「6月13日に演奏される辻井伸行のピアノコンサートに絶対行きたい。」と妻が言った。チケットなど簡単に購入できると思ったら大間違い、予約発売当日の発売開始時刻から電話とパソコン同時で何度も購入を試みたが全く繋がらない。10数回目のネットでやっとコンタクトでき、二人分のチケットを何とかゲットする事ができた。
クラシック音楽には無縁の私はたかがピアノ演奏会と侮っていたが、盲目の天才ピアニスト辻井伸行の人気は凄まじく、1万数千円もするチケットがアッと言う間に完売となったようだ。
昨日の午後、演奏会場のサントリホールへ向かった。高層ビルが立ち並ぶ港区赤坂アークヒルズのサントリーホールには、上品な装いの紳士淑女が続々と入場する。その中に混じると住所固定無職ダ埼玉から来た私も、何だか人生の勝ち組になったような気分になった。
コンサートが始まり、ピアニストの辻井さんが介添えに手を引かれ舞台へ現れた。客席へ深々とお辞儀する彼の印象は、ポッチャリとした体形で人柄の良さそうな優しい人物に見える。クラシック音楽オンチの私はコンサートの合間に寝てしまうのではと心配だったが、彼の演奏はとても心地よく素直に惹きこまれていった。
目をつぶり(寝てるんじゃないよ。)聴いていると、まるで無数の水玉が転がるような、草原の白樺林を春風が吹き抜けるような、高原の湖にさざ波が立つような旋律で(オォ何というポエムな表現)、脳内が心地よいマッサージを受けているような気分になった。
約2時間余の演奏会に満場の観客は魅了され、妻などはハンカチを目に当てて感動のコンサートであった。クラシック音楽は「猫に小判」の私でさへ、そんなに悪いもんでもないなと思いつつ夜景に輝く高層ビル街を余韻に浸りながら我が家へと戻った。
それにしても先週は東京都美術館で世界有数の名画鑑賞、そして今宵は世界トップクラスの名演奏会、こんなに高邁な教養を身につけてよいものだろうか、光栄に心が震える。これで私も一端の教養ある文化人、首から下しか取りえの無い田舎者のダサいオッサンとは、もう誰にも言わせない。
サントリーホールコンサート会場