなって、競争心、世間体、プライドが
邪魔をして本来の自由意志による結婚という、気軽さが無くなってしまったからだと思う。

我々の時代は結婚をするとかしないとかの選択肢はなく、人生を過ごす前提になっていた。
「結婚は妥協の産物」「結婚なんて誰としても一緒」と言われ、周りが寄ってたかって心配し、
面倒を見たものである。しかし今は周りの大人達のお節介は嫌われ、昔ながらの見合い
結婚は極端に少なくなっているようである。これは結局若い人達の出会いの機会を少なくし、
結婚への道を遠くしているようにも思われる。そのため「結婚」は本人の自助努力が主体に
なり、努力を怠ると(特に男性は)結婚もできなくしまったように思うのである。

私の近くに36歳の独身男性がいる。男性のボーダーラインは35歳という意識があるのか、
彼も2~3年前から、「このまま行くと結婚できないかもしれない」という焦りが出てきた。
インターネットで募集する合コンに参加したり、会社の社員の友達を紹介してもらったり、
意識して出会いの場を作って来た。しかし、なかな良い相手とは巡り合えなかった。
彼はどちらかと言えば内向的な性格、会社の中でも、友人との付き合いでも、相手との
調和を気にし、何時もそのバランスを取ることを考え、自分を抑えて行くタイプである。
特に打ち込んでいる趣味もなく、休日なども時間つぶしでスロットに行っているようである。
特段の癖もなく家庭的にも問題はない、すこし気の弱い標準的な若者という感じである。
しかし、その標準が女性から見ると印象に残らず、魅力に欠けるところなのかも知れない。
合コンに行っても、アピールポイントがないのか、積極性に欠けるのか、不発が続いた。
彼はそんな反省から、出会いの場を結婚相談所に求めるようにしたのである。

彼が入会したのは楽天の「O-net」、今は結婚相談所もインターネットの活用が主流で、
入会に当たっては顔写真はもとより、家族状況から学歴、経歴、趣味、相手に対する
条件や希望、好みと、結婚に関係するすべてのデーターをコンピューターに打ち込む。
しかも入会に当たっては住民票はもとより卒業証明書、給与証明書の提出を求められ、
厳格さを期しているようである。入会金は10万円、月々の費用は1万円である。

仕組みはいかにも今風で事務的、登録会員の中からコンピューターが自分に適した人を
毎月6人づつ紹介してくれる。紹介された人に関しては顔写真を除いて概要が分かる。
それを見て6人の中から「逢いたい」と思う人に自分の意思を伝える。
その後、相手から「逢っても良い」というレスポンスがくれば、その時点でお互いのスペックの
全部(顔写真やアドレスも含め)がオープンになる。後は当人同士で連絡を取りあって、
逢う時間や場所を決めて逢うという段取りである。逢って気にいらなければサインを出すと、
リストに×マークが着きその相手との通信はクローズされる。

彼は昨年9月から入会した。9月10月と各6人づつ計12名の候補者の紹介を受ける。
その中から何名かの人を選んでオファーしたのだが、待てども一向にレスポンスがなかった。
11月は6名の候補の3名に「逢いたい」のサインを出し、2名から「OK]の返事を貰った。
お互いの都合から、結果的にはその一人と12月の第2週の土曜日逢うことになった。
お昼を一緒にし、相手に好感をもった彼は翌週は夕食へ誘い、その次は映画にと誘う。
年が明けてからは浅草の浅草寺へ初詣に行き、1月の終わりに「お付き合いしたい」と
正式に申し入れ「OK」の返事をもらった。彼にとってはトントン拍子で夢のようである。

彼女は入会して初めて逢った人である。彼はデートの場所をあれこれと考えて下見し、
車で彼女の家の近くまで迎へに行き、帰りは近くまで送り届ける。もう後がない彼は
「今までこんなに一生懸命になったことがない」と言うほど、全力を上げている。
一方の彼女は28歳。30歳までには結婚をしたいという強い願望を持っているようだ。
今の環境では相手が見つからないと考えて、この「O-net」に登録したようでようである。
登録したのは一昨年、彼と逢うまでに入会して1年経過して、その間に何人もの人と
逢っていたであろう。しかし良い縁に巡り合えず、マンネリになっていたのかもしれない。
36歳で焦りがある彼と、1年間「O-net」でやったが、結果が出ず28歳になった彼女、
どちらもが「このあたりで良しとするか」という妥協の気持ちが出てきてもおかしくはない。

先日彼が「彼女が本当は私をどう思っているか解らない。恋愛からのスタートでないから、
まだお互いが本音をさらけ出せないもどかしさがある。だけど、もう決めたいと思っている。
今度のバレンタインにチョコレートを貰ったら、ホワイトデーにプロポーズしようと思う」と言う。
付き合い始めて3ケ月、少し早いようにも思うのだが、焦る2人には時間が背中を押して
くれるのかもしれない。

結婚への道筋はどんな道から入っても良いのだろうし、また、長い付き合いをしたから良い
というものでもないのだろう。「結婚は所詮見切り発車」のようなものだろう。良い結婚とは
結婚後、お互いがどこまで妥協しどこまで努力するかに掛かっているのかもしれないと思う。
夫婦仲が悪い私に唯一言えることがあるとすれば、それは「どんな形であれ結婚した方が、
しないよりは良い」ということだけである。