気になっていたカンヌ映画祭受賞作「万引き家族」を観てきた。話題の映画だけに、平日にも係わらず館内は満席に近かった。是枝監督作品は「海よりもまだ深く」を観たくらいだったが、どんな映画か期待しながら上映を待った。
物語りは、日雇い労務者の治(リリー・フランキー)とクリーニング工場のパートで働く信代(安藤サクラ)の夫婦に、二人の子供達、同居する老婆(樹木希林)と風俗で働く娘(松岡茉優)という大家族の日常生活が描かれる。
一見何処にでもいそうな家族と思えたがこれがとんだ喰わせ者で、夫婦は赤の他人の老婆の家へ押しかけて同居、老婆の年金をあてに暮らしている。小学生くらいの男の子と5才の女の子は誘拐紛いに連れてきた他人の子供で、学校へも行かせず万引きをやらせて生活の糧にしている。
これだけ聞けば何と酷い鬼夫婦と思うが、不思議な事にこの家族は貧しいながらも皆仲良く明るく暮らしており、とても幸せそうに見える。しかしこの幸せは長く続かず、老婆が突然亡くなった事がキッカケで、家族は崩壊しチリジリバラバラとなってしまう。
この映画で「家族の幸せとは何なのか?」と是枝監督は問いたかったのだろうか?登場人物のキャラクターが善人なのか悪人のか曖昧模糊としてるので、観終えた後も今一つスッキリしない映画であった。
その後5才の女の子は、ネぐレストの実母の元へ戻される。親から見放され一人寂しく外を眺める女の子のラストシーンがとても切なくて、これがカンヌ映画祭審査員の胸を打ったのではないかと思えた。