Fさんの日々の記録と山歩き

 山歩きが生き甲斐の団塊世代オッサン、ある事無い事日々感ずるままに綴っていこうと思います。

長次郎谷から剣岳登山(詳細)

2014年08月05日 | 山歩き

8月1日(金)  室堂から剣沢キャンプ地   天気=晴れ後曇り

 

08:05室堂→ 08:45~50雷鳥沢→ 10:05~17別山乗越→ 10:40剣沢キャンプ地

 長次郎谷を意識したのは以前観た映画「点の記」の影響が大きかった。あの美しい映像を観て絶対登ってやろうと思っていた。残雪の多い7月に行きたかったのだが天候不順等で今日まで予定がずれ込んでしまった。

 06:50立山駅発のケーブルカーに乗り室堂には8時前に着いた。去年夏来た時は土砂降り雨だったけれど今朝は見事な青空で嬉しくなってくる。大勢の観光客や登山者に混じって遊歩道を進む。

室堂からイザ出発

地獄谷と奥に奥大日岳

 雷鳥荘辺りから雷鳥沢越に行く手の別山乗越を仰ぎ見る。標高差5百mの雷鳥坂がきつそうで、久々の重荷だからバテないか一寸心配だ。雷鳥沢に架かる架橋を渡り雷鳥坂の登りに入る。

雷鳥沢越しに別山乗越方面

 最初の数百mの雪渓で、後は尾根沿いの夏道を登って行く。陽射しはキツイが吹く風は涼しい。登るにつれ足下の雷鳥沢キャンプ地が小さくなっていく。雷鳥沢から1時間15分程で別山乗越に着いた。鋭い岩峰の剣岳が去年と同様の姿で迎えてくれた。

別山乗越から剣岳

 一息入れていると隣の男性が「山はお詳しいですか?」と声を掛けてきた。そして「鹿島槍は見えますか?」と問うてきた。改めて後立山の稜線を眺めると白馬から五竜までは見えるものの、鹿島槍は別山の陰に隠れて此処から見る事はできない。男性は「長いですよねえ」と呟いた。

 11時前には剣沢キャンプ地に着いてしまった。ここは景色良し、水は美味し、広々して心地よい環境と私にとっては最高の山岳キャンプ場である。欠点はトイレとビールを売っている剣沢小屋が遠い事くらいか。

 剣沢キャンプ地のmyテント(オレンジ色)から剣岳

 標高2千5百mなので気温は快適だが陽射しがきつくテント内では温室効果でとても暑い。午後は持参した単行本の読書で時間を費やしたが急に高所に来たせいか何となく気分がスッキリしない。

キャンプ地から午後の剣岳(実に高く見える。)

キャンプ場の管理施設

剣沢キャンプ地から別山方面

 スッキリせぬ理由はもう一つ、登山で一番大事なアイテム雨衣を忘れてきたのだ。雨ばかりか防寒対策にも必要なので、この失態には落ち込んだ。明日雨が降らぬのを祈るばかりである。夕食後早めに就寝したが、隣のテントの小太りオヤジのイビキが煩くて中々寝付かれなかった。

 

 

 

8月2日(土)  天気=晴れ後雨

 

05:11剣沢キャンプ地→ 05:55平蔵谷出合→ 06:09~20長次郎谷出合→ 07:20熊の岩下→ 07:36~45熊の岩上→ 08:30~40長次郎のコル→ 08:54~09:10剣岳→ 10:27平蔵の頭→ 10:42~48前剣→ 11:21~30一服剣→ 11:44~48剣山荘→ 12:15剣沢キャンプ地

 

 好天の朝を迎えてホッとする。気温も割合暖かい。必要な装備だけザックに詰めAM5時過ぎにキャンプ場を出発する。剣沢小屋まで降って右へ曲がり真砂沢小屋へ向かう道を下降する。やがて剣沢雪渓の末端に着き、此処で12本刃アイゼンを装着する。

 別山尾根から剣岳へ向かう登山者は大勢いたのに、早朝の剣沢雪渓には誰も居ないので少し心淋しくなる。平蔵のコルへ突上げる平蔵谷出合に着いて谷の上部を見上げたが登山者の姿はなかった。

 平蔵谷出合

 平蔵谷出合から更に15分程降って、長次郎谷の出合に着いた。両側の切り立った岸壁が威圧的だ。此処でミルキー2個と水を飲み、我が身に気合いを入れて谷を埋め尽くした雪渓を登って行く。

長次郎谷出合

 しばらくするとザイルに繋がれた男女のペアが降って来た。「早いですね。」と声を掛けると「落ちてきたブロックが女性に当り負傷したので断念する。」と言う。大した負傷では無さそうだが、気勢を削ぐような事を聞いてしまった。

長次郎谷下部

 その後黙々と雪渓を登って行くが、私の見る限りで落下物の発生は無い。あの女性は相当運が悪かったようだ。やがて上部に「熊の岩」が見えてきた。登るにつれ、それがだんだんと大きくなる。「熊の岩」下に幾人かの登山者が居るのを確認し少しホッとした気分になる。

遠くに熊の岩が見えてきた。

 出会いから約1時間で巨大な岩の塊「熊の岩」下に着いた。先程見えた登山者達はまだそこらに滞っており、様子からどうも山岳ガイドが引率するパーティのようだ。ガイド×2人、お客×4人の構成で3組に別れて、それぞれザイルに繋がれ熊の岩の左側から登り始めた。

長次郎谷の名所「熊の岩」

熊の岩下から鹿島槍方面

熊の岩左側からザイルで繋ぎ登り始めるガイド登山の人達

 熊の岩から上部の稜線まで斜度30~40度の急な雪渓で腰を下ろして休む場所は一切無い。私は熊の岩の右手を迂回して登って行く。こちらだと距離は長くなるが、熊の岩上部が割合平坦なのでそこで休憩でき、急な雪渓の距離が短縮できる。

 岩上部の平坦部には緑色のテントが二張りあり岩登りの人達のものだろうか。今日、長次郎谷左俣コースを登る登山者はガイド引率された3組のパーティと私だけのようだ。熊の岩上部から休憩がてら彼らを見ていると急斜度の登りに苦しんでいるようで歩みが牛歩のごとく遅い。

急な雪渓を登るガイド登山の人達

 そういう私も緊張のせいか食欲は無く水とミルキーだけ口にして彼らを追って出発する。トラーバス気味に左俣へ入り急な雪渓をコツコツと登って行く。右側は八つ峰、左側は源次郎尾根の岩峰群、その日本離れした壮大な眺めに、これが登山の醍醐味と気分も高揚する。

八つ峰岩峰群

 別に急ぐつもりは無かったが黙々と脚を動かしていたら、いつのまにか3組のパーティに追いつきそして追い越していた。体力別に編成したのか各パーティ間の距離も随分開いている。今年は雪渓の状態が良いようでクレバスは殆ど見掛ない。

ガイド登山の先頭に追い付いた。(背後は源次郎尾根)

熊の岩(左の台地)を振り返る。

 上を見上げると長次郎のコルがだんだんと近づいてくる。「ヨイショ、ヨイショ」と気合を入れて登り、熊の岩上から45分で長次郎コルに着いた。懸念していたシュルンド(雪渓と大地の隙間)も小さくて容易に越える事ができた。

長次郎のコルが近づいてくる。

コル直下から長次郎谷を振り返る(ガイド登山の人達が小さく見える。)

雪渓末端のシュルンド

 V字型のコルの反対側には北方稜線の山々を眺める事ができた。コルの北側は鋭い長次郎の頭のピーク、剣岳へは南の岩尾根を登って行く。岩尾根には目印の類は全く無いが、薄ら踏み跡があるので何となくコースは判る。一箇所池の谷側に切れ落ちた場所があり、その通過時だけは少し緊張した。

コルから北方稜線の山々

コルから剣への岩尾根

剣への登りから長次郎コルと長次郎の頭

 崩れ落ちそうな雪渓を渡って剣岳の一つ手前のピークに着くと男性が1人いたので写真をお願いする。ここからもう剣岳山頂の喧騒が伝わってくる。コルから約15分で待望の剣岳山頂に到着した。

剣岳手前のピークで

剣岳山頂

 念願のコースを踏破し感激の思いと行きたいところだが、山頂はお祭り騒ぎの状態で足の踏み場もない程だ。ザイルやカラビナ等登攀装備の人が多いからバリエーションルートで来た人と思ったら一般ルートでお客を連れてきたガイドの人達であった。

山頂の賑わい

山頂から八つ峰と長次郎谷

 少々白けた気分になったので早々に山頂を後にする。難所「カニの横這い」上部で休憩の人がやけに多いなと思ったら何と渋滞で動けないとの事。結局40分以上待たされた。ポカポカ陽気だからいいようなものの、もし雨でも降られたら雨具を持たぬ私など悲惨な目にあうところだった。自力で登り降り出来ぬ人は混雑する休日に剣岳へは来ないで欲しいと思う。迷惑もいいところだ。

カニの横這いの上部渋滞待ちの人々がいる。

やっと動き始めた。

難所「カニの横這い」(青色ヘルのおじさんも苦労していた。)

カニの横這い下部

 一般ルートとはいえ、鎖場やアップダウンの多い別山尾根コースもけっこうキツイ道だ。平蔵の頭、前剣、一服剣を越え、眼の下に剣山荘が見えた時はホッとした。剣山荘からは雪渓やお花畑が広がる平坦な道を伝ってお昼頃、剣沢小屋まで戻ってきた。

平蔵の頭へ向かう。

一服剣を越えて剣山荘が見えてきた。

剣山荘から剣沢小屋へ向かう道

 此処でビールを飲むか。それとも我慢してテントを撤収し室堂へ下山するか葛藤が始まる。結局ビールを欲する気持ちが勝り、小屋で2本の缶ビールを買ってテントに戻る。

 さっそくビールを痛飲する。「カーッウメーなあ。」この一瞬が登山の一番喜びとする瞬間かもしれない。今晩もテント泊りになるが、熱帯夜の下界にいるよりここの方が快適だし、午後には雨も降ったので賢い選択だった。今夜はイビキオヤジも居らずグッスリ熟睡する事ができた。

 

 

 

 

8月3日(日)  天気=曇り

 

06:05剣沢キャンプ地→ 06:47~52別山乗越→ 07:37~42雷鳥沢→ 08:20室堂

 

 今日は室堂に戻るだけなのでノンビリした気分、テントを撤収しAM6時過ぎテント場を出発する。今朝の空は雲が多くヒンヤリして登山する身にはありがたい。40分程で着いた別山乗越で剣岳ともお別れ、西に方向に富山湾と能登半島がクッキリと見えた。

出発の朝、myテントの前で

別山乗越から奥大日岳の背後に富山湾と能登半島が見えた。

別山乗越から室堂平

 登りはきつかった雷鳥坂も降りは楽で、乗越から45分程で雷鳥沢に降り立った。むしろきつかったのは雷鳥沢から室堂への最後の登り、喘ぎながら登って8時20分に室堂ターミナルに到着した。

受付を済ましてから着替えようと思ったら美女平へのバスがすぐ出発するという。汗だくのままバスの人となる。汗臭くて隣の人にはご迷惑と恐縮した。バスからケーブルカーに乗り継ぎ10時前に立山駅に降立った。標高が下がって空気がムッとする感じだ。

駅前の駐車場に戻り荷物を車に収納していたら、「アー、ユー、リ~フ」と派手なオバちゃんに突然話しかけられた。「葉っぱがどうした?」とビックリしたが、落ち着いて聞いたら「貴方は出発するの?」と言ってるようだ。どうも香港辺りから来た人みたいで、私の後に車を駐車させたいらしい。日曜日の午前中とあって駐車待ちの車が溢れかえっているのだ。駐車場を譲ってあげたら「サンキュー、サンキュー」と大喜びだった。

立山駅を出発すると有峰集落の亀谷温泉「白樺ハイツ」で山の汗と疲れを流す。ランチ付で1000円の入浴料はリーズナブルだった。つい生ビールも飲んでしまったので夕刻まで逗留する。

帰りの駄賃に明日は頸城山塊の焼山を登る計画だ。しかし久々に重荷を背負ったのが原因なのか腰に違和感があり、腰痛再発ではと心配になる。でも予定に従って今夜は上越市の道の駅「うみてらす名立」まで行き車中泊とする。

PM6時過ぎ道の駅に着いたら凄い賑わいになっている。運が良いのか悪いのか今宵花火大会が催されるという。結局遅くまで花火見物につきあわされた。翌朝起きても腰の違和感は減じていない。腰痛の再発を防ぐため登山は諦め我が家に戻る事にした。妙高の山々には黒雲が纏わりついていたから、たとえ体調が良くても登山は無理だったかも知れない

コメント
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