Fさんの日々の記録と山歩き

 山歩きが生き甲斐の団塊世代オッサン、ある事無い事日々感ずるままに綴っていこうと思います。

日高山地、カムイエクウチカウシ山登山(詳細)

2015年09月04日 | 山歩き

8月22日(土)     天気=雨後曇り

11:55札内ヒュッテ駐車場→ 12:57~13:05七ノ沢出合→ 14:15仲ノ沢出合→ 14:55八ノ沢出合(幕営)

 

 帯広で迎えた朝は雨が降っていた。これじゃ登山は無理と半ば諦め、観光に行く妻を中札内村美術村まで送って行く。しかし登山口の様子だけでも確認しようと札内川沿いの道を遡り、登山口ゲートのある札内ヒュッテへ向かった。

 トンネル入り口がゲートで閉じられた札内ヒュッテの駐車場には10台程の車が停まっている。全てカムエクの登山者じゃなかろうが、かなりの人が入山している様子だ。

 札内ヒュッテ登山口ゲート

 車の中で様子をみてると徐々に雨が止んできた。眼下を流れる札内川もそれ程増水していない。行ける所まで行こうと、この日の為に用意した折畳みの自転車を組立てゲートを潜って出発する。

 舗装された道は約二つ目のトンネル出口までの約1キロだけ、そこから先は砂利道だ。タイヤがパンクせぬよう恐る恐る走るのでスピードが全然出ない。登り坂は自転車を押したから、七ノ沢出合まで約1時間も掛かった。それでも歩くよりは30分以上時間を短縮できただろう。

 七ノ沢(自転車残置)

 自転車を残置し、ここからか札内川の遡行が始まる。七ノ沢の河原でテント干ししていた5~6名のグループに「カムエク登ったんですか?」と訊ねると、「天気が悪くて三股から引き返した。」との事だ。

 七ノ沢の河原(奥へ進む)

 七ノ沢からしばらくは札内川の左側(右岸)を歩いて行く。しばらくすると札内川本流の渡渉地点、膝上くらいで躊躇する程の水流だ。でもここを渡らねば先へ進めぬから歩き易そうな所を選んで渡った。

 最初の本流渡渉地点(下山時)

 この先は川の右側(左岸)沿いを進んで行く。目印が点々とあるのでそれを見失わないよう注意して進む。踏み跡を外さなければ、それ程支障なく歩いて行ける。対岸にある仲ノ沢を過ぎて、しばらくすると再び札内川本流の渡渉地点、こちらの方が水量が少ないので幾分楽だ。

 八ノ沢へ続く踏み跡

 

 ここを渡ると川の左側(右岸)を進んで行く。渡渉地点から八ノ沢まではそんなに遠く無く、やがて焚き木の煙が漂う八ノ沢出合の幕営地に着いた。登山口ゲートを出発してから約3時間の道程だった。テントは5張程張られており、

 八の沢近くの渡渉地点

 焚き木の周りを囲んでいた6名程の人達は大阪の登山グループで、今朝山頂へ向かったが天気が悪く三股で引き返したと言う。「明日天気が良さそうだから一緒に登りましょうよ。」と言ったら「日程に余裕が無いから下山する。」との返事。

 八の沢幕営地

 夕闇迫る5時過ぎ頃、前後を山岳ガイドに挟まれた4~5名の登山者グループが戻って来た。彼(女)等は登頂したそうだ。疲れた顔に満たされた笑みが伺える。その中には明らかに私より高齢もおり、彼に登れる位なら俺だって登れると少々勇気づけられた。しかし幕営地が賑やかでよかった。他に誰も居なかったら、心細くて眠れなかっただろう。

 

 

 

8月23日(日)     天気=曇り時々晴れ 

04:25八ノ沢出合→ 06:06~12三股→ 07:35~50八ノ沢カール→ 08:15~20稜線コル→ 09:00~22カムイエクウチカウシ山→ 09:59稜線コル→ 10:20~25八ノ沢カール→ 11:32~42三股→ 13:10~40八ノ沢出合→ 14:13仲ノ沢出合→ 15:05~10七ノ沢出合→ 16:07札内ヒュッテ

 

 未明の3時半頃起床してパンとコーヒーだけの朝食を済まし、4時半頃に出発する。最初は八ノ沢右側(左岸)の踏み跡を進むがすぐに沢に出る。その後は沢沿いに歩き易い場所を伝って登って行く。流木、流石が多くて気疲れするコースだ。

 三股へ向かう八の沢コース

 しばらくすると単独の男性が私に追いつき、会釈して追越して行った。私とそれ程変わらぬ年齢みたいだが中々の健脚だ。しかし彼の存在が私の気持ちを心強くしてくれた。その彼を追うように登って行く。

 三股近し

 やがて沢の左手に細長い滝が現れ、中央奥に雪渓が見えると八ノ沢の要所である三股まで遠くない。三股には崩壊した雪渓が横たわり左右中央から滝が落下しており、一瞬どこから登ればと思う。しかし明瞭な巻き道が中央の滝右手にあり、目印を伝って左へ巻き気味に登って行く。

 三股

 三股から八ノ沢カールまでがカムエク登山の頑張りどころ、これでもかと急登が続く。下ばかり見てると目印を見失い二度ほど行き詰まってしまったが、その都度目印のある地点まで戻り、新たな目印を見つけて登ったので事なきを得た。

 カールへ向かう巻き道(要所に赤いテープあり)

 ロープ場(それ程危険は無い)

 やがて沢の流れも弱まり、八ノ沢カールの一角に到達した。此処は雲海上の別天地、一気に展望が拡がる。1970年に起きた羆による福岡大生パーティ殺害事件のレリーフがある岩を通過すると、その先が八ノ沢カールの幕営地だ。テントのスペースは2~3張り程、水場もあり眺めの良い場所だが熊の生息地であるここに、幕営しようという気にはならない。

 やっとカールに到着

 カールから十勝幌尻岳方面

 福岡大生遭難のレリーフ

 先行していた男性が此処で休んでいた。そして上を見ると若い男女が降って来た。「山頂近くで幕営した。」と言う。勇気があるなあと感心する。それに重荷を稜線まで背負う体力も羨ましい。此処で渓流シューズから山靴に履き替え、稜線に向けて登って行く。まずカムエクとピラピッド峰のコルまで登り、そこから細く急な尾根をカムエクの山頂目指して登って行く。

 カールの幕営地

 カムエクへ続く尾根道

 山頂は雲の中

 この尾根道の大半をハイ松が覆っており、掻き分けながら進むので中々ペースが上がらない。又右側はカールに落ち込む崖なので転落せぬよう慎重に歩む。先行する男性に引っ張られるようにして、9時ちょうど憧れのカムイエクウチカウシ山(1979m)に到着した。八ノ沢を出発して約4時間半の登りだった。

 山頂直下

 カムイエクウチカウシ山頂

 雲が多くて遠望は効かぬ山頂だが、周囲の眺めを満喫する。私の前に登頂した単独男性は福岡県の人で大学時代は小樽で過ごし、部活動で北海道の山々を踏破したと言う。どおりで健脚のはずだ。私が「三百名山登頂でここに来た。」と言うと感心するので、「こんなの暇と金とヤル気のある人間なら誰でもできますよ。」と言ったら、「イヤ暇な人はこんな事やりませんよ。」又感心されてしまった。

 山頂から十勝幌尻岳方面

 山頂からエサオマントッタベツ岳へ続く尾根

 山頂からシカシナイ山へ続く尾根

 山頂直下からカールとピラミッド峰

 山頂には20分程滞在し下山を開始する。細い尾根を慎重に降って八ノ沢幕営地に戻る。二人で歓談しながら山靴を渓流シューズに履き替え、何気なくフト横を見ると登る時にはなかった黒々とした熊のウンチが無造作にある。「ヒャ~熊の奴ここでウンチして、きっと見えない所から俺達を監視してるに違いない。」とそれから二人して大慌てでザックを背負い、逃げるように八ノ沢を降った。

 コルから仰ぐカムイエクウチカウシ山

 コルからピラミッド峰

 幕営地に残された熊のウンチ

 カールから三股に至る難所も二人で降れば心強い。又熊の恐怖が脚を急がせ、カールから約1時間程で三股の底へ降り立った。この先はもう危険個所はないので、二人はそれぞれのペースで降る。それでも岩屑や流木が埋まった降りの道はけっこう難渋し、三股から八ノ沢出合まで、登りと大して変わらぬ1時間半のタイムだった。

 三股上、八の沢の滝

 同じく八の沢の滝

 八ノ沢の幕営地に戻ったのは13時過ぎ、まだ充分時間があるのでテントを畳んでザックに収納すると、札内川の昨日来たコースを降って行く。コースの状況が判っているので快調に降り八ノ沢から1時間半足らずで自転車を残置した七ノ沢に戻ってきた。二カ所の渡渉地点は昨日と水量が大して変わらず、けっこう手強かった。

 登山口ゲートへ向かう林道をタイヤがパンクせぬよう慎重に走り、16時過ぎに車のある札内ヒュッテ駐車場に戻り着いた。ここに至って登頂の喜びがジワジワと湧いてきた。

 車に乗ると携帯が通ずる「道の駅なかさつない」まで移動して、帯広のホテルに泊っている妻に「登頂成功せり」を連絡する。妻は「アラ、早かったわね。それで今日帯広まで戻るの。」と私の高揚感をよそに極めてクールな反応、まあいいか、これから温泉入って疲れを癒し、夜は道の駅に泊って一人ささやかに祝杯をあげよう。これでペテガリ岳とカムイエクウチカウシ山を登って目標達成、やっと我が家に帰る事ができる。

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